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第一話 っといっても何を基準とした一話なんでしょうね

初めての長編小説

新参者ですがよろしくおねがいします

突然だが異世界に飛ばされた私は今重要な問題に直面している。


 モンスターの奇襲?違う。

 行く当てがない?ノンノン。

 言葉が通じない?それは何故か大丈夫だ。

 重大な問題に直面、そう


手に職が無いのだ。


突然と、行っても私がこの世界に飛ばされてからそこそこの日数が経っている。

本当に初めの初め、学ラン姿でこの世界の森に立たされた時は愕然としたものだ。

あの時、山へ柴狩りへ来ていたおじいさんに会えなかったらどうなってたことやら、今考えてもぞっとする。

無事おじいさんの好意で近くの村へ入れてもらい、事の顛末をこと細かく伝えたところ、こんな服見たことねぇ!と別のポイントで関心と信用を得てしまい、お礼に学ランはそのおじいさんに寄付する羽目になった。

今日もきっとその学ランを着こなし山を闊歩しているだろう。隠密性と丈夫さに優れているんだそうだ。

そんなこともあり、しばらくおじいさんの家でお世話きなっていた私にとある問題が浮き彫りになった。


手に職が無いのだ。


ある程度、おじいさんの手伝いや村の人の問題を解決しながら自分を騙し騙し生活していたが、流石にちょっと前までバイト高校生だった身としては、ノージョブという肩書は日々体を蝕んでいった。

夜、寝る前には必ず、このままでいいのだろうかと考え、無になりたいと願い、もうどうでもいいやと諦めの境地で眠りにつく。

さらに最近、おじいさんの気持ちが痛い。

いつまでも居ていいんだよ、とか言ってくる。めっちゃ言ってくる。

ここで勘違いして「感謝感激雨あられっ!もう私ここに骨を埋める所存であります!」何て宣言したら、その場で骨にされ畑の肥料として撒かれかねない。

これはイコールでいつまで厄介になってるの?と皮肉に満ちた言い回しであると裏の副音声を感じ取らないと駄目だ。

だから、私は「いえ、そこまでお世話になるわけにもいきませんよ、近々ここを立つ予定です」と、今までの恩情は感じてますよ、ちゃんと旅立つ意思はあるんですよ、と精一杯アピールしながら伝える無ければならない。

そこまで言ってもおじいさんは、決まって悲しそうな顔をする。

これは、今日は出て行かないのか…という落胆の表情だ。

流石に準備が不十分なまま旅に出ると、そのまま死に直結する可能性もある。

だから、ちょっと待って頂きたい。明日には!明日には出発出来るから!


…と、それが一週間前の話。

私は今、グリザリア地方とメルーバ地方の中間地点に当たるフリスバードと言う都市に来ている。

実際はグリザリア地域圏に属するが大きな川を挟んですぐ隣がメルーバとなる為、分かりやすく両者で1つの商業圏となっているらしい。

街のあちこちに水路が張り巡らされており、水面に映る家々や上空に張り巡らされた魔力線がとても幻想的に感じられ、これこそ異世界に来たんだなぁとひしひしと感じさせた。

今までは森と大地のデカさをオンリーに見せつけられこれが異世界だと納得するような旅だったからなぁ…。

ちなみに道中モンスターと巡り合った時の感動の度合いは、日光で野生の猿に出会った時と同じだった。

閑話休題。

私が遠路遥々このフリスバードに来たのはある目的がある。

何て言ったってまず働き口を求めに来たのだ。

ここには、様々なギルドがある。

そのギルドに加入すればまあ安全に仕事が出来るらしい。

さしあたってどのギルドに所属するか、それはもう決まっている。

そう、冒険者ギルドだ。

折角、ファンタジーな異世界に来たのだから、冒険をしなければ嘘だ。

一生布を縫い続けたり、物を売ったりな仕事なんて、サラリーマンとなんら変わりはないじゃないか。

だから私は冒険する。

私は今、スペクタルもデンジャーなそんなアドヴェンチャーの開幕を知らせる扉の前に立っているのだ。

ガチャリとその両開きな扉を開けた。


ギルドの中は、大きな酒場のように沢山の机と椅子が並べてあり、至る所で冒険者らしい人々がドンチャン騒ぎを起こしている。

それは学校の教室のそれとは比べ物にならない程混沌としており、クラスにさえろくに馴染めなかった私には、スペクタルもデンジャーなアドヴェンチャーの扉を閉幕させたい衝動に駆られた。

しかし、そんな事ではこの世界は生きていけないだろう、しっかりするんだ。

ギルドの受付に行く前に、思い切って中でもひときわ大きな騒乱の中に飛び込んでみた。

早くこの雰囲気に慣れるための精一杯の努力だ。

混雑の中心では自分の身長より大きな剣を持つ、いかつい半裸の大男が女の子に怒鳴り散らしている姿があった。

普通だったら恐喝かたかりを思い浮かべられるような光景だったが、彼女の姿も普通じゃなかった。

胴体を強調させるようにウエストで締まった黒いローブに大きなとんがりハットをかぶり同じく自分の背丈程ある杖を背負っている。コスプレでなければどう見ても魔法使いの少女で、いかつい男に絡まれているというのに一切ひるまず、勝気な目で男を見かえしていた。

