顔が豚化ウイルス
20XX年、日本中を恐怖に陥れるウイルスが見つかった。その名も【顔が豚化ウイルス】。感染した人間は豚のような顔に変化してしまう。
それは最初は人口が1万人にも満たないとある田舎の町から始まった。養豚場を営む人が体調不良で咳をしながらクリニックを受診する。医師や看護師は、その外見に驚いた。まずもって目が細い。目が細いこと自体は珍しくないが問題は鼻だ。マスクをしているが、うまくマスクを固定できないほど豚のような鼻だった。医師や看護師が今まで見てきた人の中でも一番の鼻の穴が突き出た豚鼻。とはいえ人の容姿をとやかく言うものでもないので、通常通り診察して処方せんを発行する。
「こんなこと言っちゃいけないけど凄い豚鼻だったね。目も細くて本当に豚みたい。」
「養豚場で働いていると、顔も豚に似ていくのかしら。」
患者が去った後に、お気楽な会話をしていた職員達だったが、数週間後に揃って体調不良となった。そこで働く職員およびその家族はもちろんのこと、その医療機関を受診していた人達およびその家族もほぼ全員が同じような期間で体調不良となり、鏡を見ると目が細くて鼻が豚鼻になっていることに気づく。
最初から都会で感染爆発が起きていたら、対策も早くできたのだが田舎からだったので把握が遅れた、対策が遅れた。今となってはその町の住民はほぼ全員が目が細く、鼻が豚鼻になっている。その近隣市町村の住民、その町を通っている電車の乗員乗客、観光客などにも感染が広がっている。
最初の感染報告から数か月経った。感染者が多くなるにつれて段々と【顔が豚化ウイルス】の全容が分かってきた。
咳、鼻水、喉の痛み、倦怠感など最初はただの風邪かと思って(初期には医療機関に行っても風邪と診断されて)薬を飲んで眠る。そして、目を覚ました時に自分の顔が、目が細く、豚鼻という豚みたいな顔に変化していることを確認して、何かとんでもないことが起きたことに気づくのだ。それまで容姿が整っていた人も細い目と豚鼻となり、美人やイケメン扱いではなくなる。むしろブスとかブサイク扱いとなる。
この【顔が豚化ウイルス】の厄介なところは他にもあった。
まず、感染してから体調不良を感じるまでが数週間と、かなり遅い。要は潜伏期間がかなり長い。これが早ければすぐに隔離等できるのだが、かなり遅い。風邪気味というほどではない、通常のくしゃみだろうかという場合でも実は感染していてウイルスを排出していたりする。
そして今までの感染症との最大の違いは、感染者は半永久的に【顔が豚化ウイルス】を排出するということ。体調が落ち着いても、咳、鼻水、排泄物に非感染者に影響を及ぼす【顔が豚化ウイルス】が含まれていることが確認されている。要は人体から消えないのだ。正直これはかなり厄介・・・というかもう絶望だった。なんせそれまでの感染症の常識を覆すものだったからである。社会生活継続のため、当初は新型コロナウイルスが2類相当の時と同様、感染症病棟で厳重な感染対策をしてその後は一般病棟とかホテルで数日間経過観察なんてしていたが、体調が回復していても感染リスクは高いので、一般病棟の職員とかホテルでの業務に携わる人達がほぼ全員感染して、体調不良後に目が細くなって、鼻が豚鼻に変化したりしていた。
学校を卒業したばかりの若くて天使のような可愛さの女性看護師さん達も、総じて醜い豚のような顔に変わっていったのだ。
当初は労災だ、保証だなんて声もあったが日に日に感染者が増えるにつれて、そんなことを国として考える余裕もなくなった。要は、いかにして【顔が豚化ウイルス】と共存していくかということを考えなくてはいけなかった。外見は醜い豚のような顔に変わってしまうが、一過性の体調不良の時期を過ぎると、体調面としては安定していくので。
そこから数か月後、感染者は日本国民の2割以上となっていた。そして毎日のように、1日50万人近くの豚顔になった新規感染者が報告されるようになった。これぐらいの規模感になってくると、日本国民のほとんどが感染して豚顔になるのも時間の問題である。そうなると、もう感染対策をしても意味がない。無駄な税金の使い道となってしまう。こんなことよりも、他の政策に注力しなければ。
日本政府は【顔が豚化ウイルス】を指定感染症から外すこととした。何とか頑張って感染しないでいた人達からは不満の声が出るが、だって仕方ない。その時点で特に移動することの多い国会議員は、半分以上が目が細くなって、鼻が豚鼻になっていたし、それこそ総理大臣も感染して醜い豚の顔になっていたし。
指定感染症から外れたことで、急速に【顔が豚化ウイルス】の感染が広まった。1日の感染者なんてものも発表しなくなり、みんな醜い豚の顔に変わっていった。感染者が少数だったころには、学校や職場で息苦しい思いをしていた感染者達も、今ではそんな思いをすることなく日常生活を送れている。
【顔が豚化ウイルス】のメリット
【顔が豚化ウイルス】が日本で誕生して数年後に分かった変化として、出産数がそれまでの倍以上になっていた。
まだ推測の域を出ない説とのことだが、おそらくウイルスの中に豚の繁殖本能的な要素も含まれており、感染することで繁殖に関わる本能的な部分が豚に近づいていったためと思われる。
それこそ、街中でカップルが人目も憚らずにキスをしたり抱き合っていたりするのなんて、【顔が豚化ウイルス】が誕生する前の日本では、はしたない行為として嫌悪されることが多かった。
しかし今では、街中でカップルどうしがキスをしていたり抱き合っていたりも珍しくない。
その光景をたまたま見たカップルが、「じゃあ私達も」という形で街中で愛を育みあう。
街中に限らず、学校で、会社でそういった行為が行われることも増えてきた。
社会全体として、そういった行為が推奨される雰囲気となっていた。
そうして日本の少子化問題は、問題と感じられないレベルにまで達していた。
人々の幸福感も【顔が豚化ウイルス】が誕生する前と後では段違いに思える。
みんな醜い豚の顔をしているので、少なくとも外見を他人と比較して病んでしまうことは無くなった。
また、繁殖本能だけでなく豚のおおらかさというところも何となく受け継がれていて、精神的に安定していた。
流行当初はどうなるかと思ったが、今では皆幸せである。
【顔が豚化ウイルス】ありがとう!
知り合いの豚顔(細目、豚鼻)の女性が、そういうウイルスを排出してくれると良いなーと妄想しています。
最低な妄想かもしれませんが、本当によく妄想してます(^▽^)/(^-^;
私もあんな豚顔になりたい!
周囲の人も豚顔だといい!
全員が豚顔だといい!
豚顔どうし、鼻息荒く愛し合いたい!




