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広イセカイと狭イテノヒラ  作者: 北田 龍一
まだこの作品が小説だったころ
9/43

三章ー1 悪夢

楓「まーた半年かかったわね」

作者「はっはっは。すいませんナイフ向けるのやめて下さい」


血だまりが、広がっていた

中心には、彫刻刀を胸に突き立てて倒れている子供が一人。

死体のはずのそれが、首をあり得ない方向に曲げながらこちらを見る

どうして――



                ***



「っ――!」


そこで、彼の目は覚めた。

この夢を見るのはもう何度目がわからない。未だに払拭しきれずにいる悪夢(げんじつ)

 間違いない。昨日の流血沙汰を見たせいだ。


「オハヨー オハヨー」


 いつも通りのアーサーが、寝起きの挨拶をする。……おそらく意味を理解したうえで言っている。

 だから、無視するのは憚られたが、とてもそんな精神状態ではない。


(いつになれば、僕は許せるのだろうか……)


 盛大にため息をつきながら、彼はゆっくりと、二階の階段を下りた。



                ***



 翌日、例の事件は近くで起こった出来事だったことと、この学校の生徒たち……即ち宗司たちが巻き込まれたのもあってか、噂にはなっていた。

 どうやら日明は姿を見られたらしく、彼一人で解決したのではないかという噂になっているようだ。

 あの後、宗司はすぐ病院へ。幸い傷は本当に掠めただけだったらしく、悲鳴を上げた宗司としては納得いかないのだが、医者によると、


「銃で撃たれたこと自体がショックだったのでは?」


 とのこと。精神の方が衝撃を受けている可能性があると医者は言っていたが、ならば――


「今こうして、部室に行こうなんて思えないよなあ……」


 既に放課後となり、学生たちは自由な行動が許されている。今までならば帰宅部に所属していたので。マッハで家まで帰るか途中寄り道してゲームセンターに行くかだが、昨日の顛末はなんだったのかを聞くために、オカルト研究部の部室に向かっている。

 場所に関しては日明に聞いた。彼が部員だったのは知っていたからだ。幸い日明は強盗騒ぎが起こる前の、昨日のやり取りを覚えていたのですんなり教えてくれた。


 生物実験室前に辿りつき、ゆっくりとその扉を開ける。

 昨日いた面子は全員揃っており、綾花、日明、駿也は、カエデを囲う様に座っている。


「あっ、宗司君もきたー!」


 ニコニコと笑顔で宗司を出迎えるカエデ。

 だが、明らかにその言動は場違いだ。なぜなら、綾花は深刻そうな表情で、駿也はひどく顔色が悪く、日明だけは壁に背を預けて目を閉じでいる。とても能天気でいられる空気ではない。だから、宗司も軽く手を上げるぐらいしかできなかった。


「うんうん。みんな揃ったね! じゃあ、『妖精さん』に代わるねー」


 そして、彼女は近場の椅子にちょこんと座り、目を閉じる。妖精という単語に違和感を覚えたが、それを尋ねる間もなく、彼女は次の言葉を発した。


「……初めまして、と言うにはちょっと遅いわね。こういうときはなんて言えばいいのかしら?」

「ふむ、久しぶりと言うには時間が経っていなさすぎるな。またお会いできてうれしいとでも言うべきなのか?」

「じゃあ、それで。皆様、またお会いできて光栄ですわ」


 身にまとう空気を一変させて、楓は恭しく、それでいてわざとらしく一礼した。


「……っ!」

「オイオイ、大丈夫か?」


 途端に、駿也は口元を抑える。昨日のことを思い出してしまったのだろう。


「ご、ごめん……血を見るのが苦手で……どうも、『彼女』は苦手みたいだ……」

「ふふ、それはごめんなさいね? でも、ああでもしないと私が死ぬかもしれなかったから許して頂戴」


 ……口ではこう言っているものの、全く悪びれている様子がない。それどころか、どこか嬉しそうですらあった。きっとその理由は――『誰ひとりここにいる人物が、昨日のことを忘れてない』ということを、確認出来たからだろう。


「する必要もないかもしれないけど、一応自己紹介しておくわ。私は『木下 楓』俗に言う多重人格者よ。といっても、私と先生が把握してる人格は、私とさっきまで話してたあの子しかないから、二重人格で問題ないと思うわ」


