勇者、勘違いされる
使役する者を倒した俺はパーティと合流する。
「あっ!アンタ今まで何処行ってたのよ!?」
そう問いかけてくるのはサーシャ。
「敵の頭を潰しにいってたんだよ。アーシェ達に聞かなかったのか?」
俺はそう言うとアーシェやリリスの方に顔を向ける。
リリスはぷいっと顔を背き、アーシェは「ん?」と言いながら
干し肉を貪っている。
絶対説明してなかったな、コイツら…。
俺は肩を落とし落胆しながら一応サーシャとカシムに事情を説明する。
「流石クロム!勇者だけあるわね!」
説明し終わって納得してくれたのかサーシャは胸を張る。
「流石です、勇者様!」
カシムも同じように納得してくれたようだが
その神様を見るような瞳でこっちを見るのはやめてくれないものか。
事情を説明し終わった頃には朝日が昇りかけていたので俺が出発を提案する。
そして、その出発が了承されパーティは
キップアの馬車へと乗り込み目的地である中央都市「ヴァルヴァ」を目指す。
「中央都市に行くまであと四日もあるんだよな?」
今日は俺がサーシャと変わり馬車を操るカシムの横に座る。
「ええ、途中で食糧の補給も行うので丁度四日ほどです。」
聖騎軍、第七分隊隊長、カシム・オルディアが言う。
「補給を行うっという事はどこか街に寄るのか?」
疑問を持った俺がカシムに尋ねる。
「ええ、そうですな。今日の夕刻には到着すると思いますがヴァルヴァとの中継地点を兼ねているヨコスという小さな町に着きます。」
俺の疑問をカシムが答える。
って事は今日はベッドでちゃんと寝れる訳か。
正直野営は見張り交代とかあってぶっちゃけダルイ。
寝不足のせいかアクビが出る。
「勇者様、お疲れのようですかな?」
カシムが訪ねてくる。
「そりゃあのあとずっと起きっぱなしだったからな。」
アクビをかきながらカシムに答える。
「それはそれは…、勇者様はご立派な奥方二人とお子様が二人いますからな。」
ハハハッと笑うカシム。
おい、ちょっと待て。コイツすごい勘違いしてないか。
「おい、アイツらはそんなんじゃ…。」
言いかける俺に対し
「いやいや、謙遜ならさずに。いやはや羨ましい。」
カシムはニヤニヤしながら俺に言ってくる。
このクソ親父に何言ってもダメだなっと諦める俺であった。




