2-(3) 生きる罪
「──あれが例の村か」
ジーク達はアウルベルツから乗合馬車に乗り、郊外に位置するとある小さな村へとやって
来ていた。
停留所に降り立ってから次の行き先へと駆けてゆく馬車を視界の隅で見送りつつ、ダンは
顎を擦りながら静かに眉根を寄せている。
「ブルート。魔獣の気配はする?」
「……ここから視る限りは確認できぬな。もっと奥へ分け入れば違うのだろうが」
「そりゃそうだろうよ。だけどこの面子のままで実は魔獣でした、なんてオチは勘弁して欲
しいけど」
念の為にイセルナがブルートに確認を取っていた。
そのやり取りを聞きながら、ジークがごちる。他の十数人の団員達も「全くだ」と言わん
ばかりに頷いている。
イセルナがバラクから受け取った依頼書の内容はこうだ。
曰く『村の害獣を始末して欲しい』と。
依頼書の区分は便利屋系の類にカテゴライズされていた。ギルドを通してあるのだから、
仮にこれが魔獣を指すのであればそれ相応の記載がある筈なのである。
しかし……何故か依頼書に載せられていた情報は、少なかった。
だからこそ、イセルナは念の為にブルートに魔獣の気配を調べさせていた。
もし仮に魔獣だと──虚偽情報だとしたらむしろこちらが被害者だ。そうなればホームか
ら応援を呼んで対処はするが、その後ギルドを通じて然るべき抗議を行おう──。
バラクから受け取ってしまった手前、それが今更突き返すわけにもいかない中で皆が話し
合った結果だった。
「ま、とりあえず依頼主に話を聞いてみねぇ事には始まらねぇさ。行くぜ、お前ら」
これだから便利屋依頼は嫌いなんだ──。
ジークは内心そうため息が出る思いだったが、ダンが言って皆を引率し始めたために仕方
なく自身も腰の刀を揺らしてついてゆく。
依頼主である村は、木々に囲まれた小さな集落だった。
各地に都市が形成されているとはいえ、その発展の恩恵を受けている者は現実的には限ら
れている。だからこそ、より若者は豊かさを求めて街へと出てゆくのだろう。
(ま、俺も他人の事言えた立場じゃねぇけど……)
皆と共に村の入口に差し掛かり、周囲の緑豊かな風景を見遣っていたジークはぼんやりと
そんな事を思いながらも密かに己を哂ってみせていた。
自分だって田舎の集落に生まれ、そして“逃げ出してきた”一人なのだから。
「……レギオンの方ですね? ギルドから連絡は受けていました」
村の中に一歩踏み入ると、まるで待ち構えていたようにあちこちから村人らしき人々が姿
を見せた。神妙な、いや神経質になっていると表現するのが正しいように思える面持ち。
どうにも──怪しい。
その村長らしき彼ら一団の様子を見て、ジークは半ば本能的にそう思った。
それは他の仲間達も同じだったようで、ジークがちらと肩越しに目を遣ってみると、彼ら
もまた同じ思いだと言わんばかりにこっそりと頷き返してくる。
「はい。お迎えご苦労様です」
「で? あんたらが手を焼いているっていう害獣とやらは何なんだ? 何処にいるんだ?」
「……先日、村の者で何とか捕獲には成功しています。ですがこのままでは、いずれ私ども
の手には負えなくなるでしょう。ですので今回依頼を……。どうそ、こちらです」
それでも団長・副団長としてイセルナとダンはあくまでビジネスライクの姿勢を貫こうと
していた。
すると痩せぎすな初老の村長は、そうざっと現状を説明してくれた。
件の害獣に警戒しているのだろうか。彼に付き従う他の村人らは鍬や量産剣などの得物を
手にしている。
イセルナら面々はその不穏さに気付かぬ振りを通しつつも、彼らの案内についてゆく。
「……こちらです」
案内された先は、村の敷地の外れにある大きめな納屋の一つだった。
ただ奇妙だったのはそこに掛けられた施錠があまりにも厳重過ぎると点。
思わず、ジークら団員達の表情が怪訝で硬くなる。
