表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の最終履歴  作者: 柿崎 知克
≒≪ニアリ・イコール≫
5/14

 5. 今日から始まる新しい日々

これより【現代 編】本編が始まります。

尚、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・国家・固有名称等は架空の存在であり、それに類似する実在ものとは一切関係がありません。

 ―――4月



「お姉ちゃーん、準備できた~~?」

 玄関で革靴を履いていると、門の外の通りから沙希が私を呼ぶ声が聞こえた。

 1分程前に玄関から出たばかりだというのに、もう待ちきれないらしい。

「沙希、落ち着け」

「良いじゃない、兄さん」

はしゃぐ沙希と、その余りの舞い上がりっぷりを嗜める亜希。

そんな二人の何時もの遣り取りに、私は口元を綻ばせながら返事を返す。

「もう出来たよ~~~」

 かと思いきや「たよ~~~」の辺りで玄関の引き戸が乾いた音と共に開き、沙希が顔を出してきた。

 如何やら私の返事のタイミングは、沙希のタイムリミットに対して僅かに間に合わなかったらしい。

 でも舞い上がりすぎだよ、沙希。

「もう。沙希ったら落ち着き……」

 私も亜希と同じ様に嗜めようと思ったが、その言葉は途中で途切れた。

 沙希のその表情。

 それは『舞い上がった』表情ではなく、安心したような表情だった事に気付いたからだ。

 そして同時に、妹は待ち切れなかったのでは無く私の事を心配してくれていた事にも気付く。

 ……目を離した隙に再び消えてしまうのでは無いだろうか、きっとそんな心配を。

 だから、そんな心配性な妹に私が答える言葉を、私は変えた。

「大丈夫、私はここ(、、)に居るよ♪」

 私の返答に笑みを取り戻す沙希。

 どうやら私のこの答えは、沙希にとって満足の行くものだったらしい。

 「……姉さんの気配は、俺が把握している。言っただろう」

 「兄さんに判ったって、私は心配なんだから仕様がないでしょ!兄さんの意地悪!!」

 玄関引き戸のすぐ外で、再び嗜める亜希に対して、沙希は子供っぽい仕草で亜希に言い返す。

 ここで初めて、私は亜希も沙希同様に私を心配してくれていた事に気付いた。

 (こんなに弟、妹に心配をかけるなんて姉失格だなぁ)

 そんな事を思いながら、私は亜希にもお礼を言った。

 「亜希も心配してくれていたんだね、ありがとう♪」

 「……家族を心配するのは当たり前だ。だから気にしなくて良い」

 ぶっきらぼうな台詞だが、それはクールを装った照れだと言う事を私は知っている。

 そう、亜希は意外と照れ屋さんだ。

 だからそれがとても容姿とのギャップも相俟って可愛くて仕様がない。

 だから私はすぐに、亜希をからかいたくなる。

「流石、龍宮家が誇るクールビューティーな次女だね♪」

「……先に行っている。姉さんも早くな」

 あれれ、からかい過ぎたらしい……少し反省だ。

 そして私と亜希との遣り取りに業を煮やしたのだろう。

 妹は靴を履き終えたばかりの私の手を、腰を落とし体重をかけぐいぐい引いて玄関の外に連れ出す。

「んもう。ほらほら、みんな待っているんだよ」

「??」

 その言葉に少々の疑問を感じたが、その答えを妹から得られないうちに、私は玄関先から門内の庭へと一歩踏み出してしまった。

 


