勇者、拘束される
「いいか、それじゃ作戦通り行くからな!」
俺は改めてパーティメンバーに告げる。
俺が伝えた作戦とは、リリスの変化の護符で魔族の姿となり
人間だとバレないように中央都市にいる幹部と話し合いをする事。
それこそ何万という兵が中央都市にいる訳だから
下手をすると犠牲が多く出てしまう。
それを避ける為、話し合いをして解決しようという事にした。
まぁアンジュが俺の話を聞いてくれればの話だが…。
それとリリスよると、この護符の欠点は物や人と接触する事で
変化の魔法が解けてしまうらしい。
なので何度も何度もサーシャとアーシェに
「いいか、絶対に当たるなよ!」と俺は口にした。
正直この二人が相当危ない。
合成獣の馬車を走らせる事、一日。
合成獣の速さのお陰で思ったより早く中央都市「ヴァルヴァ」に到着する。
馬車を走らせている中、キリムが俺に
「あんまり期待するなよ…。」と言ってきた。
正直嫌な予感しかしないが今更作戦を変更する気はない。
キリムの手引きでうまく「魔族の仲間」として
魔王軍が占領する基地へ入り込めた。
と、思ったが第一関門にぶち当たる。
「所属と部隊章を見せろ!」
魔族の門番がキリムに言う。
キリムはやれやれ、と思った顔で部隊章を見せ所属を答える。
「アンジュ様の直属の部下か。」
門番の魔族がキリムに言う。
「ああ、そうだ。指揮官に火急の用があるので顔を会わせたい。」
キリムが門番に言う。
「アンジュ様からお前の部隊に伝言がある。」
門番がキリムに言う。
「伝言だと?」
キリムが怪訝そうに門番に問いかける。
「ああ、そうだ。任務を遂行出来ない者には懲罰を、だ!」
門番が冷たくキリムに言い放つ。
横で魔族に変化した俺は実にアンジュらしいと思ってしまった。
「いや、火急の用があってアンジュ様に…。」
キリムが門番に説明しようとしたが、
「問答無用!」
そう言うと魔族の衛兵がすらりと出てきてあっという間に包囲される。
やれやれ、中々うまくいかないものだなっと
俺達パーティは拘束を余儀なくされた。