 それは、半ば予想できていたことではあった。あの豹変っぷりは、そうでもないと説明がつかない。


「……先ほどまでのカエデさんが話していた『妖精』とは、あなたのことですか?」

「そうよ。日ごろから色々フォローしてあげてるの。悪い虫がつかないようにとか、勉強とかね」

「『妖精』っていう割には物騒だなオイ」


 思わず宗司が言うと、静かに様子を観察していた日明が口を開く。


「宗司、近代のイメージだと妖精はおとなしいのかもしれないが、本来の伝承にある妖精は物騒なものもある。人をさらったり、目玉をくりぬいたりな」

「あら、それは私も知らなかったわ。フォローにならない解説ありがと、バケモノさん」


 大人びた笑みで、人を化物呼ばわりする楓。日明はそれについては何も言わなかった。自分で納得しているような節もある。


「他に何か質問あるかしら?」

「オカルト研究部として活動をする気はありますか? もう一人のカエデさんには聞きましたが、あなたには聞いてなかったので」


 綾花は全く怯んでいない。見た目通り正義感が強いのか、それで支えられているようにも見える。


「ええ、大いにあるわ。と言うか、私が誘導してこの部に入れたようなものよ?」

「つまり、意思の強さとしては今表に出ている楓の方が上だと?」

「その認識で問題ないわ。あまりこの子は強い意思を持てないようになってるから、何か意思表示し始めてたら私の意思と考えて頂戴」


 日明は「……珍しいな」と呟いて少しだけ感心したような感じである。……一体何が珍しいのかは、全く想像できないが。


「さ、本題に戻りましょう。部長さん。私はあなたの部活動に参加したいわ。よろしくて?」

「理由を聞いても?」

「単純よ。刺激的だから」


 どこか恍惚とした様子で、楓は答える。


「偽物もいくらでもあるでしょうけど、本物の怪異も確かに存在するわ。私はそれと一戦交えてみたいの。私の怪異がどこまで通用するのか試してみたいのよね」


 その怪異とは、今こうして表面に出ている楓のことだろうか? あるいは、別の何かなのだろうか? いかんせん想像するには情報が少な過ぎる。


「そう言えば、あなたたちはどうなの? ああ、宗司君は答えなくていいわよ。下心でしょ? 私のことを忘れなかったから、少しぐらいならイチャイチャしても許してあげるわ」

「あ~……否定できねぇのが、辛いところだな」


 今は宗司の心境は変わってきているのだが、それを伝えるのは少し気恥ずかしい。だから、ここは軽くスルーすることにする。


「私は興味本位だ」

「僕は、放っておけなかったから……かな」


 いつも通りの日明と、口調の変わった駿也が答える。

 部長のそんな中部長の綾花は、困ったような表情をしていた。


「どうしたのかしら? 自分から部長をやるのだから、それなりに理由はあるのでしょう?」

「そうですね。……私の目的は『ある怪異との再会』。あの方にもう一度会い、約束を果たすことが、この部を再興させた最大の理由です」


 強い語調で言う彼女に、宗司は疑問を口にする。


「なぁ、そもそも怪異って、『あるかどうか議論する』ところから始まるんじゃ?」

「……少なくても、私は遭遇したことがあります。だから、確信を持って探せるんです」

「そうね、私も一つ……いいえ、最低でも二種類は実在するのを知ってるわ」


 女性陣二人は、怪異について肯定的なようだ。


「……私も、ある」

「僕は……興味はあるけど……」


日明は肯定、駿也は曖昧だった。明確に怪異に疑問を持っているのは自分だけらしい。まぁ、オカルト研究部なのだから、怪異に疑問を持っている人間が入っている方が珍しいのだろうが。


