勇者、囲まれる
「囲まれたか。」
周囲を見渡しアーシェが言う。
「ああ、そのようだな。」
俺が相槌を打つように答える。
こんな奴ら俺一人で片づけてやる。
そう思ったがパーティメンバーは各々、敵に向かって突っ込んでいく。
ユフィアは戦闘要員として計算に入れないとすれば丁度5対5か。
まぁいい、パーティの力量を計るいい機会だ。
俺はそう考えると余って腕を組んでる魔族の元へ行く。
「おい、お前。ここのボスって誰だ?」
俺が腕を組み余裕そうな魔族へ問いかける。
「ふん、正しく俺だが貴様は何者だ?」
余裕そうな魔族が答える。人間の町って意外ともろいんだな…。
「俺か?俺は…。」
続けて俺が言う。
「勇者だ!」
そう言い放つと同時に魔剣リベレーターを鞘から引き抜き突っ込む。
ひゅっと紙一重でかわされ内心コイツやるなっと思ってしまう。
「ほう、貴様が勇者か。」
「確かに強大な魔力を感じる。このアシア様が直々に葬ってやろう!」
アシアと答えた魔族も剣を引き抜き俺と対峙する。
「はああああああああ!」
俺が叫びアシアに突っ込む。
キィンキィンっと幾度となく剣撃が合わさり強大な魔力の渦が二人の間へ生じる。
「流石だな、勇者よ!この俺様にここまでついてこれるとはな!」
強さを自負してるのかアシアは俺にそう告げる。
「いやいや、こっちの台詞だ。」
「魔族でここまで俺についてこれる奴がいるとはな。」
正直、俺の剣撃についてこれる魔族なんてそんなにいないと思っていた。
まぁ多分コイツもそんなにいない中の一人だと思うが。
「では、こちらから行くぞ!」
アシアは剣を鞘に戻し、呪文を高速で詠唱しだす。
む、この魔法は…。
「ダークイリュージョン!」
呪文の詠唱が終わると俺に向かって
先日俺が使役する者に放った闇の魔法が放たれる。
「まだまだ甘いな。」
俺がぼそっと一言喋り、続けて魔法を高速で詠唱し放つ。
「イノセントデュース!」
ピカッと空が光アシアが放った「ダークイリュージョン」は
俺の「イノセントデュース」によってかき消される。
この「イノセントデュース」という魔法は相手の魔法の
効力を完全に消し去る、地味だが俺が得意とする魔法の一つ。
精霊系魔法の一種だが属性は「無」属性という
何故か俺だけが使えこなせる親父に褒めてもらった魔法だ。
「な、なに!?」
驚いたアシアがたじろぐ。
今が勝機!
すかさず俺は魔剣リベレーターを抜刀しそのままアシアに放つ。
「フレイムバースト!!!」
俺の必殺剣をアシアは反応しきれず何の構えもなく食らう。
「うおおおおおおおおおお!!!!!!」
アシアが絶叫し必殺剣を放った場所は跡形もなく消し去っていた。
「さて、片付いたし他の連中の場所を見てくるとするか…。」
そう俺は独り言を呟き、他のパーティメンバーを探すのであった。




