勇者、拠点に乗り込む
半刻ほど歩いた頃か、目的地、奴隷商人の拠点が見えた。
遠目から見ても一目でわかる。
…おいおい、拠点っていうより要塞じゃねえか。
強固で高い城壁、入口は中央にある大きな石造りの門のみ
山々に囲まれてはいるが侵入するには骨が折れそうだった。
「おい、アーシェ。当然侵入経路とか知ってるんだよな?」
俺がアーシェに確認する。
「無論だ。」
そう言い放つとアーシェは門へ向かって一点突破で走り出す。
おいおい、まじかよ!?
やっぱ詳しい事を事前に聞いておくべきだったと思った時は
門番の二人をアーシェが始末した後だった。
そして
城壁の上にいる見張りに気づかれ
「おい、またいつもの女が来たぞ!?」と騒ぎ出す。
ああ…、コイツいつもこんな事してたのか。
見張りからアーシェに向かって矢が放たれ、剣で矢を薙ぎ払い
アーシェは投擲用の短剣でその見張りの喉元を貫く。
「あのー、アーシェさん…。」
おずおずと俺がアーシェに問いかける。
「なんだ?」
その疑問をアーシェが聞き返す。
「この要塞に侵入した事ってあるんだよな?」
嫌な予感がする。
「いいや、まだない。こうやって毎度この城壁に阻まれてな。」
「だが今日は仲間がいる。」と何の根拠もなくニッと笑う。
やめてくれ、死人が出る。
「放てー!!!」
増援が来たのか城壁の上から声が聞こえ
一斉にパーティに向かって矢が飛んでくる。
おいおい、やばいぞ…。
俺一人ならどうにでもなるが三人を庇いながらってのは
そう考えているとリリスが前へ出て
「お任せください!」
そう言って鞄の中から何やら一枚のカードを取り出す。
そしてそのカードを地面に叩きつけ地面から土の壁が
パーティを矢から守る。
おお、コイツ精霊系魔法だけじゃなく呪具も扱えるのか。
これは俺も驚いた。
呪具というのはそれなりの魔力と知識、そして経験がないと
使いこなす事は至難の業で武器や防具とは違い道具の場合は
主に自身で魔力を注いでその性質を作らなければいけない。
「ちょっと!でも、これじゃ前に出られないじゃない!」
そんな事を言うサーシャを尻目に
「リリス助かったぞ!」
俺はそう言うと飛び交う矢の間をすり抜け城壁の弓兵隊に向け
魔剣「リベレーター」で遠距離から真空波で吹っ飛ばす。
「うおああああ!!!」
そのひと振りで全ての弓兵達が城壁の上から転落し
俺は突っ込み、門に剣を振りかざす。
「フレイムバースト!」
俺が得意とする炎の魔法と魔剣「リベレーター」の融合技。
剣自体に炎を纏いさっきの真空波と一緒に放つ俺の必殺剣だ。
【ドォオオオオン】
石造りだった大きな門は跡形もなく消し飛び突破口を開く。
「雑魚が来ないうちに行くぞ!」
もう敵に気づかれたし正面突破しかないと腹を括る俺であった。




