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勇者か魔王  作者: 和都
・第四章、ノヴィウス大陸【天啓脱出編】
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勇者、洗礼を受ける

「遂に来ましたか、終焉をもたらす者よ。」

白いローブを羽織った年老いた男性が俺の瞳をまっすぐ見て答える。


「終焉を齎す者…?」

俺は疑問をそのまま白いローブを羽織った年老いた男性に尋ねる。


それは良い意味なのか、悪い意味なのか。

そもそも俺が魔王である事をコイツは知っているのか?

そんな考察が俺の頭の中を過ぎる。


「申し送れました。私はこの修道院の長、名はヴェヒラムと申します。」

そう言ってヴェヒラムは俺に軽く会釈をする。


「ああ、俺は…。」

そう言いかけた時、ヴェヒラムは俺の口を紡ぐ様に言葉を発する。


「ええ、ご存知ですよ。次世代の勇者、クロム様ですね。」

どうやら協会連中の話題で俺の名は逸早く知られているらしい。


「では、早速本題ですが…。」

ヴェヒラムが話を切り出すとそこからスムーズに事が進んだ。


そう、俺が此処に何をしにきたか、それをもう熟知しているようだった。


「早速ですが再度勇者の儀を執り行いましょう。もはや時間がありません。」

ヴェヒラムはそう言うと広いスペースに予め用意していた魔方陣を

白い粉のような物を振りまいて魔方陣を発動させる。


「さぁ、魔方陣の中央に乗ってください。」

ヴェヒラムが俺に指示をする。

俺はその指示に従い魔法陣の中央に乗った。


「汝、神の御許へ…、聖なる加護を受けし勇者の儀を執り行う。」

静かにヴェヒラムが呪文を詠唱し魔法陣が光りだす。


そして俺の意識は彼方へ飛ばされた。


まどろむ意識の中、声が聞こえる。


「…者よ。勇者クロムよ…。」

とても柔らかい暖かい声。


この声は昔聞いた事がある。

そう母親の声に近い。


「貴方が此処に訪れる事を待っていました。」

そりゃどうも…。と実感がわかない俺であったが口には出さない。


「今、世界は終焉に向かって動き出しています。」

単刀直入に言う声の主。

だが、この声の主がアキラの言う【神】というのはなんとなくわかった。


「別の世界の勇者、アキラをこの世界に均衡を持たせるために召喚しました。」

「ですが、それだけでは補えない。私の予想を超えた【何か】が迫っています。」

【神】は明らかに俺の力を借りたそうに語りかけてくる。


「あー…、話をぶった切るようで悪いが俺は魔族で魔王だ。とても勇者の器にはなれないと思うのだが。」

言葉を濁して俺は【神】に言う。


「それなら心配ありません。」

【神】が即答する。


「私の計算ミスで本来はこの世界の勇者は貴方だったのです。」

「私が半魔族の貴方の存在、そう不確定な存在を勇者とするにはまだ根拠が足りなかったのです。」


なるほど…、だからトールギアで勇者の儀を受けた時に

まだ俺は勇者としての資格はなかった訳だ。


「でも、いいのか?俺は仮にも魔王なんだぜ?そんなの勇者とするなんて一種の賭けじゃないのか?」

俺は少し挑発するように【神】に言う。


「それはこの世の理から外れる事ですが…、例外は常時起こる事なんです。」

「私が貴方を勇者として認めましょう。」


なんかあからさまに俺を勇者として仕立て上げたいらしい。

俺個人まだ勇者としても魔王としても自覚がないのだが…。


だが、ここで機会を逃せばまた俺が勇者として

世界に認められず苦悩する日が来るかもしれない。


そう、考えたら俺は今、本当に勇者になっておくべきなのか…?

あまりにも深く考えすぎて頭の回路がショートしそうだ。


「なぁ、ひとつ聞いて良いが?」

俺は【神】へ質問をする。


「なんでしょうか?」

俺の心境を知ってかしらずが淡白に答える【神】


「確かにここで正式に勇者となってもいい、だが俺は魔王だ。」

「部下を裏切る行為だけはしたくない。」


一呼吸置いて俺は【神】に向かって答える。


「勇者として、そして魔王として世界を改変する事は可能か?」


「………。」

今まで即答だった【神】がつかの間の暗黙を示す。


そして答えを出したように口を開く。

「いいでしょう、それが貴方のベストと思える行動なら好きにしなさい。」

「但し。」


「貴方はいずれ後悔する。此処で勇者か魔王かどちらかを選ばなかった事を。」

耳が痛い事を【神】が言う。

その言葉は別の世界の勇者、アキラにも言われた言葉だぜ…。


「それでいい。俺は俺で後悔しないように自分の道は自分で切り開く。」

「例え、それが困難な道であっても…。勇者と魔王どちらかなんて今は正直選べない。」

何も隠さず堂々と俺は素直な答えをそのまま出した。


「わかりました…。その答えが終焉に向かわない事を私は心より願っています。」

そう言うと俺の体は眩い光に包まれ、今まで別の意識の彼方に

飛ばされていた俺は元の魔法陣の上に戻っていた。



あけましておめでとうございます。

今年も【勇者か魔王】を何卒宜しくお願い致します!

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