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勇者か魔王  作者: 和都
・第一章、キルトゼア大陸編
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勇者、武器屋に行く

サーシャが仲間に加わり旅の支度を整える。


整えるといっても俺は食料品の買出しだけで

お姫様は俺に折られた剣が欲しいらしい。


「いいからアンタも付き合いなさい!」

実際パーティを結成して数時間で【貴方】から【アンタ】にされる。

名前を呼ばれた時は一瞬ドキッっとしたが何かホント一瞬だったな…。


サーシャと武器屋に向かう途中、後ろでコソコソしてる奴らが気になった。


「おい、サーシャ。あれ…。」

うざったいのでサーシャに言う。


「うん?あっ!?」

サーシャは気づき、それと同時に

コソコソしてる奴らも気づかれた事に気づく。


「アンタ達!ついてくんじゃないわよ!!!」

ついてきてたのは王宮直属の兵士。

まぁ大変過保護に育てられたんだろうな…。と俺も人の事は言えない。


「ねえ、アンタかなり強いけど、どこ出身なの?」

歩いてる最中サーシャが飛んでもない事を言ってきた。


「え!?あー…。」

なんて言って誤魔化そう。


「あれだ、ずーっと東に行くと名もない勇者の隠れ里があってな…。」

苦し紛れに嘘をつく。


「へぇー!そんなのあるんだ私もそこでいつか修行したいから連れてってよ!」

やばい墓穴掘った俺。


「い、いや…。勇者の里は一回出ると魔王を倒すまで帰りが許可されてなくてだな。」

またまた苦し紛れに嘘をつく。


「じゃ、魔王討伐したらそこに連れてってね!約束よ!」

あぁ、頭が痛い…。


俺はこれからの事を考えていた。

本当に勇者として魔王を討伐しに行かないと

いけない事になってしまった俺だが俺がその「魔王」だ。


だけど、短い間だったけど街の人と触れ合って

人も魔族も変わらないんじゃないかなって思ってる。


この旅をキッカケに勇者として旅をして、テキトーに最後は誤魔化して…

って無理だよなぁっと思ったところで武器屋に到着する。


「ここよ!ここがトールギアで一番の武器屋なの!」

サーシャが勝ち誇るように「ふふん」と言う。


…流石にでかいな。

素直な感想だった。


魔族の武器屋とかはそりゃその辺の街と対して変わらないが

ここトールギアの武器屋の大きさ半端ない。

城一個分の大きさ、同じように争う店。


「ここは商人の戦場なんだな。」

ポロっと本音が出た。


「あ、やっぱアンタ田舎モンなんでしょー!」

横目でサーシャにクスッと笑われたが否定できない。


とある武器屋の前に到着してサーシャが声をかける。


「大将、いるー?」


大将…?なんか凄い名前だな。将軍みたいだ。


「おうおう、なんだサーシャの嬢ちゃんか。今日はどうした?」

奥からガタイのいい男が出てきた。

てか、人間にしてはでかいな。オークの子供くらいあるんじゃねえか?

