勇者、目的を告げる
道に迷い、来た道来た道をぐるぐると回って
ようやく森を抜けたのは明朝だった。
「やっと出れたか…。」
疲労感と共に一言俺の口から漏れる。
森を抜け見覚えのある湿原を抜けヴァルヴァの街に着いたのは正しく朝だった。
基地へと戻り、まずアンジュとサーシャから質問攻めされる俺。
「どこ行ってたんだ!?」
「どこ行ってたの!?」
いや、そんな声を合わせて質問しなくても…。と思ったが
心配してくれてたんだなっと実感する。
そして横目でニヤニヤしているリリスは俺が出かけた事を告げた様子は無く
後で一発小突こうと思った。
軽く朝食を済まし、俺はパーティメンバーに次なる旅の目的を告げる。
「まず、魔王のいる大陸「ベルハザード」へ行く前に少し寄りたい場所がある。」
俺がそう言うとサーシャが「寄りたい場所?」と尋ねてくる。
「ああ、そうだ。まずこの大陸の中間地点にあるこの街を抜けて反対側にあるアディア修道院に行こうと思う。」
俺はまず第一の目的地をパーティメンバーに告げた。
「何故だ?」
短調に突拍子もなくアーシェが聞いてくる。
まぁ聞かれて当然なのだが…。
「もう一度、俺が【勇者の儀式】をそこで受ける為だ。」
躊躇いもなく言う。
「え?でも一回うちで【勇者の儀式】やったじゃない?」
と疑問に持つサーシャ。うちというのはトールギアの事だな。
「ああ、だがその時、俺はまだ完全な勇者じゃなく本当の勇者になる為には必要な事なんだ。」
俺はサーシャと共にパーティメンバーに諭すように言う。
「ふーん、それなら私も寄り道してもいいけど…。」
サーシャが納得したのかしてないのかよくわからない口調で言う。
「私は構いませんよ。」
リリスがイスに座って足をぶらぶらさせながら言う。
「私も構わん、ついていくだけだ。」
アーシェも承諾してくれてユフィアもコクコクと首を縦に振る。
よし、パーティメンバーにはとりあえず目的地は告げた。
後は…。
俺は「少し出てくる。」とパーティメンバーに言い次にアンジュの所へ向かう。
途中、憲兵を何人も通り抜けてその度敬礼されるのにはもううんざりしてきた。
アンジュのいる作戦司令室の前でノックをし「入れ。」という言葉が聞こえる。
その言葉を確認し俺は中へはいる。
「よぉ。」
俺はアンジュに挨拶すると共に周りの側近に眼で威嚇する。
一応、魔王という立場上。こういうのも大切だ。
「どうしたクロム?」
周りの側近が顔を下に向ける中、真っ直ぐと俺を見るアンジュ。
「ああ、これから魔王城に一旦帰る事にした。」
俺は目的を単刀直入に言う。
「何故だ!?ここで結婚式を上げればいいだけだろう!?」
アンジュが取り乱したように言う。そもそもが間違っている。
「いや、そうじゃなくて…。この戦いをてっとり早く終結させるには魔王城に帰った方が効率がいいんだよ。」
俺がアンジュに言い聞かせるように言う。
「ぐ、むぅ…。」
言葉を返せないのかアンジュがぐもる。
「という訳で明日には出発するわ。」
俺は要件だけを言い、部屋を出ようとアンジュに背を向ける。
「待て、クロム!」
背中から声が聞こえ俺は振り返る。
「私も一緒に連れていけ!!!」
何か嫌な一言が聞こえたが気のせいじゃないよな…?




