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第十二章 町 ~後編~

「なんでオイラが、性悪女と情報収集なんだよ」


「それはこっちのセリフよ!あんたみたいなすっとこどっこい、本当はゴメンなんだからねっ!」


なんとも混じりあわないノアとシズクは、なんとも仕方無くレメディに繋がる情報の収集を“命じ”られていた。

とは言え、通行人を取っ捕まえて、「レメディについて教えて!」とか聞いたところで、そう都合よくはいかないだろう。レメディを知ってる者がいるかさえ怪しいのだから。

しかし、知ってる可能性が高い人物はいる。


「あったわ。ここなら……」


シズクが立ち止まり見上げた建物は………


「教会?こんなとこで、何を探るんだ?」


ノアは首を傾げて、シズクの真意を勘繰るが分かるわけがない。


「あんた、昼間の話聞いてなかったの?」


「イチイチうるさい女だな。聞いてもスケールがでかすぎて頭に入んないんだよ」


「………ったく。レメディのことはバイブルにしか書かれてなかったのよ。なら、バイブルの複製品を持ってるだろう人物に直接聞けば早いでしょ?」


ああ、なるほど。それなら話が分かるってことだ。

サマエルがシズクと行動を共にしなかったのは、彼女のこういう直感的な感覚を邪魔したくなかったのかもしれない。

自分と対称的なシズクには、好きにやらせた方が上手くいくことを知ってるのだ。

それなら、シズクに任せるにこしたことはない。


「それもそうだな。よし、お前に任せた!」


ノアが言うと、


「当然よ!着いて来なさい!」


シズクは満足気に答えて、教会の扉を開き中へと入った。

キャンドルがほのかに建物内を照らし、シズクにはそれが薄気味悪く感じる。

少し行ったところで、


「こんな夜更けにどんな御用かな?」


年老いた神父が声をかけてきた。


「あ、えっとぉ……すいません、夜分に」


咄嗟のことで、シズクは慌てて取り繕った。


「構いません。神はいつでも我が子を待っておられるのですから」


「はは……我が子……ですか」


「ええ。私達は皆、神の子なのです」


邪神の子ってのは如何なものかと思ったが、この手の人種には口では敵わない。頷いて愛想らってるのが一番。


「あのですね………」


「どうぞ。もし懺悔ならば、あちらの小部屋へ」


「い、いえ………懺悔ではないです」


と、何やらサマエルの思惑はハズレたらしく、シズクはしどろもどろで煮え切らない。それに我慢しきれず、


「レメディについて聞きたいんだ。知ってんだろ?あんた神父だたもんな」


ノアが口を開いた。

神父は驚いて見せたが、一瞬の間を置いて別の男の声がした。


「ほう。レメディを探してるのか」


気付かなかったが、前の席の方に誰か座っていた。

男と子供。二人はゆっくり立ち上がり、静かに振り向いた。


「レメディを知ってるということは、アイツらのうち誰かの知り合いに違いなさそうだな」


黒い服に身を包んだ男。そのすぐ後ろを、男には不釣り合いなほど愛らしい女の子。

男はノアとシズクの方へ近づいて来た。

悪寒。ノアの背中に汗が流れた。恐らくはシズクにも。証拠に、シズクの表情が強張っている。

羽竜やサマエルとは違う雰囲気。優しそうな面持ちでありながら威圧的な。後退りさえ体が言うことを聞かないのは、逃げてどうにかなる相手ではないということ。危険を通り越し、今正にデッドラインに立っているのだ。


「………こいつは驚いた。お前………シズクだな?」


「だ、誰………あんた?なんで私を知ってるの?」


シズクが振り絞った声を出すと、


「忘れたか?十年も前、お前からゴッドインメモリーズを奪おうとした男を」


男はそう言って、一度目を閉じて勢いよく見開くと、漆黒の鎧に、真紅の髪。頭の脇からは角が生え、瞳もまた真っ赤な何かに変身した。


「あ………あんたは!!」


ようやく思い出した。その悪魔のような………いや、悪魔そのものの姿に。


「おい、誰だよ、アイツ!」


ノアがシズクの肩を揺さぶった。

恐怖の塊のような男を前に、冷静でいられない。神父も腰を抜かす始末だ。


「シズク!」


「悪魔よ………」


「え?」


シズクは唾を呑み、


「悪魔の神………魔帝ヴァルゼ・アーク………確かそんな名前だったわ」


「悪魔………だって?」


ノアは息を呑んだ。


「今宵の月に俺は感謝しよう。ようやく噛み合わせてくれたのだからな。………運命の歯車を」


夜が闇に溶けてゆく。恐怖と共に。







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