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勇者か魔王  作者: 和都
・第一章、キルトゼア大陸編
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勇者、禁呪を使う

幼い少女の亡骸を見る。


少女を救う為には禁呪を使わなければならない。


ただし、俺のマジックポイントはゼロだ。


どうすればいい?どうする事が出来る?

己自身に問いかける。


俺の記憶の内にある過去の文献を漁る。

蘇らせる魔法なんてものは聖音系の魔法でしかない。

しかし、俺は魔族だ。魔族として育ってきた半魔族だ。


今、出来る最善の策は…。


「俺の魂を触媒に使うしかない。」

そう俺は呟くと自身の胸に手を当てる。


「今、ここに綴る。我、魔族の長なり冥界の門より通ずる…。」

呪文をひとつひとつ読み上げ俺は冥界の門を開く。


まずは逝った魂をここに呼び戻す。


「来りて願う、我、魂の嫦娥なり!」

呪文の詠唱が終わり俺の魂と少女の魂のパイプラインが繋がる。


そして、次は無くなった心臓。


これは今の俺にもどうしようもならない。

だが、しかし策はある。


「生きて」さえいれば

いや、「動いて」さえいれば必ず蘇らせる事は可能なはずだ。

自分自身に言い聞かせる。


そして冷たくなった少女に追い打ちを

かけるよう俺は更に魔法を詠唱する。


「我、吹雪の黄昏の精なり、汝…。」


そう、俺が今やるべき事は。

この幼い少女をグールとして動く屍にする事。


魂を定着させ、常に体を冷凍状態に保ってさえすれば腐ることはない。


そして、少女の魂を繋ぎ留めるのは俺の魂。

この禁呪は大昔、奴隷を作るのに使用された禁呪中の禁呪だ。


マジックポイントを大量に消費する代わり俺は寿命という代償を差し出す。


それがどれくらいになるのかはわからない。

今、死ぬかもしれない。

成功するかもわからない。


ただ俺がやりたいようにやる。


「…これじゃ本当に神話に出てくる魔王と変わらないな。」

ぼそっと俺が口にし、最後に召喚した魂を定着させる。


「嫦娥より来りて魂の輪廻を此処に今、命ずる。」

呪文の詠唱が終了し、青白い光が少女の中に入っていく。


超冷凍された少女の体から血が出ることは無くビクッと動いた事がわかる。


「よう、大丈夫か?」

俺は幼い少女を抱き抱え問いかける。


「…?」

幼い少女が目を覚まし怪訝そうな顔で俺を見る。


そしてコクコクと首を頷かせ俺の顔に少女が手を伸ばす。


次の瞬間俺は涙で少女の顔を濡らしていた。

そして、その涙は一瞬で凍りつき今にも俺の手は腐りそうになるが

決して俺は少女を離さず抱き抱えて泣いた。


声にならない声で泣いたのだった。






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