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広イセカイと狭イテノヒラ  作者: 北田 龍一
まだこの作品が小説だったころ
13/43

三章ー5 食事

作者「一日二話投稿……とうとうこっちでもできたか……!」

宗司「オイどうした作者? 熱でもあんのか?」

作「失礼な、熱ならこの前出しましたよ」

綾花「そう。完治してよかったですね」

作「おっ、珍しくみんな優しい」

日明「まぁ、このクオリティーで一日二回投稿できれば、それは褒めるさ」

作「やべぇ、嬉しくて泣きそう」

 長い風呂を上がった彼女を出迎えたのは、自分が身につけていたものとは異なり、それでいてちゃんとした女性物の下着と、水玉模様のパジャマだった。

 あのワンピースはお気に入りのものだったが、流石にあれだけ汚れてしまっていては再び着る訳にもいかないだろう。再び着るのは一旦洗ってもらい、修繕してからだ。

 用意された衣服を身にまとう。サイズもちょうどいいぐらいだ。見ず知らずの他者を泊めるのに慣れているというのは本当らしい。

 がらりと戸をあけると、キッチンからいい匂いがしてくる。駿也とその母親が料理をしているようだ。

 物音で気がついた駿也が、こちらに顔を向ける。


「おかえりシャミル。いま夕飯作ってるからちょっと待っててね」

「駿也も……料理できるんだ……?」

「あら知らないの? 最近の若い子は家事ができないとモテないのよ?」

「そういう目的で、料理してる訳じゃないよ母さん。これは趣味だ」

「できないよりできるに越したことはないわ」

「そりゃそうだけど……」


 駿也が言い淀んでいる間に、シャミルはゆっくりとキッチンに近づく。


「何を……作ってるの……?」

「ハンバーグと野菜スープだよ。もう出来るから、そこのテーブルのところの椅子で待ってて」


 久々の風呂と言うこともあり、髪や体は入念に洗った。そのせいもあって、結構な時間が経っていたようで、料理はもう出来上がる寸前だった。ある意味グットタイミングとも言える。

 食器を運ぶのを手伝おうかと思ったのだが、空腹で碌に力が出ないので危険と判断。おとなしく座って待っていることにする。

 やがて運ばれてきたのは――ホカホカの温野菜のスープと、肉の匂いあふれるハンバーグだ。茶碗にもご飯が盛られ、駿也が箸などの食器を配る。


「ええと、この家はマナーとか気にする人たちですか……?」


 つい、そんな言葉が出たが、駿也の母親が笑って話す。


「よっぽどひどくない限り大丈夫よ。あなたは……西洋の生まれかしら?」


 返答に詰まったが、ここはある程度話しておかないと信用されないとも思い、少しだけ真実を織り交ぜて答える。


「……日本人の……クォーターです。お父さんはどこの国の人かは知りませんが、西洋人だったと思います。お母さんが日本人のハーフでした」

「ああ、それで外国人っぽい名前でも日本語が流暢だったわけだ」

「……はい」

 

 その時、シャミルのおなかが空腹を訴えて音を鳴らした。たちまち恥ずかしくなり、大仏親子は笑みをこぼす。


「ふふ、シャミルちゃんのおなかも空いてることだろうし、ご飯にしましょう?」

「そうだね。それじゃあ」

「「「いただきます」」」


 シャミルは何に手をつけようか迷ったが、とりあえず野菜スープから頂くことにした。西洋での食事癖が抜けてないのか、やはりいきなり肉を食べる気にはなれない。

 細かく切られたニンジンとジャガイモをスプーンで掬いそのまま口に運ぶ。

 ……熱くてよく味がわからなかったが、久々のまともな食事に胃が運動を始めるのがわかった。今度はよく冷ましてから、もう一口。コンソメと野菜の素朴な味わいが舌に染み、胃袋が躍動し始める。

 ……大昔に食べた一級料理が霞むほどのおいしさだった。誰かが、『空腹は最高のスパイス』と言っていたが、まさにその通りだとシャミルは感じた。

 その感動をそのままに、白米に箸をつける。ジャポニカ米独特の甘みと旨みが広がっていき――今まで食べてきた米とは何だったのかと思い知った。外国産の米は味付けで誤魔化しているだけだが、日本の米はそのままでも美味い。

 最後に、ハンバーグを食そうとナイフとフォークに持ち替える。ゆっくりとナイフはハンバーグに吸い込まれ、ちょうどいい大きさに切り分けられた。肉汁あふれるそれを口に入れると、その味わいが胸に染みて――視界が滲んだ


「……おいしい」


 気がつけば、ぽろぽろと涙を流しながら、食事を進めていた。それほどまでに、まともな食事は久々であったからである。

 あの時、この青年に拾われてなかったらこの未来はなかった。もし神様がいるのなら、今まで過酷な運命を自分に与えてきたけれど、この瞬間だけは感謝してもいいかもしれない。


「「「ごちそうさま」」」


 泣きながら食事をするシャミルを、二人は何も言わずにいてくれた。食事しながら、色々と聞き出すつもりなのかとも思ったのだが、そうでもないらしい。だから、自分から聞いてみることにした。


「あの……私のこと、聞かないの……?」

「聞けば、話してくれるの?」


 シャミルは目を伏せた。


「僕たちは知りあったばかりだ。だから、最小限のことだけ、知ってればいいんじゃないかな。その方が……別れるときも、辛くなくてすむだろうし」

「……っ」


 そうだ。自分は追われる身。一か所に潜伏し続けるのはリスクが高い。居心地が良すぎて忘れていたが、自分はいずれここを離れなければ――そこまで考えて、彼女は『衝動』に襲われた。


「っ……! っ……!!」


 必死でわき上がるそれを抑えつけた。幸い彼には、別れる時の話がショックだった。ぐらいにしか映っていないらしい。

 そうだ。追手を振り切るためにも、補給もしなければ――

 目の前の人の良さそうな青年を見て、彼女の胸が、チクリと痛んだ。


作者「放浪少女シャミルの衝動とはナンダロウナー」

シャミル「次回まで……待ってて」

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