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第十七章 アイツ

「嘘よ・・・そんなはずないわ・・・・・・」


シズクはレグザの言葉に耳を疑った。


「うそ・・・?わたしはうそは言わない。わたしは神の創りし魔法の形」


だが、レグザははっきりと肯定し直した。

それでも、すんなり聴き入れる訳にはいかない理由がシズクにもある。

 自分の出生も分からぬまま生きて来て、ようやく分かった時には常に命を狙われる身だった。しかも、分かったというその中身は、シズク自身が人間ではないという事実。・・・・・・魔法であるということ。

 正確には媒介。シズクにしてみれば、媒介でも魔法でも”人”でないことには変わりはない。それを知ったのは十年前。今更、気に病むことでもない。しかし、受け入れられないのは、レグザもまた魔法という存在であるということだ。

それは、シズクがやっとの思いで受け入れた運命を覆してしまう。


「レグザ・・・だったわね。あなたを創った神って、ひょっとして邪神ジーナス?」


「・・・名前は知らない」


「知らないって・・・」


「生まれた時から魔法であることを知っていた。そして今夜、こうして神の使いが現れた。それが全て。・・・・・・わたしは、自分が何者であるかを認識して生きて来た。十年前より」


「・・・・・・十年前?」


十年前。あの日を境にレグザは生まれた。おそらく、あの戦いがきっかけで変わったのは世界だけではない。考えてもみなかったが、もっと深いところでも歯車が廻り始めていたのだ。

 どんな運命でも立ち向かう勇気は、この十年で養っていたつもりだったが、そんなものはどうやら役には立ちそうにもない。なぜなら、世界にただひとつであるはずのの魔法が、目の前に”もうひとつ”いるのだから。


「不思議・・・・・・シズク、あなたからはわたしと同じ感覚を感じる」


「・・・・・・でしょうね」


それ以上は続けなかった。

 こうして会話をしてみると、彼女から自分とは決定的に違うものがあると気づく。

 生気が薄い。そう思うと、レグザの存在が人ではないと考えることに納得がいく。つまりそれは、レグザの言ってることが嘘ではないことの証明になってしまうのだが。


「さて、つつましやかな女子会もその辺にして頂けませんか?」


と、男の声がして、一人の黒い鎧の騎士が前に出て来た。


「既に予定の時間を過ぎています。レグザ様、そのような小娘に関わってる暇はありません。さ、行きましょう」


落着き払い、丁寧に男は言った。

 幼いとは言え、敬意を払うのはレグザが男達にとって必ず連れて帰らなければならない要人だからだろう。何よりも驚いたのは、黒い鎧の騎士が言葉を発するとは思ってなかったからだ。


「・・・・・・シズク、また会いましょう」


「ダメ。行かせないわ」


「どうして?」


「こいつらは神の使いなんかじゃない!悪魔の使いよ!」


レグザが本当にゴッドインメモリーズかは今は分からない。だが、ジーナスがレグザを呼んでいるのなら、みすみす行かせることは出来ない。


「レグザ、私と行きましょう」


そう言って、レグザの手を掴む。・・・が、


「レグザ様に触れるな」


男が剣をシズクに突きつける。


「殺すなら殺しなさい!そうしない限りあなた達にレグザは渡さない!」


その覚悟はある。十年経ってジーナスが動き出し、その核心とも言える動きを捉えたのだ。退くわけにはいかなかった。

 シズクはキッと睨み、黒い仮面の奥を見据える。それを援護するかのように、


「そういうことだ。お前らにその子は渡さない」


羽竜はりゅうが現れた。

 傍らには、サマエルとノアもいる。


羽竜はりゅう!サマエル!遅かったじゃない!」


安堵から、思わず笑みが漏れた。


「コラ!オイラを忘れてるぞ!」


と、ノアが抗議する。


「あんたはたいして役に立たないでしょ」


「なんだとっ!この性悪女ッ!」


悪態をつかれるも、シズクはフンッと鼻を鳴らして流した。

 そして、


「さあ、形勢逆転ね。人数は遥かに少ないけど、この二人は尋常じゃない強さなんだから。覚悟しなさい!」


ピシッと人差し指で決める。

 羽竜はりゅうとサマエルが剣を抜く。


「・・・・・・フ、フフ。フハハハハハハハハッ!」


ところが男は突然、高笑いを始めた。


「な、何がおかしいの!?」


「いや、失敬。でも、笑わずにはいられない。・・・・・・確かに、そこの二人は彼らを簡単に倒してしまうだろう。私を除いて」


そう男が言った時、シズクはその声に聞き覚えがあることに気付く。


「どっかで聞いたことがある声ね・・・・・・」


「フン。まさかこんなところで再会するとはな」


サマエルにはもう誰だか分かったようだった。


「久しいな。こうして出会うこと、待ち望んでいた」


男は仮面に手を当て、乱暴に脱ぎ捨てた。


「やっぱり貴様か」


サマエルが言う通り、シズクにも見覚えがある顔だった。


「アイツ・・・・・・」


ノアにも。


「サマエル。今度は訓練場の時のようにはいかんぞ」


「・・・・・・フン、面白い。貴様がジーナスの手先とは・・・・・・あの夜の襲撃は仕組まれていたということか。・・・・・・シグナス!」


そこには、ザバス国の指揮官シグナスがいた。








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