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広イセカイと狭イテノヒラ  作者: 北田 龍一
まだこの作品が小説だったころ
19/43

三章ー11 佐々木小次郎

作者「今日は思ったより進まないなぁ」

綾花「というか、昨日がおかしかったのでは?」

「っ~~!?」


 その拘束は、あまりにも唐突であった。

 深夜コンビニに出かけ、一杯家でやろうと思った、その時だった。

 背後から襲われ、口を塞がれる。何も出来ないまま彼女と何者かは倒れ込んだ。

 そのまま首筋にナイフがあてがわれ、闇夜の襲撃者は暴漢ということが明らかになった。


「ひっ――」

「喋るな。殺すぞ」


 男は冷たい瞳で舌舐めずり。本気なのが伝わってくる。

 自分はここで汚され、最悪殺されるのだ――そう悟った瞬間、背筋に冷たいものが奔る。

 神などいない、いるのなら失恋のショックで酒盛りしようとしたタイミングで、暴漢に襲われたりなどしないだろう。絶望が心を黒く塗りつぶし、意識が宙に浮いたような感じになった、その時だった。


「ちょっと待ったっす!」


 この場に場違いな明るい男の声が響いた。馬乗りになっていた男が慌ててそちらに振り返る。


「誰だっ!?」

「誰だと聞かれたら、自分はこう答えるっす!『この世のすべての女性の味方』佐々木小次郎ただいま参上!!」

 

 彼女もそちらを見ると、見たことのない――例えるなら中世の、古臭さを感じさせる洋服……あるいは軍服か制服かを着用し、金髪の髪にスカイブルーの瞳、腰には異様に長い――刀を差した男が立っていた。


「……お前、ふざけてるのか?」

「んなっ! 失礼な! 大真面目っす――!?」


 最後まで言い切る前に、暴漢は男に向かって走り出した。手にはナイフが握られてる――殺す気だ。

 避けて、と言おうとした瞬間、不可解なことが起こった。


「『制約解除』!」


 避けるのも難しいであろう暴漢の突進を、恐ろしい早さで刀に手をかけ、抜刀。と同時に刀を振り上げた。しかし勢いは止まらず、暴漢が男に激突する。

 暴漢の両腕は男の胸のあたりにある。心臓だ。

 しかし、一向に男は表情を変えない。苦痛に歪めてもいない。どういうことかと、事の顛末を見届けていると、やがて暴漢が震えた手でナイフを……いや、ナイフだった物を落とした。

 ナイフは刃の根元から切り捨てられていて、もう武器として機能しない。これではただのプラスチック製の棒だ。


「『厳流抜刀術 水面(みなも)走り』……ハァ。油断はダメっすね。こんなのに技を使わされたなんて屈辱っす」


 飄々と男が言う、抜き放たれた刀は今や暴漢の首筋にあり、彼の意思でいつでも切り落とせるだろう。


「まだ、やるっすか?」

「ひ、ひいぃっ!!」


 暴漢は逃げていく……どうやら自分は助かったらしい。男は持っている刀――よく見ると青みがかかっていた――を鞘に納め、こちらに寄ってくる。


「大丈夫っすか?」

「は、はい! ありがとうございます!!」

「なら、よかったっす!」


 ニカッと男が笑った。ひどく明るい雰囲気の男だ、しかもまだ若そうに見える。二十歳から十八歳といったところだろうか?


「警察に連絡を――」

「おっと、それはダメっす。自分も銃刀法違反で捕まるっすからね。それに――自分、ちょっとやっかいな事情を抱えてるっすよ」

「それは一体……?」


 男はしばらく考え込んだ後、元からそれが目的だったかと言って、真相を語った。

 そのことに驚愕しながらも、同時に納得がいった。青い刀など見たことも聞いたこともないし、何よりあの尋常ならざる速度での抜刀は、人間業ではない。

 

「これから自分は、師匠の師匠、『大師匠』に挑むっす。そのためにも――体調は万全にしておきたい。ま、強制はしないっす。それだと自分好みの味じゃ無くなるんで」


 人の良さそうな笑みで、彼はもう一度笑う。

 ほどなくして彼女は――彼の要求を飲んだ。


作者「という訳で、またまた新キャラ『佐々木小次郎』を名乗るキャラが登場しました」

カエデ「綾花ちゃんとの関係はどんなのかな? 楽しみ~!」

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