勇者、出航する
一夜が明け、パーティ一行は港町「ランバスタ」へ向かう為、
旅支度を整えキップアの荷馬車に乗る。
昨日の話の方針はランバスタへ行き、
船で魔王大陸「ベルハザード」に行こう。という事になった。
しかし、ベルハザード大陸に行くには
事前の情報収集(主に冒険者ギルド)の結果、
船を乗り継ぐため、一旦ランバスタから「コステアス」という
港町に行かないと行けないらしい。
そもそもこの大陸の事に関してすら俺は知らなかった訳で、まぁ整理すると
この大陸は主に剣の国「トールギア」が治める大陸「キルトゼア大陸」
ここから西に海を航海し「コステアス」という港町は「ノヴィウス大陸」
この「ノヴィウス大陸」を横断し大陸の反対側にある港町から
ベルハザード大陸への直通船があるらしいとの噂。
まぁまずはランバスタからコステアスに行かないと
いけないんだなっという事だけはなんとなくわかった。
キップアの荷馬車を走らせ三日。
ようやくランバスタへと到着する。
「へぇ、ここが港町か…。」
俺は生まれてこの方150年間、海というものを見たことがない。
潮風が気持ちいいし何かこう昼寝したくなるような感じがした。
「海だー!海だー!」とはしゃぐのはサーシャとリリス。
はしゃぐついでに二人して海の方までダッシュして行きやがった。
まぁコイツららしいっちゃらしいのだが…。
アーシェはキップアの荷馬車を荷馬車屋に返却する為、今は別行動。
ユフィアは俺の後ろをちょこちょこついてくる。
「お前も海は初めてか?」
物珍しそうにキョロキョロしているユフィアに俺は尋ねる。
「………。」
コクコクと大きく首を振る。どうやらコイツもコイツなりにはしゃいでるらしい。
「やっぱグランエールとは売ってるものが違うんだなぁ。」
港町だけあってかやたらと魚の露店が多い。
「よぉ、兄ちゃん!一本買ってかねえか!」
そう俺に言ってくるのは露天のオヤジ
くんくん、と鼻を効かせると香ばしい良い匂いがする。
「丁度、今焼きあがったところだ!食ってきなよ!」
そう言うとオヤジは一本串に刺した焼き魚を俺に手渡す。
「お代は10セタな!」
オヤジは俺にそう言うと、やれやれという感じで10セタを渡す。
購入した焼き魚を頬張る。うん、これはうまい!
「ほう、焼き魚か…。」と突如、現れるアーシェ。
「!?ビックリさせるなよ!魚ならほら、あそこで売ってるぞ。」
俺が指をさし店の方角を示すと
「がぶり」
アーシェが俺の焼き魚を頬張り「うん、これはうまいな。」と言ってくる。
「おい、そこは俺が大事にとっといた一番うまそうな腹を!お前は…!!」
俺がアーシェと口論してる時、サーシャとリリスが戻ってきた。
「船見つけたよー!コステアス行きの定期船!もうすぐ出発だってさー!」
サーシャが手を振りこっちにアピールする。
「ちっ、後で10セタ払えよ。アーシェ!」
「お前、幼女趣味のくせしてドケチときたか。」
「だから幼女趣味じゃねえ!」
そうこうやり取りしてる中、リリスが「まあまあ…。」と間に入ってきた。
ふん、俺が一番楽しみにしていた焼き魚の腹を食いやがって…。許せん!
そして追い打ちをかけるようにアーシェが
「あの焼き魚の腹、卵が入ってていい感じにだな…。」
おい、こらテメェ喧嘩売ってんだろ!!!
「ちょっと、二人ともやめてくださーい!」
リリスが間に入りまたもや止められる。
ぐぬぬ…、いつか仕返ししてやるっと心に誓う俺であった。
コステアスに向かう定期船に到着しパーティは船に乗り込む。
「わー!船だ船だー!」とさっきと同じ反応を見せ
ダッシュするサーシャとリリス。
船のクルーらしき男がいたので聞いてみる。
「コステアスにはどれくらいで到着するんだ。」
「風と波の影響もありますが順調にいけば明日の夜には到着すると思いますよ。」
ほう、今正午過ぎだからそれまではのんびり出来る訳か。
確かにまだ俺の魔力も全快にはなっておらず
まぁ6割くらいは回復してるのだが体の方はまだ多少怠い。
船の広間を見渡すと商人や冒険者、様々な人がくつろいでいる。
俺もくつろがしてもらうか…。
「では、コステアスに向け出航します!」
船長らしき男のアナウンスでパーティ一同はコステアスへと向かって出航した。




