勇者、仲間が加わる
トールギアの剣術大会が終わり二日が経ち
流されるがままこの国の王から
何やら【誓いの儀式】というのが俺に施された。
「これでお主は正式に勇者じゃ!」
王は年老いてはいるが子供のように無邪気な目で俺を見る。
(勇者探しに来て勇者になるとか…)
本当についてない。予言の石版を作った奴がまだ生きているなら
ソイツをぶっ飛ばしにいきたいものだ。
「時に勇者よ!」
王が俺に叫ぶ。
「ん?なんだよジイさん…?」
うざいのでテキトーに流したい。
「貴様!無礼であろう!」
大臣みたいなハゲ頭が俺を睨むが知ったことかとアクビをする俺。
「よいよい、勇者よ!お前には足りないものがある!」
いちいち大袈裟な態度と仕草をするトールギアの王
「俺に足りないものだと…?」
んー、色々考えたがやっぱアレか?忠誠心とか勇者の心得とか?
「そう、お前に足りないものは仲間じゃ!仲間を探すのだ勇者よ!!!」
ハァァァ?勝手に決めんじゃねえよ!
流されるがままに従っちまった俺も俺だが。
「お主の腕を見込んで我が娘を魔王討伐パーティに入れて欲しいのじゃ!」
おいおい…、魔王討伐しに行くのに女連れて行けっていうのかよ…。
「ジイさん、流石に女を介護しながら魔王退治なんて俺は嫌だぜ?」
まぁ魔王は俺なんだが。
「あら、私じゃ不満だと言うの?」
聞き覚えのある声が王の間、後方から聞こえた。
カーテン越しに現れたのは二日前剣術大会決勝で当たった女だった。
「え…、お前、姫だったのか!?」
勇者じゃなく姫だった事に更に落胆する俺。
「ええ、姫よ!貴方が勇者じゃなかったら昨日の一件で打ち首よ!」
親が親なら子も子か…。
王のように大袈裟な態度を取る姫。
うーん、確かに戦力としては申し分ないが
俺を倒す脅威と一緒に旅をするのはなぁ…。
「すまないが…」
と言いかけた時、姫から無慈悲な笑みと挨拶が送られた。
「私はサーシャ!よろしくねクロム!」
ちくしょう、可愛い。
こんな事言われたら仲間にするしかないじゃんよ…。
こうして俺の心は折られ剣術の達人である姫、サーシャとの旅が始まった。