てか、このサーシャを「嬢ちゃん」扱いかよ…。


「ちょっと武器見せて欲しいんだけどさ。」

サーシャが強面の巨人、大将に要望を告げる。


「この前のはどうしたんだ?俺が鍛えた最上級の剣だぞ?」

何故かギクッと俺が身構えた。


「うん、あの剣なんだけどコイツに折られちゃってねー。」

ハハハ、やっぱ言うよな。


「あの剣を折っただって!?ありゃ自分でも自負してるが伝説級の剣にも劣らない性能だぞ!?」

なんか店主の大将が慌てている。属性力がなんだとか素材はドラゴンの鱗とか。

クラフターの話は一通り学んできたが、

帝王学しか興味のない俺には関係ない。


「おい、オマエさん…!」

大将が俺を睨みつける。


「ん、なんだよ?」

涼しい顔で答えてやった。


「タダモノじゃねえな、オマエさん何者なんだよ?」

強面の顔がもっと強面になる。


そしてそこでサーシャがフォローを入れる。

「ああ、コイツは勇者なんだ。私が負けた唯一無二の男よ。」

さらっと言うサーシャ。


「ほう…、勇者が遂に決まったのかい。ちょっとオマエさんのエモノ見せてくれねえか?」

エモノ?武器の事だろうか。


「ほれ、これでいいか。」


この武器は親父が若い頃に使っていた片手の魔剣

名前の意味はわからないが「リベレーター」と言う。


「こ、これは!?」


大将の目が飛び出すくらい驚いてるのがわかる。


「ん?どうした?」

驚く大将に問いかける。


「オ、オマエさんこんなのを片手で扱ってたりしないよな?」

大将の顔がなんか気のせいか青っぽい。


「ああ、片手で振り回してるぞ。ほれこの通り。」

大将から剣を返してもらいヒュンヒュンと剣を振り回す。


「オマエさんなんて怪力してんだよ!俺だって両手で待ち上げるのが精一杯なんだぞ!」

あぁ…、人間は非力だからな。まぁそこは仕方ない。


「どれどれ私にも貸してみて!」

とサーシャが俺の剣を分捕る。


「キャ!?」という悲鳴と共に剣は床に落下。

床に風穴を開けてしまった。

まさか弁償とか言わないよな…?


「うーん、なんでアンタこんなに重いの使えるのよ!?」

そりゃ生まれた頃から魔王になる為、英才教育を受けてましたから。


「ふん、まぁこういうのは慣れだよ、慣れ。」

そう言うと俺は剣を床から引き抜いた。


「その剣とまともにかち合ったらそりゃ俺の自慢の剣も折れるってもんだ。」

大将が自信を無くすのが見てわかる。


「で、大将。話は戻すけど…。」

床を壊したサーシャが話題を変える。よほど罪悪感があるんだろう。


「いや、俺には正直この前の剣を超える作品は作れねえ。」

キッパリと言う大将。


「作れたとしても少なくとも1年は待ってもらわないと同じモノは作れん。」

更に追い打ちをかける大将。


「そ、そんなぁ…。」

サーシャが落胆する。俺も気持ちはわからんでもない。

武器とは本来己の命を預ける大切なモノだ。


信用に足るモノで無ければ俺も極力使用したくはない。


「ど、どうすればいいかな…?」

半泣きになりながらサーシャは大将に問いかける。


「うーん、アレを超える武器となるとだな…。」

大将は試行錯誤で考えてるようだが時間がかかりそうなので

その辺の武器を見てみる。


「ん?」

俺はある事に気づいた。


「なあ、オッサン。このタルに入ってる剣ってなんだ?」


「ああ、それは駆け出しの冒険者が使ったり錬金術の分解で使ったりするモンだ」

大将が今はそれどころじゃないっとサーシャとにらめっこしている。


「やっぱ、そうだ。これは…!?」


外見はボロっちい剣だが確かに妖精族が作った希少な剣だ。

普段、妖精族の作る剣は下界に下りることはなくかなり高値で取引されている。

そして妖精族はレイピアしか作らないのだが…。

これはどう見ても普通のロングソードだ。


「おい。」

俺がサーシャに声をかける。


「なによ!?今それどころじゃ!…うん?」

無言でその剣をサーシャに渡す。


「何これ、今までに感じたことのない。なんか自然体になれるというか…」

サーシャが率直な感想を告げる。


そりゃその通りだ、妖精族の剣は基本レイピア系だが軽さに特化しており

己の隠れた潜在能力を発動させる。

スキルがあがれば武器補正で魔法も扱えるようになるという

魔道書と剣の融合体みたいなものだ。


製作者の字がかすれて読み取れなかったが随分古いと見える。


「うん、私これにする!」

ひと目で気に入ったサーシャ。

やっぱ見た目より性能を見るべき点は評価に値する。


「おいおい、そんなボロっちいのでいいのか?」

あまり目利きではないのか大将が不安な声を漏らす。


「そこはアンタが再度鍛え直せばいいんだろ、元はしっかりしてる剣だから表面だけどうにかすりゃ使える剣だぞ、ぶっちゃけ宝剣クラスだな。」

それを聞いた大将の目の色が変わる。


「よっしゃ、任せとけ!三日で仕上げる!いや、二日だ!!!」

よほどやる気が入ったのかやる気満々である。


となるとこの街から出るのはもうちょい先になりそうだな…。

その間に今後の作戦をどうするか考えようと思ったクロムであった。





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