勇者、仲間に相談する
俺はサーシャの追求を逃れる為に、
そしてもうひとつの目的のためにリリスをベランダへと連れ出した。
「どうしたんですか勇者さん?」
リリスが俺に問いかける。
「あー、うん。あの場から逃げたかったってのはあるが…。」
日の沈む街並みをみながら俺はリリスに言う。
「何から話せばいいか、リリス達が牢獄にいた時、俺は本物の勇者に出会ったんだ。」
俺は事の成り行きをリリスに話す。
本物の勇者に出会った事。
神という存在が本当に居て恐らく俺に話しかけてきたのが神である事。
そして、そこで俺は光に包まれ自分の体に異変が起こった事。
「ふむふむ、なるほど…。」
少し考える動作をしてリリスが答える。
「多分ですけど恐らくそれが【勇者の儀式】で認められた証拠なのではないでしょうか?」
相談した俺にリリスが答える。
「勇者さんはトールギアで【勇者の儀式】が執り行われた際に何も起きなかったんですよね?」
確認するようにリリスが俺に問いかける。
「ああ、確かに何も起こらなかったし体に何の変化もなかった。」
その時の状況を思い出すように俺はリリスに答える。
「私も詳しい事はわかりませんが…、神という存在が確かならばそれが天啓…、つまり神様からの言葉であり勇者さんが勇者って認められたって事になると思いますが。」
ふむふむ、と自分の考えを口にするリリス。
「でも、勇者って二人いていいのかよ?てか俺は半分魔族で半分人間なんだぞ。」
俺は疑問をリリスにぶつける。
「だから、じゃないですか?神様は魔族側にも勇者を置きたい。でも完全な魔族ではない勇者さんが勇者になった方が都合がいいと考えたんじゃないですか?」
俺の疑問をリリスが答える。
「確かに、本来は勇者という者はひとりと限定されがちですが…、いっぱいいての私はいいと思いますよ?」
俺を励ますようにリリスが言う。
「ふむ…、で話は変わるんだが。」
そして俺はもうひとつの目的をリリスに相談する。
「実はその本物の勇者に明日の夕刻にヴァルヴァの南にある小さな精霊の泉に来いって言われたんだよ。」
「精霊の泉…。ですか。」
リリスがまたもふむ、っと考えるようにしてから答える。
「精霊の泉というのはその言葉通り精霊さんの住んでる泉の事ですが本来その泉を見つける事自体が結構大変なんですよね。」
リリスが言葉を続ける。
「修行を積んだ熟練の魔術師でも己の魔法と技術で感覚を研ぎ澄まして見つけるものですが…。」
むむむ、とリリスが考え込む。
そこで「あっ」とリリスが声を上げる。
「多分今の勇者さんなら大丈夫です。」
リリスが俺の瞳を見て答える。
「今の…?」
俺はその答えにわからずリリスに問いかける。
「ええ、今のです。」
答えになってないリリスの答えが帰ってくる。
「それっていったいどういう…。」
俺が再度尋ねようとした時、
「クロムー!リリスー!ご飯だって呼ばれたよー!!!」
とサーシャがベランダに出てきて話はここまでになってしまった。
仕方ない、また後で聞いてみるかっと俺は夕食を
パーティメンバーと囲む事にした。




