四章―3 監視者
作者「投稿が途切れませんね。いい傾向です」
宗司「の割には、読者すくねぇがなハハハ」
「……本部、聞こえますか」
体育館倉庫裏、ぼうぼうと生い茂る草むらの日陰の中に横山 凛音はいた。
片手には携帯電話を握っているようだが、彼女の学友が見れば、おかしなことに気がついただろう。全くしゃれっ気のない、無骨なガラケーに驚いたかもしれない。普段の彼女の携帯電話は、もっと可愛らしいストラップがついてたり、色合いも明るい。
『どうした凛音、定時連絡にはまだ時間があるが……』
「……酒月 日明 本人と接触しました。気配からして、本物かと」
『接触は可能なら避けろと言っていたはずだが?』
「そうも言ってられません。現在はあの『オカルト研究部』で本格的に活動しているようなので、彼女たちが危険な目に合わないよう、強く監視する必要があるかと。部活動への参加を決めました」
……過去、ここのオカルト研究部は、あと一歩のところまで怪異に迫ったことがあった。そこで抑制剤になったのが、彼女、凛音なのである。
『日明本人の反応は?』
「多少機嫌が悪そうでした。恐らく、こちらの正体にも気がついているでしょう」
『当然だ。『聖戦の鬼神』ならば、気配で人間か吸血鬼かの判別ぐらいは余裕だろう』
本部の話し相手は、『影の大戦』の経験者でもある第四世代だ。日明の脅威は、身をもって知っているという。
『彼の性質上、あまり刺激しなければ問題はない。そこに気をつけて、監視を続行せよ。場合によっては、『オカルト研究部』の面々に、ある程度裏の事情を話しても構わない』
「……よろしいのですか?」
『場合によってはだ。可能なら避けろ。ただ、活動や日明の行動如何によっては、隠しきれないことも考慮せねばなるまい』
「それと、こちらからも質問、よろしいでしょうか」
『……なんだ?』
「シャミル・ジュリエッタの件、どうなりました?」
『現在捜索中だ。過激派に捕まったという報告もない。できれば、我々が保護して協力してもらいたいのだが……』
シャミル・ジュリエッタ。四分の一が人間で、残りが吸血鬼の女性。
彼女を調べれば、人間と吸血鬼の境界線を知ることも夢ではない。
過激派もその能力を目当てに狙っていると聞く。なので、彼女はいつも狙われ、組織と言うものにアレルギーと呼べるものを持ってしまった。
結果、彼女はどの組織も拒絶するようになった。戦いになれば、彼女の能力は『氷葬のアルテミス』にも勝るとも劣らない。残念ながら自分の所属する組織では、首領ですら勝てるか怪しい。
「……わかりました。報告を終了します」
『次の定時連絡はしなくていい、次の次にて、報告せよ』
「了解しました。我ら、再び日の当たる世界に戻れる日を」
『戻れる日を』
その言葉を最後に、電話を切る。ふぅ、と一息ついて、振り返ったところに――
「お話はもう終わったかしら? 『吸血鬼』さん?」
薄氷のような笑みを浮かべて、木下 楓が、距離を取って立っていた……
綾花「いつの間にか抜け出していたのですね……気がつきませんでした」
駿也「これ、一触即発ってやつじゃないの?」