勇者、本物に出会う?
俺が目に追えなかっただと…?
というか俺の剣撃を弾き尚且つ将軍を俺の手から離し、
一瞬にして離れたという事か。
俺はゴクッと唾を飲み込んだ。
間違いない、ヴァリスのオッサンを破ったのは間違いなくコイツだと確証した。
将軍を引き離した後、ソイツは俺に殺気のこもった視線を向けてくる。
「おい、お前!何故人間なのに魔族の味方をするんだ!」
ソイツは俺に問いかけてくる。
やれやれ、また同じ質問か…。
「別にどうだっていいだろ?お前には関係ない事だ。」
答えるのが面倒になって適当に答える俺。
「そうはいかない、出来る事なら僕は戦いたくないんだ!」
ソイツは俺に言う。
はぁ?だったら戦場になんかに出てくるんじゃねえよ…。
頭をポリポリ書いて俺は小さく「はぁ」と溜息をついた。
「僕だってわかっているんだ、魔族が全員悪い人じゃないって事を。」
「だから君だって魔族を救いたくてそちら側で戦っているんだろう!?」
ソイツは俺に対して変な解釈をしているようだ。
でも、魔族が全部悪って言う聖騎軍の考えでコイツは動いている訳ではない。
もしかしたら話が通じるかもしれない。
よし…。
俺は心に決めて交渉という手段を行おうとした。
が、しかし
「この世の全て悪いのは魔王が原因なんだ!」
「魔王さえ討伐すればこの世界は平和になる!」
ソイツが魔王の事をボロクソに言う。
魔王は俺なんだが…。
まぁいい、この際だ。
小さいことには目を瞑っていざ交渉を…。
「だから約束してくれ!勇者である僕が魔王を討伐するからここは一旦引いてくれないか!?」
今、なんて言った…?
勇者だと?
勇者は俺のはずなのに…?