しかしもう遅いと言わんばかりに、次の瞬間には村長の合図で村人達が一斉にその何重に
も渡って掛けられていた鍵を開け始める。
「さぁ。どうぞ」
ギィィと、錆びかけの扉が軋んで開いた。
明かり取りの窓もないらしく、中は昼間にも拘わらず、暗く埃っぽい。
だが……半ば押し込められるように促され足を踏み入れたジーク達が見たものは、そんな
不快感を圧倒的に上回るものだったのである。
「ひっ!?」
「な、何だお前ら……!?」
「もしかして、お前らレギオンか……?」
「そんな……。嫌だ。俺、死にたくねぇよぉ!」
そこに居たのは……紛れもなくヒト。徹底的に緊縛された若者が四人だった。
そして何よりも、彼らの両の眼が突然の来訪者によって“血のような赤”に染まっている
のがはっきりと見て取れる。
「────ッ!」
「チッ……」
ジークの顔が猛烈な苦悶で引き攣った。ほぼ同時にダンも憤りを隠さずに舌打ちをする。
「おい、どういう事だよ。こいつらは……魔人じゃねぇか」
魔獣化は、何も動植物だけに留まらない。
いやむしろヒトという存在自体もまた、そのカテゴリの中の一つでしかない。
そんな魔獣化現象の中のレアケース、亜種こそが魔人なのである。
外見はヒトと大して変わらない。
いや、ヒトの姿を留めたまま中てられたのが魔人だとも言える。
だが瘴気に中てられたという魔獣化の洗礼を受けた身であるという事実が消え去る訳では
なく、その身は魔獣と同じく不死性の高い“怪物”的要素を備えている。
そして、これも魔獣と同じく、彼らは感情が昂ぶるとその眼が血のような赤に染まるとい
う特徴も持っている。
「ええ……そうです。数日前、この者達は村の郊外にある忌避地に侵入したのです。瘴気も
濃く魔獣も棲む場所だというのに……」
「で、でも! あそこはまだ掘れる鉱石がいっぱいあるんだ」
「採って来て街で売ればここでの暮らしも楽に」
「黙れッ!!」
村長らは、振り返ったジーク達の退路を塞ぐように納屋の入口を包囲していた。
悶絶するかのような怒声。
痩せぎすの双眸がギリギリと射殺すように、納屋の奥の──魔人と化してしまった村の若
者らに向けられる。
「……なのにこの者どもは立ち入った。そして瘴気に中てられた挙句、あろう事か死にもせ
ずに魔人となって帰って来よった」
「お前ら冒険者だって知らない訳はないだろう?」
「魔人も、魔獣も、どれだけ世の中の連中に忌み嫌われているのか、分かってるだろう?」
「だからって……!」
ギリッと歯を食い縛るジークの肩をそっと叩き、イセルナは小さく彼に首を横に振った。
確かに魔獣は人々にとって忌むべき“害獣”である。
そして魔人もまた、その魔獣化の亜種存在として人々の忌避の──ひいては迫害の対象に
なっているのが現実だ。
「このままこやつらを村に置いておく訳にはいかん。かといって解き放っても周りにこの村
の生まれだと知られれば、儂らの生活も脅かされてしまう」
「……。だから、俺らにこいつらを“始末しろ”って依頼を出すのか」
もうお互いに腹の中を隠す事はしなかった。
元より検めればすぐに分かることだった。だからこそ彼らは武装し、半ばこの場にジーク
達を軟禁してでも目的を果たそうとしているのだろう。
「申し訳ないですが、人殺しを請け負った覚えはありませんよ」
あくまで冷静に。
イセルナがそう皆を代表して言ったが、それは結果的に村長を激昂させることとなった。
「うるさい! つべこべ言わず早くその“化け物”どもを殺すんだ! 人殺しだと? 何を
言っとるか。こいつらは魔人だぞ、もうヒトなどではないわ! そもそも魔獣殺しはお前達
“荒くれ者”のお家芸だろうが! さぁ殺せ! 早く殺せ……ッ!!」
痩せぎすの身体から、忌避からくる狂気が迸っていた。
殺せ、殺せ、殺せ!
