三章ー17 七つの宝具
作者「中二病全開な名前の装備が出てくるよ!」
宗司「前々からあった奴じゃねえか!!」
二人が帰って来たのは、しばらく経ったあとであった。
相変わらず綾花は……いや、行く前にも増して綾花はうっとりしており、スコットの腕をがっちりホールド。
スコットは努めて冷静でいたつもりだったが、流石に皆の前では恥ずかしいらしく、「腕、解かないっすか……?」と困惑していた。
「スコット。決着はどうする?」
「この子たちいたんじゃ、きっとどっちが負けても悲しみかねないんで、100年後まで持ち越しで」
「了解だ。それまで死ぬなよ? 吸血鬼は私に比べ脆いのだからな」
「大師匠の再生力と防御力が、おかしいだけのような気がするっす……」
そこで思い出したように、スコットが言う。
「あ、そうだ大師匠。偽造パス今度作ってもらえるっすか? 自分も大師匠たちが通ってる学校、行ってみたくなったっす」
「わかった。その時はクラスや部活も一緒の方がいいだろう。操作しておく」
「よろしくっす!」
駿也と宗司、そして楓が一斉に声を上げた
「えーっ!? 日明クラスの化物が学校来るのかよ!? しかも俺のクラスに!?」
「あ、日明と同じクラスじゃなくて良かった……」
「今度軽く相手して下さるかしら? ああ、本気は出さないで頂戴?『アメジストキラー』があっても勝てる気がしないもの」
「……!?」
今度はスコットが驚愕した。一体何があったのだろうか?
「『アメジストキラー』!? 一般人が『七つの宝具』を知ってるっすか!?」
聞き慣れない単語に、日明以外の全員が首を傾げた。
「『セブン・メタルズ』は、私の弟子にしてこいつの師匠、ジェイムス・ハミルトンが作成した七つの傑作のことだ。『紅蓮の薔薇』『幸運の蒼燕』『破滅の桜』『破砕の剛剣』『翡翠の盾』『黒曜石の鎧』『柘榴石の細剣』……この七つだ。模造品も多くあるが、私の『トパースブレイカー』とこいつの『ラック・スワロー』は本物だ」
「まぁ、自分のに関しては、厳密には『本物だった』が正しい表現っすけどね。嬢ちゃん、今持ってるっすか? 返せとは言わないんで、せめて本物かどうかの鑑定だけしたいっす」
「いいわよ。どうすれば?」
「それに関しては、渡してもらえば分かるっす。『殺人衝動』に襲われる、魔性のナイフっすから」
何事もないように、楓は愛用のナイフを鞘ごと渡した。スコットが受け取ると、驚愕と同時に、ゆっくりと鞘を抜く。
「……間違いないっす。これ本物っすね……『殺人衝動』と、『殺し方が認識えるナイフ』っすからねこれ……まさか、お嬢ちゃんみたいな華奢な子が持ってるとは思ってなかったすよ」
「巡り合わせってやつよ。我が家の家宝として封印されてたのを、私が借用したのが始まり」
スコットが慎重に、彼女へ『アメジストキラー』を返した。殺人衝動に襲われるナイフを握っているというのに、楓は平然としている。
「なんで平気なんっすか……?」
「気が向いたら、話してあげるわ。スコットさん」
にっこりと笑った彼女に、スコットは何故か寒気を覚えた。本能が警告する。『この話題にはあまり触れるな』と。
「さて、これからについてだが、いいだろうか?」
日明が全員を見渡しながら、語る。
「今日は遅い上、ここは風も強く寒い。故に、次の部活動の際、私の知っている範囲で裏側の事情を話そう。それでいいか?」
「吸血鬼とか、色々だな?」
「ああ」
日明は頷く。
「じゃあ、この場はこれで解散っすね。じゃあ、偽装パスの件、よろしくっす!」
「任せておけ。頃合いを見て、またここで会おう」
「またお会いしましょう。スコット様」
ずーっと手を取っていた綾花が、ようやくスコットの手を離したかと思うと、彼はその場から駆け出して、闇の中へと消えていった。
日明も何も言わず、その場を去る。残された人間四人も、それぞれの帰路についた。
作者「バトル物になる予定の名残ですね。これらの装備が出てきてドンパチやる予定でした」
カエデ「実際やるの?」
作「どうでしょう? そこまで話を進められるかどうか……」