勇者、説明する
じー………。
横で一部始終を見ていたサーシャとリリスが
内情を聞きたそうにうずうずと構えている。
さて、どう説明したらいいものか。
「あの、勇者さん!」
説明に困っているとリリスが俺に問いかける。
「あのお爺さんとどういうお知り合いなんですか!?」
あー、まずはそこからか…。
んー、またあれだ。
「勇者の里」関連で誤魔化そう。そんなものは存在しないのだが。
「あのジジイは勇者の里のお目付け役だ。」
俺がキッパリと誤魔化しではないと主張するように答える。
「でも、城がどうとかいってましたけど…。」
リリスが鋭く突っ込みを入れてくる。
「勇者の里にも城があってだな…。隠していたが俺はそこの王子なのだ。」
言ってて自分が恥ずかしい。まぁ魔王軍の王子だった事には変わり無いんだが。
「へぇー…、勇者の里ですか…。」
リリスが人差し指を顎につけ考えるように言う。
頼む、このまま騙されてくれ。
「すごいじゃない!クロム!やっぱアンタ、タダ者じゃなかったのね!」
すっかり信じ込んだサーシャ。
道中、旅をする中でコイツの扱い方はわかってきた。
「うむ、すごいだろう。すごいだろう。」
よし、このままならいける!そう思った俺だが
「でも、勇者さんの殺気というかなんというか先ほどのもすごかったですね。」
「まるで魔王みたい。」
リリスが放った突然の一言。
思わず俺は固まった。
い、いや…。大丈夫なハズだ。バレてないはずだ。
ニコニコっと笑うリリスの思惑はわからんが誤魔化しきれたハズだぞ俺。
今はそう、信じるしかない。
「い、いや、勇者にも威厳というかそういうのも必要だと叩き込まれててだな…」
必死に言葉を振り絞る俺。
「そうですよね!勇者さんが「魔族」なんて事ないですもんね!」
ぶっ、と一瞬吹きそうになったが
「当たり前じゃない!」とサーシャがフォローを入れてくる。
なんかリリスの顔がニコニコではなくニヤニヤに見えるのは気のせいだろうか。
正直、生きた心地がしない。
今度それとなくリリスと二人きりの時、探ってみよう。
確信があるわけではないがコイツなんとなく感づいてやがる。
「そういえば、勇者さん。船酔いは大丈夫なんですか?」
リリスが思い出したかのように聞いてくる。
「あっ、そういえば…。うぷっ」
気持ち悪さを思い出し生きた心地がしない原因は
この船酔いのせいじゃないかと思う俺であった。




