緊急事態、発生
ども。カルピスでっせ!久々にアップするので、良かったら見てやって下さい。
「敵襲、敵襲~!」
朝の稽古を始めてから数週間経ったある日、そんな声に叩き起こされた。
「敵襲!?グレイ・ブレイブか!」
俺は飛び起きた。と、同時に扉が開け放たれた。
「お兄ちゃん!」
「あぁ、俺達も行くぞ!」
俺は茜を引き連れ、姫達に状況を説明して貰おうと思い、探し回った。そして謁見の間の前でカナリア、アイリス、ミュールに出会った。
「敵襲って本当か!?」
「えぇ、残念ながら本当です。」
カナリアが答えた。どうやら最悪な展開になっちまったらしい。
「今戦闘中か!?」
「いいえ、ですが敵は目前に迫っております。貴方方は安全な場所へ避難していて下さい。」
「そんなこと出来るか!俺達も手伝うぜ!」
「…」
カナリアは少し考えた後、口を開いた。
「分かりました。どうせ止めても行くのでしょうからせめて、危険になったら退いて下さいね?」
「あぁ、分かってる!」
言い、俺達は駆け出した。姫達も共に。
「お前達は戻れって!危ないぞ!」
「いえ、戻りません。私達は姫であり、魔導兵団の主力ですから。」
まぁ、あれだけの力を見せられた後だから、信用出来る言葉だ。
「そうか。ならお前達も気をつけろよ!?」
「無用な心配ですわ!」
「私達は退き時は心得ていますから。」
それっきり無言で、町の外まで駆けた。
町の外まで出るやいなや眼前を覆うのは人、砂煙。
「なぁ、あれ全部敵か?」
「はい。」
「マジか…」
軽く見積もって五千程は居るだろうか。
「因みに負けると…」
「この国は蹂躙され、男は皆殺し、女は魔力の強い者は、忠誠を誓えば兵士として、誓わなければ『子を産む道具』として使われます。若干弱い者は慰み物となります。又、既に子を産んでいる人は基本的に魔力は子に移って居るので、個人お抱えの娼婦となるか、ストレス解消の為になぶり殺されるか…どちらにしろ、負ければ悲惨な未来は目に見えています。」
「…」
「…」
俺達は絶句した。そんなことにならない様に、頑張らなくちゃいけないとも思った。
「…こりゃ、負けらんねぇな」
「そうだね、お兄ちゃん。茜、絶対勝つよ。だって、あれだけ稽古したんだもん。負ける筈無いよ!」
俺達は得物を構えた…と、同時に姫達の体が光を帯び始めた。
「な、なんだ!?」
次第に強くなっていく光。いや、『白』。以前何処かで…
「お兄ちゃん!これ扉開けた時の『光』だよ!」
そうだ。これは扉を開けた時の『光』に似ていた。それに近い魔力を使っているのであろう。そして視界が全部『白』に覆われた。が、今回は優しい感じがした。母の子に注ぐ『愛情』の様な…
「準備完了です。(ですわ!)(だよ!)」
視界が元に戻ると、其処には、三者三様の何時もとは違う格好をしていた。カナリアは右手に杖と左手に本という、如何にもな姿。緑を基調としたシンプルな格好だ。対してアイリスは赤を基調とし、大剣を両手で持っている、剣士の様な姿だ。
ミュールは両手に銃を持ち、青を基調とした服に身を包まれている。なんてバランスの取れたパーティーだろう。対して此方の兄妹は、戦なので何時もの木刀ではなく、真剣だが、それだけだ。目新しい物は他には無い。
「三人共可愛いな。」
俺がそう言うと顔を真っ赤にしてうつ向く三人…何故だ?