 門内の庭。それ程広いとは言えない場所に、父と母。そして龍宮流空手の住込みの門人である6人が笑顔で迎えてくれた。

 そして並んだ門人の一人である香坂美咲さんが、一歩前に出る。

「高校御入学、おめでとうございます、皆様」

 そして私達3人に向かって、祝福の言葉を贈ってくれた。

 その他の門人の方々も、祝福の言葉に合わせて拍手をしてくれる。

 嬉しかった。

 あれから7年。再びこのような日が迎えられるなんて私は諦めていたから。

 だからきっとこの瞬間は、20年の波乱の人生で輝く1ページになるに違いない、そう思える。

「……ありがとう、ございます」

 思わず涙腺が緩みそうになりながらも、お礼を述べる私に美咲さんは、腰元からハンカチを取り出し目元を拭ってくれた。

「もうすぐ、藤崎さんが車を回してくれる予定ですから……あ、来たみたいです」

 美咲さんが私の背中越しに視線をあげる。

 私も振り返る。

 するとそこには、私の師匠でもある藤崎さんがグレーのライトバンが門の外に停まっており、運転席の窓越しに手を振っていた。

「ささ、皆さん。早く車に乗って下さい、でないと入学式に遅れてしまいますよ?」

 結構茶目っ気たっぷりに、私達を急かす美咲さん。

 私は彼女の言う通りに、皆さんに頭を下げながら家族と共に藤崎さんの車に乗り込んだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 2年前の秋

 私は、生まれ故郷であるこの世界に還って来た。

 何処をどう歩いたのか、そもそもこの世界の何処に降り立ったのかなんて判らなかったのだ。

 そもそも、私は機体を貫く膨大な光に包まれたあの瞬間、確実に『死んだ』と思っていたのだから、心の準備なんて出来ようが無かった。

 嘗て異世界で似たような経験を一度していなければ、多分もっと長時間呆けていただろう。しかし、その経験のお陰で先ずは人里に向かわなければいけないと、本能的に感じて歩き出していた。

 結局のところ、最後の戦闘の影響もあったのだろう。

 私は行き倒れになってしまったのだが、その行き倒れた場所が実家の裏口で、見つけてくれたのが妹であった事は僥倖であったとしか言いようが無い。

 ……若しかしたら、今迄の事全てが僥倖では無く、何者かの差し金だったかもしれない、なんて事も考えられる。

 7年前の私ならそんな陰謀論、小説の読み過ぎと一笑に付す事が出来たかもしれないが、今の私にはそれが現実に在り得る事だと悟っている。

 だからと言って、その居るか居ないか判らない黒幕の手掛かりも無い現状では、疑心暗鬼の領分を越えるものではない。

 つまり、気にするだけ無駄なのだ、そう今は。

 私がそんな陰謀論を唱えるような人間になってしまった原因である7年間。

 その間に何があったのかは後々語るとして、先ずはこの世界に還って来た頃について語りたいと思う。



 先程も述べた通り、私は行き倒れて気を失っていた。

 なので気が付いたときは、病室のベットの上だった。

 薄らと開いた目に映ったのは見知らぬ病室と、私の左腕に繋がったチューブと点滴パック。

 そしてベッドの脇の椅子には、ズボンを穿いた女の子が足を組んで座っており、文庫本を読んでいた。



 私の気配に気付いたのだろうか、その女の子は顔を上げ文庫本を閉じた。

「……大丈夫か?」

 その子の顔立ちや少しハスキーな声質に、私は確かに聞き覚えがあった。

 だからその言葉の意味に答える前に、記憶の湖を深くまで潜む事にする。

 不用意な返答は自らの立場を危うくしかねないのだから、警戒しておくに越した事は無い。

 先ずは義父と同行した際に出合った人を思い浮かべる。

 そして条件に合致しそうな人々を並べる。

 男言葉を使っていたから女性仕官の一人?……いや結構な乱暴な言葉使いだから、整備士だったかもしれない。

 それとも更に昔か。

 だとすれば【アーシア】の王都か、それとも港町?竜の里にこんなボーイッシュな娘が居ただろうか……?

 私は少しずつ記憶を遡りながら、過去に出会った一人一人を思い出してゆく。

 そして該当する記憶は、かなり深いところにあった。

 (……!?)

 そして、その結果に驚く。

 何故ならそれは、7年以上前まで遡った時間にあった記憶だから。

 そして次にこれが、現実であるかどうかを疑った。

 何故ならそれは、私が既に二度と会えないと諦めていた人達の一人の特徴と合致したのだから。

 それはある予測を裏付けるものだから。

 だから私は恐る恐るその名前を口に出す。

 多少私の記憶とは違っているけれど、それは私の記憶違い?

