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第二章 目的

 謁見を申し出てたのは一か八かだ。拒否されることを覚悟していただけに、許されたのはラッキーだったとしか言い様がなく、待たされた甲斐があったというものだ。


「私は予言者のシズク。彼は用心棒として雇ったサマエルと申します」


お目通り叶い、早速、自己紹介をした。

ザバス国王は、二人を交互に見定めては、眉をひそめて見せた。


「ふむ。して、余に会いたかった理由を聞かせてもらおうか」


予言者と自称しながらも、なんと言おうか、誰もがイメージするような神秘的だとか妖しげな雰囲気はない。政治的な悩みの相談でもと思っていたのだが、如何せん若すぎる気がして謁見を後悔していた。

そんなシズクがターバンを外すと、長い髪がストンと重力に従い落下した。

健康的な可愛さを持ち合わせてはいるが、それがザバス国王の後悔を重くするのだった。


「はい。実は、これから陛下を狙う者が現れます」


「………ほう。それは余が殺されると言いたいのか?」


「そういうことになります」


「そうか。気をつけよう。ではご苦労だった」


「え?い、いや、あの………」


話は終わってないのだが、ザバス国王は玉座から立ち上がりどこかへ行こうとした。

これには思わずサマエルもニヤリとせざるを得なかった。

分かっているのだ。予言者と言いながらも、あまりにその雰囲気の無さ故に相手にされていないと。

まして、国としての歴史は皆無に近く、王の座を狙う者など居て当然。どうせなら、もっと具体的に言うべきなのだ。

無論、そのアドバイスをしようと思えば、シズクに説くことは出来た。が、用心棒として雇われているのだから、余計な仕事はする気はない。


「まだ何かあるのか?」


「あ………命の危険なんですよ?これは嘘でもなんでもなくてですね………」


「シズクと申したな?よいか、かつて世界はバジリア帝国によって統治されていた。それが十年前、どういうわけか急激に国としての機能を果たさなくなり、世界は乱れかけた。そんな中、世界を我が物にしようとする者、平和に治めようとする者、そういう者達がたくさんいた。そして、志を共にする者達が集まり、やがて国を造った。今、世界にはいくつかの国がある。広大な世界の陸地を求め、それぞれが動いている。あわよくば、他国を潰してしまおうとな。すなわち、命を狙われていることなど、自覚しておる。今日であろうと明日であろうとな。予言者が謁見などと言うから会ってみれば………立ち去るがよい。余は忙しいのだ」


ぐうの音も出ないとはこのことだ。

歴史浅い国だろうと、国王は国王。世界の状況を把握している。

流石のシズクも、打つ手を失い一気に老けたように見える。


「お待ち下さい」


と、サマエルがザバス国王を呼び止めた。


「しつこいぞ」


機嫌を損ねたらしく、顔の神経が強張って見えた。

シズクも、何を言い出すのかとドキドキしてきた。

十年………ソニヤが自分達の前から消えてからずっとサマエルといたが、未だに何を考えてるか分からない男だ。このタイミングで下手なことを言ったら、ただでは済まない。そう思った矢先、


「陛下、陛下は狙われていることに慣れておられるようですが、それはあくまで“人”による魔の手だけに限られるのではありませんか?」


驚いた。サマエルが敬語を話している光景が、シズクには天地がひっくり返るほどに奇跡だ。


「どういう意味だ?余を狙っているのが人間ではないと申すのか?」


「その可能性があると申しているに過ぎません」


見るからに腕の立ちそうなサマエルを、ザバス国王はまじまじと見つめる。

決して人相が良いとは言えないが、どこか有無を言わさない気配がある。

それは、サマエルが幾多の修羅場を経験して来た証。デッドラインを知っているということだ。

ザバス国王はサマエルに、


「………面白い話だ。人間以外の者に狙われているとはな。お前サマエルとか申したな。随分大きい剣を携えているが、腕に自信はあるのか?」


そう尋ねた。あると言うのなら、その強さを見てみたい。

 ないと言うのなら、この場から立ち去ってもらうだけ。


「お試しになりますか?」


「フフフ。そう言うと思っていた。よかろう。我が兵士の指揮官と手合わせするがよい」


それは条件を提示されたと言うこと。シズクは確かめるように、


「勝てば私達を一晩ここへ置いて頂けますか!?」


身を乗り出した。


「余を狙う人成らざる者とやらが目的か?」


「話が早くて助かります!」


「無論、サマエルが勝てば一晩だけ城においてやろう」


「やったぁ!!」


と、思わず手を叩いてしまった。


「ただし、うちの指揮官は強いなんてものではないぞ」


自信があるのか、ザバス国王は笑みを溢し、


「誰か!指揮官を呼べ!」


声高に叫ぶのであった。


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