四章―4 交戦
作者「だあああっ、連続更新途切れたっ!」
カエデ「詳しい理由は、活動報告でだって!」
横山 凛音 は、少なからず動揺していた。
本部との連絡を見られたのは勿論、こちらの正体まで見破られているとは思いもしなかった。少なくても吸血鬼らしい行動はしていないはずである。
「吸血鬼? あなたは一体何を言っているのです?」
だから、彼女はとぼけて見せたが、楓は笑みを濃くした。
「その気配で『人間だ』なんで無理があるわよ? それに――私たちは既に怪異と接触済みですもの」
「……日明がすべて話したのですか?」
「さぁ? 全部ってことはないとは思うわよ? 疲れるって本人も言ってたし、そこは私たちも納得していたわ」
飄々と語る彼女に、凛音は焦りが増大していくのを感じた。日明がどこまで話したか、それだけでも把握しておく必要がある。それと気になる点がもう一つ――
「気配で察知した、と言いましたが、そんなに違いますか?」
「あなたたちは人間には程遠い存在なのよ? 昔の武術を極めた連中なら、即座に察知できるんじゃない?」
「そうですか。……あなたをこのまま返す訳にはいきません。他の部員にも知られるわけにはいかないので――」
「殺し合い? ……望むところよ……クスクス」
違う、催眠術をかけて、記憶を少し失ってもらうだけだ――そう言おうとした矢先、何かが楓の懐から投擲された。とっさにバックステップし、彼女からさらに距離を取る。
だが、楓は早い。投擲物に気を取られている隙に大きく前進していた。手元にはナイフが握られている。恐らく、投擲物はこれの鞘か何かだろう。
やむなく、凛音は独学で編み出した魔法を発動。自身の認識領域にある道具を手元へと転送する。呼び出した牛革で作られた鞭を握り、水平に振る。完全に不意打ちだったはずだが、楓は対応した。
倉庫の壁を蹴り、高度を取って鞭をかわす。さらに距離を詰め、ナイフの間合いへ。このままでは危険と判断した凛音は、もう一つ道具を転送し、構えた。
甲高い金属音と共に、彼女が呼び出した盾とナイフが干渉する。並みの道具なら逆に破壊してしまうほどの特殊加工が施された盾だが、相手のナイフは健在だった。この盾でナイフを破壊して終わりだと思っていたのだが、相手は攻めを継続。しかも――盾ではなく握っている袖の部分を狙ってきた。
ナイフが浅く入る。多少出血したが、これぐらいならすぐに止まるだろう。
「……嫌なことしてきますね」
「あら、争いではいかに相手の嫌がることをするのかが肝だと、私は思っているのだけれど?」
盾で相手を押し、距離を離した。切られた腕が痛む。見ると傷が再生していない。相手の所有している得物は、銀のナイフには到底見えない……となると――残るは『ジュエルメタル』だ
「そのナイフ。どこで手に入れました?」
「我が家の家宝を拝借しただけよ」
一般人が所有しているとは思いもよらず、彼女は慎重になる。自分の傷は並みならすく回復してしまうが、銀と『ジュエルメタル』製は別だ。これによってつけられた傷は治りが遅い。
自分が盾をもっと上手く使えれば問題はないのだろうが、相手の技巧はこちらを上回っているように思える。現に鞭も盾も対応されてしまった。
……あり得るのだろうか? たかだか15、6歳の小娘に遅れをとるなど――
だから、魔術を使用すれば楽に勝てると思い、鞭をしまい魔術書を転送する。本に魔力を込めると、無数の炎弾が生成された。草むらで使うのはまずいとも思ったが、なりふり構わず彼女に向かって飛ばす。
けれども、炎弾は彼女には届かない。初見のはずの攻撃を、時にかわし、時にナイフで切り捨てて進撃してくる。再び凛音が正面に盾を構えた所に――『足』に鈍い衝撃と共に体が滑る。視界が塞がっていてよく見えなかったが、彼女が高めに盾を構えるのを読んで、足払いを放っていた。
体が地面に叩きつけられる。炎の残り火が辺りを照らす中、一瞬視界に映った楓は、まるで死神のように笑っていた。
「さ、とっとと死になさい」
盾の防御は間に合わない。目を閉じで、頭に向かって振り下ろされるそれを、受け入れることしか彼女にはできなかった。
――痛みや意識の暗転は、いつまでたっても起こらなかった。
「そこまでだ。楓。相手が吸血鬼だからと言って好戦的過ぎではないか?」
「あなただって不機嫌だったでしょうに、化物さん?」
凛音とナイフの間には、一本の腕が伸びていた。深くナイフは突き刺さり、彼の腕から血か零れる。
凛音を守ったのは――監視対象であるはずの、『聖戦の鬼神』だった。
宗司「楓ってもしかして強ぇのか?」
駿也「アメジストキラーの効力もあるんじゃない? どうなの作者さん」
作者「基礎スペックの身体能力は、人間に収まる範疇で高い方かな」