他の村人達も迫るようにそうイセルナ達に連呼する。
「……偏見とは、消えぬものだな」
「今更言ってもしゃーねぇだろ。所詮こんなもんだ」
ブルートとダンのそれぞれの嘆息。
それはイセルナ以下、団員達も同じ思いだった。あくまで自分達は──。
「…………」
その時だった。
ふとジークが戸惑ったままの面々の中から一歩抜け出し、腰の刀に手を掛けたのである。
ザラリと金属音が室内に響く。まさか本当に? 魔人と化してしまった若者達はその刃が
自分達の姿が映すのをガクガクと震えながら釘付けになっている。
「ほら見ろ! その坊主は儂らの言う通」
「黙れよ。クソジジイ」
だがその切っ先は若者達には向かなかった。
刀が抜かれたその刹那、ジークは身を返しながらその切っ先を村長の鼻先寸前へとピタリ
と突き付けていた。
言いかけて、中断される村長の声。
それまでじっと俯き加減に表情を前髪に隠していたジークが、キッと顔を上げる。
「……ふざけんな。俺達は単なる快楽殺人者じゃねえよ」
その表情は静かな怒りに満ちていた。
狂気よりも、ずっとずっと深い怒り。それは痛みを知るが故の憤りだ。
イセルナもダンも、他の団員達も始めは驚きこそはしたが、誰一人その突出を止めようと
はしなかった。
「俺達はな……人を守る為に魔獣を間引いてるんだよ。殺したいから殺すんじゃない。そう
しなきゃ守れないものがあるから、俺達は武器を取っているんだ。……人を守る為に命張っ
てる俺達が、人を殺す訳ねぇだろうが」
それは皆がジークの言葉に賛同しているという証。
「……ふ、ふん。荒くれ者が偉そうに何をわっ!?」
だがそれでも村長は言い返そうとした。
しかしその言葉が完成するよりも早く、今度はジークの刀が彼の喉元へと突き付け直され
る格好となる。
緊迫で動けない村長。迂闊に手を出せずにいる村人達。
ジークは、そんな中で再び淡々と思いを紡ぎ出す。
「あぁ……。確かに俺達は荒くれ者だよ。てめぇら一般市民さまに比べれば収入も安定しな
い、勝手気ままな浮き草稼業さ。……でもな、こんな俺達でも冒険者としての誇りはある。
自分達の力で以って魔獣を間引いて、皆の生命を守ってるんだ。てめぇらは俺達や守備隊の
皆の頑張りで今の暮らしを送ってるんだよ。なのに、てめぇらみたいな安全地帯でホクホク
してるだけの、奇麗事や偏見で凝り固まった野郎なんかに……俺達の仕事をとやかく言う資
格なんてねぇんだよ!!」
「うぎゃぉっ!?」
叫んで、刃の代わりに鳩尾に飛んで来たのは、手首を返した素早い鞘打ちだった。
その衝撃に為す術も無く、村長は短い悲鳴を上げて地面を派手に転がっていった。村人達
が思わず飛び退き、ジーク達の包囲網が解けてゆく。
「……まぁそういう事ですから。ごめんなさいね?」
「分かるだろ? 俺達は魔獣は殺しても、無罪の魔人までは殺せねぇ」
そしてジーク達はゆっくりと歩を外へと進めた。
ダメージでふらついている村長を囲むように、村人らはその僅か十数名──だが自分達よ
りも圧倒的に強い十数名を只々怯えと共に見上げるしかない。
「納屋の中の兄ちゃん達は、ここで解放する。……文句は言わせねぇぜ」
そんな人々の為に魔獣を狩り間引く一団の中央で、ジークはヒュンと彼らに刀の切っ先を
向けると、そう宣言する。
それは、僕たち兄弟がまだ幼かった──今ほどの力すらなかった頃の出来事です。
あの日……サンフェルノを魔獣が襲ったんです。
後々から聞いた話では、別の村が無理に森に入っていた所為で魔獣が僕らの村へと追い立