私は興奮を隠し切れなかった。きっとあの男は負けるであろう。

あの少女からは何か絶対的な強さを感じさせられる。

ああいう女に絡んだ男は負けるのだ。漫画にそう描いてあった。

にらみ合に根負けした男は、少女に向かって怒鳴り散らす。


「おい、嬢ちゃんっ!いい加減俺だって鬼じゃねーんだ、おとなしく謝ってくれりゃあ、さっきまでの事は水に流すって言ってるんだよ!!」


「そうね!鬼よりかはゴブリンよりだもんね!!」


「どこに食いついてんだガキぃ!!なんで鬼かゴブリンの狭間で彷徨ってんだっ!人間だ俺はぁ」


どんな口論だ。


「いいかっ!俺はよぉく見てたんだかんな!!お嬢ちゃんのその杖が暴発して俺達に火の玉をぶつけて来たんだよ。おかげで俺の服は全て消し飛び、仲間は意識不明の重体だ!仲間は朦朧とした意識の中で言ったよ!「このままじゃお前は全裸だ…しかし俺はかろうじてパンツだけは残った…分かるな…」ってよぉ!!パンツだけ託してアイツは真っ裸のまま医療室に運ばれていったっんだ…!俺は友に託されたパンツをただ穿くことしかできなかった!!だから嬢ちゃんっ!一言でいい…俺に…俺たちに…謝ってくれよぉぉ!!」


やだ、悲惨。

しかし、そこまでされて、なぜ謝れば許すと言えるんだ。

見た目に反してめちゃくちゃいい奴ではないかっ!

さあ、謝れ、少女よ!みすぼらしくパン一で立ってるおっさんに許しを請うのだ!

話しを聞いてしまった以上おっさんが報われてくれないと、切なくなってしまっているのだ。

私からも頼む!謝ってくれっ!

恐らく周りの傍観者も同じ心境だったのだろう。

願うように、祈るように、私たちはその騒乱の行く末を見守った。

そんな、願いが通じたのか


少女は動きだし――


そんなおっさんを――




――燃やした。


「うおぉぉ―――っ!!!うおぉぉ―――っ!!」


何をしてるんだあいつはっ!!

流石に周りの冒険者もハチの巣をつついたような騒ぎとなる。

大騒動に発展したギルドの中、少女は人ごみの中を縫うように逃げ出していった。


「あっ待てっ!!」


思わず私はその後ろ姿を追いかけた。

遠目からおっさん見ると、火だるまになりながらも丸くなってただ火が沈下するのを耐えていた。その周りを、冒険者たちは混乱しながらも右往左往する光景はどこかキャンプファイヤーを彷彿とさせたのであった。


「くそぉ!!この炎消えねぇぞ!!」


「動いてくれ!何でそこから動かない!!」


「…パンツだ。丸まってパンツを守ってるんだぁぁ!!」


「おっさんっ!!あんた漢だよっ!!漢すぎるぜぇ!!」


「まぁぁぁーーーーっ!!まぁぁぁーーーーっ!!!」


絶対に捕まえてくると誓います…。


-----------------------------------



「見つけましたよ、放火魔さん」


少女が逃げ込んだ先は、ギルド二階にあるちょっとしたフリースペースだった。


「なんであんなことしたんです。あの男も謝れば許すと言っていたでしょう」


少女が逃げ出さないように壁際に追い込んで問いただす。

少女は依然口を割らず動かない。


「誰が見たって、あなたが悪いのは明らかでした。いいんですか?あのままじゃ、あなたは極悪人です。このギルドに居られなくなりますよ」


「――ってるわよ…」


「えっ、なんて言いました」


「分かってるって言ってるのよ!!」


少女は急に声を張り上げ、私は少し驚いた。


「だって…あの男…恐かったじゃないっ!あんなに怒鳴ることないでしょ!」


突然、火の玉ぶつけられて真っ裸にされたんだ。

誰だって怒鳴り散らすだろう。


「始めは謝ろうとしたわよ…そしたらあの男が怒るから…そしたら皆集まって来ちゃって…」


「それでもあの啖呵の切り方には結びつかないでしょうに」


「どうしてもテンパると強気になっちゃうの!」


「じゃあなんで最後あの男の人を燃やしたんです」


「…皆の視線が集まって何かしなきゃーって思ったから」


ちょっともうこの子、思考の繋がり方が怖い。


「まあ、気持ちは全く分かりませんが、状況は分かりました。やはりちゃんと謝った方がいいです」


「分かってるけど……うー…」


「いいんですか?あなたこのまま行くと冒険者の爪弾きものですよ、きっと腫物を触るように扱われて、どこ行っても一人ぼっちでパーティも組めず誰にも気づかれず死んでいくのです、それでもいいんですか?」


「うぅ…うぅぅ……」


「それとも、あの男が自警団に通報して裁判ですかねー…この世界って犯罪者ってどんな扱い受けるんでしょうか、あぁ恐ろしい」


「……分かったわよぉ…謝りに行く」


涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだし返事も頼りないが、すくむ足を奮い立たせ、立派に立ち上がった。

やっちゃいけない事をしたと自覚があるのならこの子はそんなに悪い子じゃないのかもしれない。

そんな少女に私は手を差し伸べる。


「…一緒に行ってくれるの?」


「一人くらいあなたの味方がいてもいいでしょう、どっちにしろアウェイですからね。頼りないですがお供しますよ」


正直、一人で行かせたらまた、なにをやらかすか気が気でない。

それに、今やあのおっさんは英雄だ。この少女の戯言なんて一つも聞きやしないだろう。

実際、弁解の余地のないくらい酷いことをしでかしてしまった。

それも全てこの少女は分かっているはずなのに、逃げずに立ち向かおうと決めた彼女は、やはり睨んだ通り強い子なのだと私は思った。



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