 いや、あれから7年も経っている以上、成長している事は当然なのだから、その誤差は許容範囲なのだろう。

 もしこの子が私の思った通りならば、この子は私の……双子の……

「……沙希?」

「……亜希だ」

 一瞬の空白の後に訂正の言葉。

 どうやら外れたようだ。

 私の所為で少々気不味い雰囲気が生まれたが、それはまぁ私にとって些細な事でしかない。

 重要なのは、ここにいる子が『私の弟である亜希』を名乗っていると言う事だ。

 それはつまり、私が生まれた世界、私の故郷に帰って来れたと言う予想が、現実に近づいたという証拠。

 (でもこの子は本当に亜希なのだろうか?)

 7年経っているにしては、成長が悪いような気がしてならない。

 こことは別の世界である『アーシア』に私が墜ちた(、、、)とき、私が14歳で弟妹は13歳だった筈。

 単純に考えるのならば、弟は20歳の成人だ。なのにその姿は中学生くらいの女の子にしか見えない。

 まぁ女の子に見えるのは、私の『異世界堕ち』前からそうだった気もするので仕方無いとしても、成人と子供の気配の違いくらいは判る。

 もしかしたら、ここはよく似た別世界か、はたまた死の間際に見るという幸福な夢の続きか。

 ……後者の方が、多分に可能性が高そうだ。

「姉さん、本当に大丈夫か?」

 私が疑心暗鬼と言う名の思考の迷宮に嵌まり込んでいると、亜希と名乗る子が私を姉さんと言って来た。

 悩んでいる間に私は随分と冷静になれた。

 (……むぅ)

 どうやら設定は私の記憶と違いが無いようだが、然しながら安易に安堵するのは危険である。

 私は一度、敵の精神攻撃で家族の夢を見せられ死にそうな目に遭っているのだ。

 であれば、ここは確認の為にもう一押し必要だろう。

「えーっと、確認するけれど。私達、近所から『仲良し三姉妹』って呼ばれていたよね?」

 これは引っ掛けだ。人生2度目の精神攻撃はこれで破った。

 あの時は、つらつらとどれだけ仲の良い姉妹だったか口にしたから、それが幻覚であった事を見破れた。

 そんな私の思惑に気付いているのか気付いていないのか、目の前の子は

「それを言うなら『空手三姉妹』だろ……ってか、三姉妹言うな」

 それは、あまりにも懐かしいツッコミ。

 どうやらこの子は、間違い無く私の弟のようだった。

 でもこの子はまだ20歳に見えないし、その気配も無い。

 だからその事については、かなり疑問がある。

 然しながら、亜希は確かに心と比較して身体の成長が遅い子だった覚えがある。

 だとすれば、本人も成長が無くて悩んで居るのかもしれないし、可能性を言えば何かの病気なのかもしれないのだ。

 これは本人が話す気になるまで、暖かく見守ってあげるのが姉の勤めだろう。

 私が自らを納得させて頷いていると、その姿を見て弟は呆れたような声で言い始める。

「……何に頷いているのかは判らんが、失礼な事を考えているのだけは確かだな。

 まぁ、それだけ俺をからかう余裕があるのなら精神上は大丈夫そうだし、ナースと医師を呼ぶからそこで大人しくしていてくれ」

 と、どっちが失礼なのか判らない台詞を吐いて私の枕元のコールスイッチを押す。

 (……あ、コールスイッチってここにあったんだ)

 それから30秒も経たないうちに看護婦がやってきて、それから直ぐに医師もやってきた。

 これからいくつもの検査を行いますと医師は私に伝え、弟には看護婦が家族の方は検査室の外でお待ち下さいと告げた。

「それでは、目が覚めたこと家族に連絡してきます」

 弟は医師にその様に答え、病室から出て行った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 それからはもう何が何やらてんやわんやだった。

 母さんは泣いていた。

 父さんはそんな母さんに胸を貸し、背中に手を置いて慰めていた。

 ……こんなにも仲睦まじかったのか、うちの両親。

 妹は私に泣きながら抱きついてきた。

 泣かれるのにも抱き付かれるのも困るが、少々驚きだったのがその成長具合だ。

 しっかりと成人女性として成長をしていた。

 多少胸の部分のみがアンバランスに成長してしまったようだが、世の中の男性はそういうのが好きな人も多いし、何より成人女性としては問題の無い成長具合だろう。

 ……であれば、亜希のあの姿は何故なんだ?やはり病気なのだろうか、まさか私のように生体改造をうけてしまったとか、いやいやこの世界でそれは確か問題行為だった筈だとか、私は簡単に思考の渦に飲み込まれる。

