勇者、心に誓う
カシムを担ぎユフィアを連れ、一旦キップアの馬車に戻る。
戻った時、リリスが馬車の前に佇んでいた。
俺の姿を視認するなり
「勇者さん、遅いです!」
とリリスが口にする。
「いや、俺は自分の片づけてカシムのとこ助けにいってたんだよ。」
苦笑しながら俺が言う。
本当はユフィアの仕業だが。
「お前のとこは片付いたのかよ?」
俺がリリスにそう言うと
「あんな雑魚相手になりません。」
薄々コイツの実力に感づいてたが魔族相手に雑魚扱いか。
アーシェやサーシャすらまだ戻って来てないというのに…。
そして俺に背負われてるカシムにリリスが気づく。
「カシムさんどうしたんですか!?」
慌ててリリスが俺に背負われるカシムに近寄り様子を見る。
「魔力を根こそぎ吸収されて失神したようだ。」
俺はカシムの容体をリリスに伝える。
「これは…、魔力もそうですが生命エネルギー自体吸い取られてますね。」
的確にリリスが言う。
「生命エネルギーか…。」
俺はそう言うとカシムを馬車に下す。
「魔力の補充はお薬で何とかするとして…。」
リリスはそう言うとカシムの口を強引にこじ開け紫色の液体を
一気にカシムの口に流し込む。
何やらぐったりしてるカシムが「おばっ!?」と
苦しそうにしてるが気にしていけない。
「生命エネルギーの方は精霊さんから分けてもらいましょう。」
そう言うとリリスは呪文の詠唱を始める。
「我、力欲して汝に問いかける…。」
呪文詠唱が次々と唱えられリリスの両方の掌から暖かい力を感じる。
その暖かさは次第に強くなり、なんというか…。
一言で言うと暑い、というか熱い。
「おい、リリス…。」
俺が心配そうに声をかけると
「ちょっと黙っててください!」
と怒られてしまった。
はいはい、黙ってますよ…。
そしてその「熱い掌」をリリスは一気にカシムの胸に振り下ろす。
「ぎゃー!」とかカシムの悲鳴が聞こえるが気にしない。
「ふう、これで大丈夫です。」
額から汗を拭ってリリスが言う。
「何をやったんだ?」
俺がリリスに問いかける。
「炎の精霊さんに力を借りたんです。」
簡潔にリリスが答える。
「それだけじゃわからん。」
俺はそれだけではわからないので言葉に出す。
「んーとですね、簡単に言うと炎の精霊さんに力を借りて体を温めて血行を良くして生命エネルギーを活性化させたのです。」
簡単ではないがまぁそれなら理解出来る範囲である説明をリリスがしてくれる。
「温めて…?」
「ええ、温めて。です。」
………。
俺も今後、十分注意してリリスの世話にならないようにと心に誓った。




