表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者か魔王  作者: 和都
・第二章、ノヴィウス大陸編
26/81

勇者、疑問を持つ

宿屋兼酒場に向かい、晩飯を食事する俺らの元に衛兵の二人組がやってきた。


衛兵はきょろきょろとパーティを見ると

「間違いない…。」と呟きパーティに告げる。


「礼拝堂での暴挙により貴様らを拘束する!!!」

ん?…なんかしたっけか。


そこで「あっ」と思い出す。


そうか、アーシェが神父に向けて短剣を首に突きつけて脅したんだっけか。


俺が頭をポリポリとかいて衛兵に言う。

「衛兵さんそりゃ間違いってもんだ。」


「貴様、弁解する気か!?」

憤る衛兵が俺に言う。


「俺らは逆に被害者ってもんだ。道を聞いただけで金をせびられたんだぜ?」

俺は真実を口にする。事実間違っちゃいない。


「しかし、そこの長髪の女は神父に剣を抜いたと聞いたが…。」

衛兵の心が揺らいだ、今がチャンス。


俺が幻惑の魔法を見えないように机の下で指を使い、なぞって詠唱する。


魔法の詠唱は何も言葉だけではない。

指で文字を書き終わり幻惑の魔法が衛兵二人にかかる。


そして衛兵二人がいきなり服を脱ぎ出し踊りだす。


「きゃー!!!」


酒場で飲んでいた女性客が叫ぶ。

あっという間に新たな衛兵がやってきて

「なんだなんだ!?」と騒ぎ出す。


「いや、何かこの人達酔っ払って裸踊り始めちゃってな…。」

俺がニヤリとして集まってきた衛兵に言う。


「ぐぬぬ、これは失礼した。身内の失態は我が失態…。」

そう言うとやってきた衛兵は裸で踊っている衛兵を引きずって酒場を後にする。


「クロム、何やったの?」

あっけらかんとしていたサーシャが俺に尋ねる。


「なぁに、お前を探しに行ったときアーシェがちょっとやらかしてな。」

「ちょいと幻惑の魔法をかけてやっただけさ。」

俺がそうサーシェに告げると

アーシェは「ふん」と鼻を鳴らしユールを一気飲みする。


「でも、ほどほどにしてくださいね。これじゃまるで魔族ですよ?」

またまたリリスがおかしな事言い出して俺がユールを吹き出す。


「い、いや、元はと言えばお前らが勝手に離れるからこうなったんだぞ!?」

事の失態をコイツらに着せる。


「あっ、それってひっどーい!」

サーシャが反論するがアーシェがギロリとひと睨みすると大人しくなった。


「しかしまた来ると厄介だな…。」

俺が耳鳥のステーキを頬張りながら言う。


「まぁ明日には出発するし別に構わんだろ。」

干し肉を引きちぎりながらアーシェが言う。


「出発するにしても色々情報も整理しとかないといけませんよね。」

リグルのジュースを飲みながらリリスが言う。


「でも、ランバスタで調べた時はこの大陸の反対側に行かないとベルハザードへの定期船は出てないのよね。」

サーシャそう言い、ユールおかわり!と店員に言う。


コクコクとユフィアも頷く。


そして隣の席の冒険者が俺らパーティに話しかけてくる。

「お前さん達、大陸の反対側に行こうとしてるのか…?」


俺が「ああ、そうだが?」と答える。


「やめとけやめとけ、今大陸の中央で聖騎軍と魔王軍がドンパチやってるぞ。」

隣の席の冒険者がそう助言する。


聖騎軍とは人間と亜人、そして反魔王派の魔族が手を組んで結成した軍だ。

人間だけではなく様々な種族が連携してる為、親父も大層苦戦してたらしい。


(確かに昔からこの大陸のせいで戦争が長引いてるというのは親父やジイから聞かされてたな…。)

そして俺は考える。


「どこか抜け道とかないのか?」

隣の席の冒険者に俺が聞く。


「いや、そういうのはないねえ。船で迂回するにも魔王軍にすぐ沈められちまう」

隣の席の冒険者が答える。やっぱそう都合良くはいかないか。


そしてサーシャがバッと立ち上がり「ふふん」と鼻を鳴らす。


正直、嫌な予感がする。


「ここにいるのは【誓いの儀式】の洗礼を受けた勇者!勇者クロムよ!!!魔王軍なんて蹴散らして中央突破しかないでしょ!!!」

このジャジャ馬はまたとんでもない事を言い出した。


この前のグランエールで懲りてないのか。

また白い目で見られるぞ…。と思った俺だが今回は違った。


「おおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


なんか大歓声が上がっている。


「勇者だと!?」

「英雄じゃないか!?」

「この戦争を終わらしてくれ!!!」

「待っていたぞ!!!」


なんか熱烈歓迎されてるらしい。


「よし、俺も勇者様と共に聖騎軍に加入するぞ!!!」

「俺もだ!」

「私も!!!」


なんかすごい大変な事態になってきた気がする。


「おい、サーシャ…。」

俺が呆れたようにサーシャに言う。


「なぁに、勇者様?」

にっこりと笑い勝ち誇るサーシャはどうやらご満悦のようだった。


「何故、グランエールであんなんだったのにここではこうなるんだよ…?」

俺は勝ち誇るサーシャに問いかける。


「うーん、【誓いの儀式】の事言ってなかったからかしらね?」

首をかしげてサーシャが言う。


「【誓いの儀式】ってそんなに凄い事なのか?」

俺は疑問をサーシャにぶつける。


なんか契約を結ぶわけでもなく

ただひたすら王からグダグダ言われただけだったぞ。


「ご説明しましょう!」

ここでリリスがバッと立ち上がり説明に入る。


「【誓いの儀式】というのは古くからトールギアに伝わる秘伝の言霊で勇者を選別する時に使う呪文なのです!」

「ここで勇者じゃない者がこの儀式を受けると何も起こらないままですが勇者さんはそこで勇者に選別された。という事ですよね!」

リリスが一通り説明を終え俺に言う。

というかなんでお前がそんな事を知っているのだ。


「あ、あぁ…。そうだな。」

無意識にそう答えたが


ちょっと待て。


勇者じゃない者がこの儀式を受けると何も起こらないままだと…?


確かに何も起こらなかったがなんかトントン拍子で

俺が勇者に祭り上げられただけだぞ…?


それってまさか俺が勇者じゃないって事なのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
評価、ブックマーク等、宜しくお願い致します!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