アキラ、召喚される
勇者か魔王、外伝
新章【アキラ編】
暑い…。
蝉が鳴く7月の後半、時刻は午後2時過ぎ。
平日の午後、サラリーマンや僕と同じ学生、そしてニートが電車から降りる。
僕は大学の帰り道でとある場所に行こうとしていた。
そう、「とある場所」というのは秋葉原だ。
僕は生粋のオタクではないけどゲームや漫画、それにフィギュアが好きだ。
今日は新作のゲームを買いにわざわざ秋葉原までやってきた。
ソホマップの購入特典で1/8スケールのフィギュアが貰えるからだ。
僕は気分が乗って人混みをかき分け目的の店まで歩く。
「平日なのにやっぱアキバは人が多いな…。」
ぽろっと本音が出てしまう。
だって、こんなに暑いし人は多いしもうさっさと買って
家でフィギュアの【開封の儀】を執り行いゆっくりゲームがしたい。
幸い、今日はうるさい親もいない事だし羽が伸ばせる!
出前でピザなんて頼んじゃったりして…。と妄想を膨らませる。
妄想を膨らませてる時、嫌な事を思い出した。
そういえば、提出する課題が来週までだったな…。
僕は嫌な事は先に済ましておくタイプ。
先延ばしにすると大抵ロクな事が起きない。
仕方ない、ソホマップに行く前に課題の本を買ってこよう。
僕が今、大学で専攻しているのは「歴史学」
ヨーロッパの歴史について学んでいる。
その資料を買う為にアキバの本屋に入ってみるが
アニメやゲームや同人誌ばかりでお目当ての難しい本は見つからない。
「やっぱ駄目か…。」
こうなったらゲームを買っていつも資料を購入している
日本橋の本屋まで足を伸ばすしかない。
家とは逆方向だから面倒なんだよな…。
ゲームを買いにソホマップまで行こうとした時、
見慣れぬ古本屋を見つけた。
雰囲気的に昔ながらという感じなので
同人誌やアニメが置いている風には見えず僕は自然と足を踏み入れた。
入口は狭く、暗かったが店内も薄暗かった。
なんかいけないお店に来ちゃったかな…、と思ったが
カウンターに座るお爺さんが「いらっしゃい。」と僕に話しかけてくる。
入口は狭かったが店内はそれなりに広い、
もしかしたら目当ての本が見つかるかも知れない。
僕は店主だと思われるお爺さんに聞いてみた。
「あのー…、ここに西洋の歴史学の本とは置いてたりしませんよね?」
店主だと思われるお爺さんは顎をポリポリ書きながら
「ちょっと待っとれ。」と言って奥に消えていく。
待たされる事、10分。
長い、もう帰ろうかなっと思った時にお爺さんが埃まみれで出てくる。
「あったぞ、あった。」
そう言って僕に本を手渡してくる。
「へぇ…。」
僕はパラパラっと本をめくると英語で書いてあるが間違いなく昔の本だ。
西洋学を学んでる事だけあって多少の英語ならそれなりに読める。
しかし、この文字は英語ではない。
なんだろ?見たことない文字だな…。
でも、気になったから買ってみようと思った。
「お爺さん、この本いくらですか?」
その時、目の前にいたお爺さんの姿は無くなっていた。
あれ?おかしいな…、。確かにそこにいたハズなのに。
そして僕が持っていた本がいきなり光りだす。
暗い店内が明るくなるような、というか眩しい!?
僕は「わっ!?」と声を上げ咄嗟に本を床に落とす。
自然に本が開き、ページがめくられ世界が廻る。
そんな錯覚に見舞われた。
何が…、起きた…?
暗い店内にいたハズの僕はどこか宙に舞っているような感覚に見舞われた。




