その他も尽きて
12月25日
晴彦&夏樹side
女性の身支度には時間がかかる。
時間通りに来ないのは仕方がない。
俺は寛容な心で遅刻は見逃そう。
嘘だけど。
時計の針は既に九時から大きく180度回転している。
晴彦は、コートのなかのスマホを取り出すと夏樹に電話をかけようとした。出なければ帰るつもりだ。
「ごめんー!待たせたよね!」
大声に周りの人も振り向く。本人はお構いなしに走ってくる。
「勘弁してくれ…。」
晴彦は、ため息をつくと肩を切らしている夏樹にお茶をわたした。
「んー!つめたい!」
「当たり前だ。ホットで買ったのにお前のせいでコールドになったんだからな。」
「だから、ごめんってば。」
「まあ、いいから。今日はどこいくの?」
不意に前回の記憶が蘇る。あの時は、夏樹が元元彼…だっただろうか。予約したのにもったいないという理由で、いかにも二人きりにさせたがるような怪しい店に連れていかれたことがあった。さすがに、あれには晴彦も焦った。
嘘だけど。
「んー。予定変更とかいい?」
「変更?」
夏樹が意地悪そうな笑いをする。
この笑顔を見れば男なんて一発で落ちるだろう。
性格を見るまでは。
「いいけど。どこいくんだよ。」
「なーいしょ!いくよ!」
「歩いていくのか?」
「当たり前!子供は風の子!」
「もう俺たち二十歳超えだよ…。」
二人の足跡が次々と降り積もる雪の上に刻まれていく。
ビックツリーは控えめな光を発しながら人々を見つめていた。