アキラ、気絶する
「力を…、力を貸してください…。」
頭の中に声が響く。
僕の体は依然、宙を舞っている感覚のままだ。
そして意識がハッキリとしない。
ハッキリとしないが僕は聞こえる声の主に問いかける。
「力ってなんだよ!?というかなんだよこれ!?」
夢の中を彷徨っているかのような感覚。
多分これは夢だ。
僕はこの暑さで多分倒れてしまったんだろう。
あの店内は蒸し暑かったし水分補給もそんなにしていなかった。
僕は自分独りで納得するが声の主に対しては納得はしていない。
そして、次の瞬間。
僕の体は物凄いスピードでどこかに落下する。
「うわぁぁああああああああああ!!!」
何が何だかわからない。
夢なら早く覚めてくれ!?
そして、僕の意識はそこで途絶える。
………。
「おお、勇者よ。気絶してしまうとは情けない。」
さっきとは違う声が聞こえる。
さっきはなんというか女性のような感じだったけど
この声は紛れもなく爺さんの声だ。
「ん…、ここは?」
目覚めた僕は辺りを見回す。
見回して何もない空間に白いローブを着た爺さんが立っている。
「ここは時と狭間の空間。そしてお主はそこに飛ばされた哀れな小僧よ。」
爺さんが僕に言う。
「意味がわからない。まだ夢なのか?」
僕は現状起こっている事を把握出来ていない。
というか本当に何が起こってるのかわからないんだ。
「お主に一度だけ言うぞ、これは夢ではない。」
爺さんが重い口調で僕に言う。
その言葉に何か心臓を掴まれたような、背筋が凍るような気がした。
だから信じるしかない。そんな風に感じた。
「夢じゃなかったらどういう事なんだよ!?僕はどうなってるんだよ!?」
自分でもわかるくらい取り乱している。
「あの本のページを捲った時からお主の運命はもう決まっておる。」
爺さんがまたも重い口調で僕に話す。
「あの本…?」
僕は過去の記憶を漁る。
そう、僕は課題の資料を買いに寂れた古本屋に入ったんだ。
それで、店主から渡された本を見て…、ってあの本か!?
「こんなのありえないだろ!?アニメやゲームじゃないんだぞ!?」
僕は爺さんに怒鳴るように訴える。
「お主には行って貰いたい事がある。」
爺さんは僕の怒号そっちのけで話を進める。
「話通じてるんだろ!?なんでこんな…。」
僕が取り乱している中、爺さんが僕の額に指を当てた。
その瞬間、世界が広がる。
今何が起こってて何をしないといけないのか。
何故、僕がここに呼ばれてしまったのか。
「うっぐああああああああああ!?」
僕は叫んだ。
情報を一気に頭の中に流されて色んな感情が爆発しておかしくなりそうだった。
そして、僕の意識はまたそこで途絶える。
意識が途絶えそうになった時、
頭の中で最初に話しかけてきた女性の声が聞こえる。
「………が必要なのです。貴方が………になって………救って……。」
僕の意識は完全にそこで途切れてしまった。




