勇者、旅に出る
武器屋からの一件から二日が経ち
俺は宿屋で朝食をとっていた。
朝食をとっている最中、何やら外がバタバタと騒がしい。
なんだ朝っぱらから…?と思ったら聞き慣れた声が聞こえてくる。
「ちょっとアンタ達そこどきなさいよ!」
あぁ、嫌な予感がする…。
そして宿屋の入口を豪快に開け、仁王立ちするのは
姫であり俺のパーティの剣士「サーシャ」だ。
「なんだ、朝っぱらから…?姫なら少しは行儀よくだな…。」
そう俺が言い聞かせてもサーシャは耳をかさず
「ほらほら、見て!完成したのよ!」
見せびらかしてきたのは二日前に俺が武器屋の大将のとこから
見つけてきた掘り出し物。
それを再度鍛え直しピカピカになったものだった。
「ほう…。」
思わず見入ってしまう俺。
「ね、すごいでしょ!」
いや、確かに凄いが大将も凄い。
普通ここまで仕上げるのは一ヶ月くらいかかるだろ。
それを二日でってまず寝てないな。うん
「その武器名前は決めたのか?」
多分決めてないだろうから聞いてみる。
「ううん、まだ全然!」
そうだと思った。
己の命を預ける武器だ。ましてや一級品の武器であるからして
名前はつけたほうがいい。
「んー、何がいいかな?」
持ち主であるサーシャが俺に聞いてくる。
そんなの自分で決めなきゃ意味ないだろ…。
とか考えながら「デススリンガー」とか「カオスブレイド」とか考えていた。
ん…?
そこで俺がある事に気づく。
「かすれてた製作者の名前が最後の方だけ読み取れるようになってるな。」
最初の方は完全に読み取れないがこれは妖精文字で「リース」と読むものだ。
「なんて書いてあるの?」
人間のサーシャにはわからないか。まぁ当然だが。
「…リース」と書いてある。
そこでサーシャが閃いたように
「じゃこの子の名前はディヴァインリース!決定!」
剣らしくもない名前だがサーシャが決めたなら文句も言わない。
とかいうか言えない。
「じゃ、さっそく旅に出ようよ!」
突拍子もない事をサーシャが言う。
「ちょ、ちょっと待て!俺はまだ朝飯食ってる最中なんだぞ!?」
必死に訴える俺。
「私はもう食べたからだいじょうぶ!」
どういう理論だよ…。
まぁこの強引な姫様には何を言っても
無駄だと思い朝食を食べ残し宿を出ようとする。
そこで宿屋のオカミにギロリと睨まれるが
心の中で「すいません」と連呼する俺であった。
「目指すは魔王ギデアスのいる大陸。ベルハザードよ!」
いや、オマエがこのパーティのリーダーなのかよ!?
と突っ込みたかったが土地勘のない俺には従う他に選択はなかった。