「じゃあ俺も、信じてみるかな。あるつもりで探さないと、見つかるもんも見つからねぇかもしれないし! それで、どこで情報を集める? 学校の七不思議でも探すのか?」

「いえ、ネットで情報を集めようかと思います」


 綾花はネットを利用しようと提案している。


「でも、ガセ情報も多いんじゃあ……」

「いえ、確かにそうでしょうけど、曖昧な情報の中にも真実はあるかもしれません」


 駿也の当然の不安に、綾花は凛と答える。その様子を見た楓が手を叩いた。


「なるほど。あなたならかつての経験から、『本物』を見つけられるってわけね」

「そうです。私の遭遇した怪異なら、特徴を覚えているのでそれで割り出せます。もちろん、近場だったり有力そうな情報があったら、普通にオカルト研究部としての活動はしていくつもりですが」


メガネの中心を押さえながら、彼女は話した。……宗司としても、文句はない。


「んじゃ、ホームページは俺が作るわ。パソコン得意だし」

「え? いいですよ。どこか適当な掲示板でも漁ります」

「いいから任せとけって。そっちの方が効率いいだろうし。それとも他にやりたいって奴いるか?」


宗司は胸を叩いて皆に告げる。綾花は遠慮しているが、他のみなは何も言わなかった。


「決まりだな。まー任せとけ!」

「……そういうことなら、お言葉に甘えさせてもらいます」


 かくして、もう一人の楓も部に加わり、本格的にオカルト研究部としての活動が決まったのであった。


楓「さて、今回は前回説明し損ねた私の説明だったかしら? もう覚えている読者さんなんていないんじゃないかしら?」

作者「か、開幕から容赦ないですね……」

楓「半年もほったらかしにした作者に容赦なんていらないわ。本編見た?『この小説は今後更新されない可能性が高いです』ですって」

作「アーアーアーアーアーきーこーえーなーいー」

楓「死にたいのかしら?」

作「で、でもほら、きっと待ってる人なんていないでしょうし……」

楓「それが書かなくていい理由になると?」

作「うぐ……」

楓「話が逸れたわ。とっとと説明しなさい。二万文字しかない上、いちいち括弧までつけてると意外と文字数余裕ないわよ?」

作「ああ、そうですね……えーっと、あなたはですね、『私の理想』とした人物像となってますな」

楓「それはどっちが? 私かしら? それとももう一人の私かしら?」

作「両方です。『悪意を認識できない』あるいは、『悪意に対して、的確に攻撃し、排除できる』そんな精神になりたかったという。作者の願望の表れです」

楓「ずいぶん極端じゃない?」

作「だからこそ『願望』なんですよ。実は作者、ちょっとした呪いにかかってまして、『意図的に誰かを傷つけられない』という呪いがあるのです。友人は強烈な自己暗示でそうなってるって言ってましたが、まぁ、呪いみたいなものでしょう」

楓「一見、なんの問題もなさそうに見えるけど?」

作「……喧嘩の時に絶対に相手を殴れないのにですか? 例えば殺されそうになっても、相手に全く手を出せないんですよ?」

楓「ふーん。それで私たちみたいになりたいなんて願望を?」

作「ですね。……すいません。ちょっと気分が悪いので、切り上げてもらっていいですか?」

楓「あんまり話したくないことなのかしら?」

作「それもありますが……なんでしょう、自分のこと書いてたら恥ずかしくなってきてですね……」

楓「自分の分身出してる時点で相当恥ずかしいと思うのだけれど?」

作「それの解説なんて余計恥ずかしいんですよ!」

楓「じゃあやらなきゃいいじゃない」

作「いえ、一度公言してしまった以上、取り下げるのもねぇ……」

楓「はじめからやらないか、勢いのあるうちに書いて恥掻いた方が良かったんじゃない?」

作「ですねぇ……あ、でも他のキャラもやるんで。宗司以外」

宗司「なんでや!」

作「呼んでないのに出てくんな! お前は正直適当に作ったからある意味作者の素が出てるキャラかもしれないが、当初の予定にはいなかったキャラなんですよ!」

宗「そうなのか!? の割には今回視点が俺のような気がするんだが」

作「普通の視点が急きょ必要になったので、普通のキャラとして召喚されたのが宗司君です」

楓「普……通…………?」

作「いや、イレギュラーのあなたに言われても説得力ないですから! ああもう!! 宗司のせいで予定と違うあとがきになっちゃったじゃないですか! どうしてくれる!! 収集つかないので、今回はこれにて終了! お疲れ様でした!!」

宗「次は早く投稿しろよ!?」

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