 そして次の難関が医師と警察だった。

 先ずは医師達。

 彼ら―――当然、女医さんもいた―――は、私の身体に異常が無いかどうかを調べた。

 脳波や血液検査等の病的なものから、身体の怪我や乱暴の痕跡の検査―――まぁ所謂私がレイプされたのでは無いかとの疑念が在った訳だ―――等々を色々調べられた。

 幸いにも別世界『アーシア』で受けた傷跡については、先日迄お世話に為っていた世界に於ける魔法か魔術かとも思える高度先端医療技術によって義父が癒してくれた。

 もし可能性があるとしたら、私の体内にあるナノマシンに気付くかもしれないが、この世界とあの世界の間には、科学技術の格差が開きすぎている。

 そうであれば、ナノマシンと特定する―――その概念があるか判らないけど―――可能性は極めて低いと考えて良いだろう。

 由って、結果は『身体には特段の異常無し。但し、脳波に以上は無い為心因性と思われる記憶の欠損あり』で落ち着く筈だ。

 次が警察だ。

 かなり根掘り葉掘り聞かれた。いやしかし、もうこれは仕方が無いと思う。

 普通|(?)の女子中学生が失踪したわけじゃない。

 父は警察関係者に何人も知人が居たし、家のお客さんにだって私が気付かなかっただけで私と面識がある警察関係者は居た筈だ。

 だからその人達は私が家出するような娘でない事は知っていた筈だ。

 そして何より7年前のあの日(、、、)は、私が地区予選で優勝した日だった。

 (……あぁ、何だか何もかも懐かしいなぁ)

 つまり空手関係者や地方紙記者等の耳目を集めてしまった日だった訳であり、その空手小町―――自分で言っていて恥ずかしいが、そんな風に大会会場で言われたのだ、私は―――が同日の帰宅中に自ら失踪そして家出をする理由も無い。

 その上バック一つ残して行方不明になるなんて衝撃的な消え方は結構大々的なニュースになったらしく、その所為もあってか警察も捜査本部を設置して警察官をかなりの人数で投入したらしい。

 然しながらそれから2年間、一切の手掛かりも目撃情報も無し。

 ―――当たり前だ。どこの世界に異世界に『神隠し』にあったなんて考える警察組織がある。少なくとも2箇所見たけどそんな奇特な人は居無かった。

 なので日本の西にある『某ならず者国家』や、外国の犯罪組織による犯行の可能性も有りと言う事で、ICPOにも捜査協力を求めたりし始めた矢先に入った情報が『奇妙な格好をした女の子が歩いていた』なんて箸にも棒にもならない情報だった。

 勿論その情報は捜査本部に届けられたのだが、有力な手掛かり情報とは思われずにいた為に捜査員の下には届けられ無かった。

 それから直ぐに私の両親や稽古に来ていた警察関係者から通報が警察に届いたが、担当刑事が来た時には父のお弟子さんのお父さんであり祖父の弟子でもあった方が経営している救急指定病院へ搬送されていた。

 これは警察としては後手後手に回っているようなもの。警察上層部としては、犯人逮捕により何とかして名誉を挽回したいところだろう。

 由って根掘り葉掘りの事情聴取となる訳だが。

 然しこれも当然の事ながら、正直になんて言える訳が無い。

「私、別世界で世界を救う為に戦ったり、人類を守る為に巨大兵器で宇宙を飛んでました♪」

 なんて答えた日には最悪、隔離病棟に回されるのではなかろうか。

 例えそこまで行かなくとも、『可哀想な人』を見る目で見られる事は間違い無い。

 唯でさえ、病院内の他の患者さんの間では有る事無い事噂話が無作為に広がり、周囲からそんな目で見られいるのだ。

 ある日なんて、自動販売機でジュースを買おう―――お金は母さんがくれた―――と思ったら、見知らぬ小母さんに「大変だったねぇ」と労われてしまった。

 一体全体どんな噂が蔓延しているのか知りたい所ではあったが、精神衛生上知らない方が良い事もあるという位は私だって知っている。

 だから、これ以上は心身上負担を強いる噂は、正直勘弁して欲しかった。

 だから刑事さんには申し訳無かったけれど、こう言うしかない。

「……覚えてません」

 あぁっ、なんて何処かの悪徳政治家っぽい台詞を言っているのだろうか、私は!