てられたのが原因だというものでしたが、今となってはその真偽もはっきりしません。
初めは村の自警団の皆が食い止めようとしました。
僕たち子供や女性を村の奥に避難させて、最寄の守備隊にも連絡して、彼らが到着するま
で何とか持ちこたえよう。そんな作戦だったんです。
でも、そんな大人達の算段を狂わせたのは……他ならぬ僕たちだったんです。
ご存知の通り、瘴気は生を蝕む毒素です。それは精霊達も例外じゃない。いいえ──マナ
に最も近い存在と言われている彼らの方がむしろ、ヒトよりもずっと瘴気に弱いんです。
だから、村の周りで苦しむ精霊達の声をあの日の僕は放っておけなかった。
兄さんが止めようとしても、僕は自分達の置かれている状況も顧みずに皆の下に向かおう
としていました。
そして、僕たちは出くわしてしまったんです。
村の大人達が侵入してくる魔獣と押し合いになっているその最前線に。
結果的に、僕たち兄弟が来てしまった事でその均衡は崩れました。
それだけじゃない。……その内の一人、マーロウおじさんが魔獣に押し倒され、あろう事
か瘴気に中てられてしまったんです。
おじさんは、その場で死にませんでした。魔獣化に……陥ったんです。
だけど、他の自警団の皆がそれを見て逃げ出しても、おじさんは最後の最後まで僕たち村
の皆の身を案じてくれていました。
魔獣になりかけて狂いそうな自分を抑えて、残っていた魔獣をその手で倒して。
そして怯えて動けなかった僕たちに言ったんです。
『──俺を殺せ』と。
このままでは自分は完全に魔獣になってしまって村の皆を、僕たちを手に掛けてしまう。
だからまだヒトとしての意識が残っている今の内に、息の根を止めてくれ……と。
僕たちは拒みました。殺せるわけなんてなかった。
でもそうしている内に、おじさんは完全に魔獣側に“持っていかれて”しまって。
……でも次の瞬間、兄さんは落とされていた剣で、おじさんの首を斬り裂いていました。
今でも、僕は忘れられません。
どす黒い血に塗れて、剣を片手にガクガク震えてあの兄さんの姿も。
首をざっくりと斬り裂かれたのに、ホッと安心したように僕たちに微笑んで逝っていった
おじさんのあの表情も。
結局、それから暫く経った後で、守備隊と近隣の冒険者さん達が村に到着した事で事態は
何とか収拾しました。
でも……僕たちは色んなものを、失っていました。
マーロウおじさんは勿論の事、時間を稼ぎをしていた村の自警団の皆も少なからず犠牲に
なっていて。
……。その中で一緒に戦っていた父さんも、村に戻ってくる事はありませんでした。
悔しかった。僕たちは、何もできずに……いえ、むしろ自分達の所為でよく知った人すら
も結果的に死に追いやってしまった。
力が、欲しかったんだと思います。
兄さんは、村のご隠居さんで元冒険者の竜族のクラウスさんに剣を。
僕は、その娘さんで村の教練場の先生でもあるリュカ先生に魔導を。
もう二度と、瘴気や魔獣の──自分の力不足の所為で誰かを悲しませたくも、失いたくも
なかったから。
そして十五になって、成人の儀を済ませた兄さんは逃げ出すように村を出て行きました。
無理もないですよね。いくらマーロウさんのご家族が「仕方なかったのよ。最期の頼みを
聞いてくれてありがとう」と赦してくれていても、自分の手でおじさんを殺したという事実
は変わらないんですから……。
きっと兄さんの剣が“目の前の敵以外”も斬っているように見えるのは、あの日の悔しさ
を必死に振り払おうとしているからなんじゃないでしょうか?
