勇者、呆れる
俺は後ろの馬車に戻り、パーティに事情を簡単に説明する。
「ヨコスの人間はこのままヨコスに帰す事にする。」
俺は言葉を続ける。
「で、だ。誰かをヨコスの住人達の護衛にまわってもらいたいんだが…。」
馬車の中を見て戦えそうな人間は残ってなかった。
恐らく、ヨコスの町で戦闘になった際に
戦える人間は半殺しにされたか殺されたのだろう。
そしてパーティメンバーの視線が一斉にカシムへと向けられる。
「おいおい、ソイツは怪我して意識もないんじゃないのか…。」
俺がそういうと
「お任せ下さい!」
リリスがそう言い出し何やら鞄から黒い液体を取り出す。
「目覚めよ、目覚め。夢の中に夢を描き光を灯す力となりて…。」
いきなり呪文を詠唱し出すリリス。
そして呪文が詠唱し終わった時、カシムが意識を取り戻した。
「む、私は今まで…?」
意識を取り戻したカシムが周囲を伺うように言う。
「カシムさんカシムさん。」
ちょこちょことカシムの服の裾を引っ張るリリス。
「う、む…?」
カシムが怪訝そうにリリスの事を見るとリリスは、
「えいっ!」
そう言うとカシムに桃色の粉末の入った粉を顔にばらまく。
「ぐ、ゴホッ、ゴホッ…。」
咳き込むカシム。
しかし、それから…。
「うおおおお、力がみなぎってきたぞおおおおお。」
いきなり立ち上がる天に手をかざすカシム。
「おいおい、リリスいったい何やったんだ?」
俺がリリスに尋ねる。
「ええ、ちょっと幻惑の粉をふりかけただけですよ。」
さらっと言うリリス。
ふりかけただけって…。
完全に顔にばらまいてなかったか?
「今、痛みを忘れてるだけで直に思い出しちゃうので早く命令してあげてください!」
またまたさらっととんでもない事を言い出したリリス。
命令って…。
「よし、カシム。これからヨコスの人達を無事に町まで送れ。」
俺は呆れたが流れに従いカシムに命令する。
「了解しましたぞおおおおおおおお勇者様ああああああああ。」
そういうとカシムは馬車の先頭まで走っていってしまう。
コイツ完全にキャラ変わってねえか…?
っと、そろそろ本題を話さないとな。
俺はそう思い、中央都市に入るために作戦をパーティに言おうとするのだった。




