勇者、戸惑う
第二区域へと続く門を抜け、列の続く魔族の群れを逆走する俺とアクト。
列の最後尾が見え、その先に聖騎軍の軍隊が押し寄せて来るのが見えた。
このままだと避難民が聖騎軍にやられちまうな…。
俺は足止めをする為、アクトに指示を出す。
「おい、アクト。避難が済むまで聖騎軍を足止めするぞ!お前は列の殿に回れ!」
「承知しました。プリンス。」
そう言うとアクトは避難民の列の最後尾へと着き剣を鞘から抜き構える。
さて、一丁暴れてやりますか。
俺も鞘から魔剣リベレーターを引き抜き、突っ込んでくる聖騎軍に対し
剣を横に走らせ大型の真空波を打ち噛ます。
「うおおおおおおお」
と聖騎軍の雑魚連中が俺の真空波で吹っ飛ぶ。
「怯むな!相手は一人だぞ!?」
後ろにいる恐らく聖騎軍の大将クラスの男が叫ぶ。
アイツか…。
俺は狙いを定め、大将クラスの男の足元に真空波を今度は縦に発生させ、
大将クラスの足元にいた兵力を削ぎ、真っ直ぐ海を割ったように道が出来る。
すかさず俺が突進し、大型のキップアに乗る大将クラスの男の正面に立つ。
「よぉ。」
俺がその大将クラスと思われる人間に挨拶する。
「な、人間だと!?貴様、我が聖騎軍を裏切った者か!?」
大将クラスと思われる男が俺の風貌を見て答える。
「んー、裏切ったとは少し違うな…。」
別に聖騎軍に入った覚えはない。まぁ勇者になったのは事実だが。
「ならば何故、邪悪な魔族に肩入れする!?」
大将クラスと思われる男が再び俺に問いかける。
「邪悪だと…?」
その言葉に俺は胸糞悪くなり将軍クラスだと
思われる男を大型のキップアから引きずり下ろす。
「ぐ、あ…。何を…!?」
将軍クラスだと思われる男が俺に引きずられたまま尋ねる。
「お前、邪悪って意味知ってるか?魔族は邪悪なんかじゃない。」
俺は言葉を続ける。
「俺からしてみればお前らの方が邪悪だ。」
俺はそう言うと大将クラスと思われる男に対し剣を振り下ろそうとした。
が、その時。
【ガキィイイイイン】
と俺の剣が弾かれる。
それと同時に聞こえてくる。
「大丈夫ですか!?フォレス将軍殿!!!」
俺が掴んでいたはずの大将クラスの男が
いつの間にか俺の手から離れ声をかけてきた主の手に渡る。
今、いったい何が起こった…?




