勇者、告白する
トントン拍子でキップアの馬車が用意され激戦区である中央都市
「ヴァルヴァ」に向かう事になった。勇者パーティ一行。
カシム自ら馬車を操り、その横にサーシャ。
そして内部には俺、ユフィア、リリス、アーシェと乗り込むことになった。
正直、今にも逃げ出したい俺。
だってそうだろ!中央激戦区っていったら顔馴染みの奴もいるだろうし
俺が魔王だという事が一発でバレかねない。
うーむ…、どうしたものか。
荷馬車に乗って考えに耽っているとアーシェが声をかけてくる。
「何、深刻な顔してんだ?干し肉食うか?」
いや、いらねえよ。空気読めよお前。
そして正面に座るリリスがはたまた核心をついてくる一言を放つ。
「勇者さん、中央に行くと知り合いとかいっぱいいそうですもんね!」
ぶっと一瞬吹きそうになったが慌てるな俺、まだバレてないはずだ。
中央都市ヴァルヴァにはコステアスから馬車を走らせ5日ほどで着くらしい。
流石、中央都市と呼ばれるだけあって大陸がでかい。
その間に何か打開策を考えないと…。
馬車を走らせ1日目が終わり、パーティは眠りにつく。
見張りを交代で変わり俺の番に来た時、一瞬よからぬ事が頭をよぎった。
このまま逃げてしまおうか…?
どうやら俺は本当の勇者じゃないみたいだし中央都市に行ったら
それこそ誤魔化しようがない。
しかし…。
俺抜きでこのパーティは大丈夫なんだろうか?
ユフィアだけでも連れてったほうがいいのだろうか?
そうこう考えてるうちにリリスに「勇者さん交代ですよ。」と声をかけられる。
丁度いい、この際逃げるにしても真実を聞いておきたい。
今起きてるのは俺とリリスだけだ。
そう思い俺はリリスに「ちょっといいか?」と声をかける。
リリスは「何ですか?」とニコニコっと笑うが
多分俺が聞く事を予測してたのだろう。
「いつから気づいてた…?」
俺がリリスに問いかける。バレたのかバレてないのかここでわかるハズだ。
「何をですか?」
リリスが疑問を顔に出しながら言う。
くっ、あくまでシラをきるつもりか!?
ううむ少し言い回しを変えよう。
「ちょっと相談があるんだがいいか?」
俺はリリスに尋ねる。
「ええ、私で良ければいいですよ!」
ニコニコっと笑うリリス。正直心が読めない。
そして俺は話を始める。
「俺は剣術大会で優勝して【誓いの儀式】をして勇者に選ばれた。」
「だが、俺の身には何も起こらなかったんだ。」
「それって俺は勇者じゃないって事なんだよな…?」
正直に話した。リリスなら答えを知ってるかもしれない。
少し間を置いてリリスが答える。
「でも、私は少なくともクロムさんの事は勇者だと認識してますよ。」
屈託のない笑顔で俺に言うリリス。
「だって、禁呪を使ってまであの子を助けたじゃないですか、己の寿命を削ってまで…。」
そしてリリスが言葉を続ける。
「天がクロムさんを勇者と認めなくても私はクロムさんを勇者と認めてますよ。」
にこっと笑うリリス。
何かこの一言で救われた気がする。
俺、勇者やってていいんだな…。
「あと、ごめんなさい。誤魔化すような事言ってしまって。」
「本当は最初からクロムさんが魔族だと言うことは知ってました。」
突然の告白に俺が口をパクパクさせる。なんという不意打ちだ。
「あの時…、クロムさんは覚えてないでしょうけどグランエールで一度私とぶつかったんです。」
「その時、人間の格好をした魔族だと思いました…、でもよく考えてみたら私と一緒、ハーフなんじゃないかなって思いました。」
リリスなりの考えを俺にぶつけてくる。
「ああ、俺は魔族と人間のハーフだ。それは間違っていない。」
正直に俺が告白する。
「魔族と人間のハーフが勇者でもいいじゃないですか!今勇者じゃないのだったら今から勇者になればいいんです!」
前向きな言葉を俺にぶつけてくるリリス。
「だが…、俺は…。」
俺は魔王の息子、そして現魔王なのだ。とリリスに伝えようとした時。
物陰から蠢く者が確かに見えたのだった。




