勇者、旧友と出会う
「な、なんでお前がここにいるんだよ!?」
俺は咄嗟に叫んでしまった。
「なんでって…、そりゃ上からの命令で人間を中央都市に運んでいるとこだが?」
声の主が俺に答える。
「それよりクロム、お前も城抜け出してこんなとこで何してんだ?」
ううむ、なんと答えればベストか、
そうそう、コイツの名前は「キリム」
俺がガキの頃からの親友でもう一人の親友といつも三悪トリオとして
魔学校では結構有名だった。
コイツだけは殺したくないっというか相手にしたくない。
「上からの命令って…、誰の命令だよ?」
俺がキリムに問いかける。
「いや、聞いてるのはこっちの方だぞ、何か人間の味方してるような感じだし。」
鋭い、流石キリムだ。
魔学校では大きく分けて三科目に分かれていた。
行動、魔術、分析。
行動は歩兵訓練。
魔術はその名の通り魔術。
分析は一般知識と軍の司令となるべき勉強。
このキリムは分析の科目においては俺を抜かすほどの実力の持ち主だ。
どうやら誤魔化してなんとかなる相手じゃないんだよな…。
考えてる俺に対し
「おい、聞いてるのかクロム!」
とキリムから叱咤を受ける。
ええい、この際単刀直入に言おう。
「すまん、キリム。その人間共を町に帰してくれないか。」
俺がキリムに言う。
「何故だ?」
答えを欲するキリム。
まぁ当然だよな…。
「コイツら人間を前線で盾にするんだろ?」
俺が魔族の思惑をキリムに尋ねる。
「ああ、多分上はそうするんだろうな。」
キリムは納得いかないような顔をしながら答える。
「だったら…。」
俺が言葉を続ける。
「コイツら人間を町に帰してコステアスを攻める時の踏み台にした方がいいんじゃないか?」
俺がキリムに提案する。やっぱり誤魔化そう。
「踏み台?」
キリムが食いついてきた。
「そうだ、踏み台だ。中央都市を一気に落としたあと植民地としてヨコスの町は使ったほうが有意義だろう、食料や物資の確保には人間の手を使うのがいい。」
俺はそれらしい言葉を使ってキリムを説得する。
「うーむ、しかし上がなぁ…。」
俺の謳い文句には納得したようだが上の承認がやはり必要か。
「よし、上には魔王である俺から直筆で書いといてやるから安心しろ。」
そう言うと俺は鞄から紙を出し爪で魔法文字を書いていく。
「ふむ、そういう事ならわかった、クロムに人間達を引き渡すよ。」
キリムはそう言うと馬車から降りる。
ふう、なんとかなったか…。
内心ドキドキだったがまぁなんとかなって安心したのは束の間。
「そうそう、アンジュが中央都市で指令やってるから顔出してやれよ、寂しがってたぞ。」
キリムがさらっととんでもない事を言ってぶっと吹く俺であった。