 但し、この事情聴取にも反省ばかりで無く、得るものがあった。

 一つ目は先程も述べたが、私がこの世界から喪失したのは2年前(、、、)と言う事。

 これについては、いくつかの可能性が考えられる。

 1ー1、この世界と私が居た世界とでは、どちらか若しくは双方共に時間の流れが違っている。

 1-2、転移(おちた)時に、空間と同様に時間も移動している。

 1-3、この世界の情報が書き換わっている。

 1-4、この世界は似て異なる世界

 1-5、そもそも夢だった。

 これは大まかに分けてこの5つだろう。

 二つ目は、この世界の歴史が私の知識と違う事。

 2-1、この世界の情報が書き換わっている。

 2-2、この世界は似て異なる世界。

 2-3、私の記憶が書き換えられている。

 こっちも大まかに分けてこの3つ。

 これを纏めると

 1.この世界と私が居た世界とでは、どちらか若しくは双方共に時間の流れが違っている。

 2.転移(おちた)時に、空間と同様に時間も移動している。

 3.この世界の情報が書き換わっている。

 4.この世界は似て異なる世界

 5.私の記憶が書き換えられている又はそもそも夢だった。

 の5つに集約される。

 先ず1と2については、検証の仕様が無い。そもそも、どちらも可能性が大きい。

 次に3と4については、似通っている。義父が言っていた世界線理論では『人は認識していない事で簡単に世界線を移動し、その結果歴史は書き換えられる』というものだった。今、と言うものは完全に主観に依存する。逆に過去と未来は、完全に主観には依存しない。由って人は過去の改変に対して認識する事が出来ない。だから知りえた過去が唯一なものとは誰も証明できないのだからとも言っていた。

 だから先程の2も否定出来ないのである。

 そして5については、私の精神上の問題だ。比較対象さえあれば確認出来るのだけど・・・。

 



 さて次の問題。

 少なくとも私はこの世界で生きていかねば為らないし、生きて行きたいと思う。

 だからこの世界で私が2年間行方不明であった事実も、この世界の歴史が自分の知っている世界と違っていても、それを踏まえて生きて行く。

 そもそも『竜の巫女』やら『星間の戦乙女』なんて呼ばれていたあの頃と比べたら、命の危険が無いだけ楽と言えば楽だ。

 第一、多少歴史が違っていても家族の周囲には関係無さそうだし。

 問題は、私が父と母、そして弟と妹を本当の意味で家族(、、、)として接する事が出来るかだ。

 ここでは2年間だったけれど、私にとっては7年間。それもその7年は、墜ちる(おちる)前の14年間の半分だったけれど、その濃さは同じくらいだった。

 その間に、恋もした。大事な人や仲間とも死に別れた。そして何より、私は自らの意思を以ってこの手で色々な命を奪った(、、、、、)

 そんな私が平和で穏やかな生活を、家族と営む事が本当に自分で許せるのか。

 こればかりは、やってみるしかない。出来るかも知れないし出来ないかも知れない。

 ただ、出来無いと気付いたときにはあの人達を傷つける前に

 ―――去るしかない

 そう覚悟を決める必要があった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 それから2週間程で、私は退院した。

 そもそもこの世界の現在の医療技術では、私の身体的な異常を見つける事は出来ないようだし、記憶喪失についても精神走査系の科学技術は無いようだ。

 そして私の実家は警察関係者が頻繁に出入りしている事もあるし、病院の院長が父や亡くなった祖父の知人だ。

 経過処置や周辺警護について問題無いとの事との運びと為ったのである。

加筆修正を行いました。読み易く思えて頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