……ええ。兄さんも分かっているとは思いますよ。そんな事をしてもあの日は帰ってくる
わけじゃない。でも、何もせずにはいられないんだと思います。
ですから……僕からもお願いします。
一見無鉄砲で、言動がぶっきらぼうでも、今まで通り皆さんには兄さんを見守って導いて
あげて欲しいんです。……そもそもの原因を作った僕が言える立場じゃないですけど。
きっと兄さんは、僕よりもずっと苦しんできた筈なんですから──。
「あ。おかえり、兄さん」
「……おぅ。ただいま」
ジーク達が宿舎に帰ってきたのは、その日の空が暮れなずむ頃だった。
部屋のドアを開けて近寄ってきた足音に気付き、アルスは真新しい机に着いて耽っていた
読書の手を一旦止めて振り返る。
「流石にもうそっちは帰って来てたか」
「うん。お昼過ぎにね。大通りのお店を回った後、皆と外でお茶をしてから」
「そっか。しかし随分と買い込んだな……」
「あ、はは……。品揃えが良かったからつい、ね。兄さん達はやっぱり依頼に?」
「あぁ。ま、そんな所だ」
早速半分近くが埋まった本棚を見遣ってジークが言う。
そんな反応に思わず苦笑する弟に生返事をしながら、ジークは三刀と三小刀の得物六本を
部屋の一角の掛台にそっと置くと、どっかりとベッドの縁に腰掛けていた。
(……言えるわけねぇよなぁ)
何時ものぶっきらぼうな顔に浮かぶ微かな苦笑。
だがそれは単なる疲労ではない。
害獣退治と思いきや、実は魔人になった村人の殺害だったというトンデモ依頼。
故意に人に災いを成している魔人ならともかくとしても、そんな依頼を受ける訳にはいか
なかった。
結局今回の依頼は撥ね付けた。虚偽情報だったとギルドにも通報を済ませた。魔人と化し
てしまった当人達も「人目に触れると迫害されるかもしれない。でも生きろ」と解放した。
後の事はギルドや当事者連中が何とかするだろう。
「……疲れた。ちょっと横になるわ。飯時になったら起こしてくれ」
「うん。分かった」
ふぅと大きく息をついて、ジークは上着をベッドの柵に引っ掛けごろんと横になる。
アルスはそんな兄を微笑んで暫し見遣ってから、再び本に目を落とした。
(兄さん、無理しちゃって……)
四年近く会わなかったとはいえ、僕たちは兄弟だ。何かあったらしい事くらいは分かる。
でも兄さんはきっと話さないだろう。自分も、だったら無理に訊くべきでもない。
紙面に広がる魔導の構造式。
世の中も、このようにもっと分かり易く体系化されればいいのかなとアルスは思った。
だけど、同時に仮にそうなってしまうときっと面白くなくなるのだろうなとも思った。
例えば──今こうして自分を気遣って、じっと堪えてくれている兄の優しさも。
徹底的にロジカルな世界とはいうのは統治しやすいのかもしれないけれど、人にココロが
なくなってしまえば、きっとその世の中は冷たく哀しいものになる。
「……ぐぅ」
兄の寝息が聞こえ始めた。
アルスは肩越しに一瞥し、フッと微笑みを漏らす。エトナはそうした彼の様子を見てちょ
こんと小首を傾げながら浮かんでいる。
今だからこそそう思うのかもしれない。
だけど……ココロがあるから、僕らはきっと弱くも強くもなれるんだ。
「おやすみ。兄さん」
暮れなずみの陽と机上のランプに照らされながら、弟はそっと兄の寝顔に呟いていた。