5/6
『・』。
『・』。
黄金の林檎は未熟なまま
捨てられた稚児は祈りを捧げる様に両の腕を広げ、受け入れる。
太陽に等しき黄金の樹は穢れた私達を嘲笑の輝きで見下ろす…。
実から滴る蜜で喉を焦がし、矯声を放て。
暗黒の林檎は爛熟なまま
成長した稚児は慈愛を浮かべる様に首を仰け反り、受け入れる。
血に割れた黒い樹は地を這う私達に、無様な葉を差し伸べる…。
実から滴る蜜で喉を潤し、慟哭を鳴らせ。
果実を選ぶは囚人達。
この地に縛られし、哀れで無様で愛おしい彼等。
終わり無き咎に独り囁き、どちらの果実を選ぶのか。
その味はどちらが美味であるのか…。
何故に樹々は実を成すのか?
土から這い出た芽は太陽へと手を伸ばし。茎は幹となり穢れと共に成長を遂げる。
幾千の枝は幾多の可能性へと紡ぎ繋がれ、実は新たな未来と共に種を孕む。
何故に彼等は実を選ぶのか?
選んだ果実は果たして正しく選ばれたものであるか。
果実を選んだ事に抱く願いは果たして何であるのか。
星々はただ樹々と彼等を見つめ、
大地は生温かい泥へと変わり果て種を飲み干し沈む。
朽ち果ててしまえばいい。
我が魂も、この身体も、果実の受肉ごと…。