「さ、さぁ、参りますよ!」
カナリアの声を幕開けとし、戦闘は開始された。
アイリスが先陣を斬る。いや、マジで。薙げば薙いだだけ人が宙を舞う。数十人単位で。それを援護するのがカナリア、ミュールだ。ミュールはカナリアとアイリスに迫る敵を撃ち、カナリアは詠唱に全力を注ぐ。
「…俺達要らなくね?」
「…そうだねお兄ちゃん。」
しかし、此処は戦場なのだ。視認された以上、撃退せねばなるまいて。
「ふっ!」
「やぁ!」
襲いかかる敵を倒していると、あることに気付く。
(あれ?こいつらやたら弱いな。まるで…)
時間稼ぎしてるみたいだ、と思い、周りを見渡すと、巨大な火の玉が茜に狙いを定めていた。
「茜!避けろ!」
「えっ…?」
放たれた火の玉が茜に凄いスピードで迫る。瞬間、時間がスローになる。俺は茜を護ろうと駆け出すが、明らかに火の玉の方が早い。
(くっ…駄目か!)
思った瞬間、辺りに光が満ちた。段々強くなる光はやがて『白』になり、視界を覆った。
(これはまるで…姫達の変身みたいだな)
やがて光が収まり、俺は目を開ける。すると其処には火の玉を斬る茜?が居た。
「あ、かね?」
「何?お兄ちゃん?」
ピンクを基調とした服に身を包み、今まで手にしていたであろう剣とは別の美しい剣を片手に携え、凛とした茜がそこにいた。
「お前、今、火の玉を受けたんじゃ…」
「斬ったじゃない。見て無かったの?」
「いや、見てたが…」
「ならどうして聞くの?変なお兄ちゃん。」
「いや、変なのはお前の方だって!自分の格好を良く見てみろ!」
「え?そんなのさっきまで着てた…えぇ!?何これ!?」
「ちっ詮索は後だ!茜、後ろ!」
「えっ?…やっ!」
茜は後ろを向き、冷静に迫る敵を対処した、迄は良かったが、振るった剣がオーラみたいな、視認出来る、鉄の刃ではない、ピンク色の大きな刃が覆っている。茜が持っている真剣の、3~4倍位の大きさだ。アレに触れても斬られたのと同じ効果があるらしい。後ろから迫っていた奴と、更に後ろに居た奴等がバタバタと倒れていった。
「強加系の魔法ですわね。強加系は非常に稀少で、世界で確認されているだけだと五人に満たないんですわ。」
説明ありがとう、アイリス。と言うことらしい。更に迫る敵に横薙一閃。すると、振るった軌跡に沿って衝撃波が生じた。射程は長くは無いが、中距離にも攻撃出来るらしい。
「ほ、放出系まで!?貴女何者なんですの!?」
「知らないよ!勝手に出たんだもん!」
意識して無いらしい…良いなぁ。俺も使いたいなぁ。
「とにかく、先ずはあちらから片付けましょう」
「あぁ、そうだな」
俺達は未だ残る敵兵に向かって行った。
―――
「やはり、茜さんには隠された力が有りましたね。それもかなり強力な」
「二つも能力を持っている人なんて、聞いたことも見たことも有りませんわ!」
「本当だよね。お姉ちゃん凄いよ!」
「…スゴイネー」
「そんなこと無いよ~」
戦闘が終わり、大広間に集まった皆から賛辞を送られ(俺以外から)、一寸照れる茜。因みに服装だが、終わって少ししたらまた『白』に包まれた後、元に戻っていた。
「もしかして俺にも有るんじゃ…」
「何度も言いますが、確率は低いですが、有るかもしれないですね」
「有るかも、かぁ…」
周りは祝勝ムード。一人だけどんよりムード。どうせ俺なんて…
「落ち込まないで?お兄ちゃん。私だって、望んでこんな力を手に入れた訳じゃ無いから。正直まだ戸惑ってるの。だからお兄ちゃん、ずっと私の傍に」
「ちょ~っと待った~!ですわ~!」
「アイリス?どうした。叫ばなくても聞こえてるぞ?」
「疾風は私の傍に居るのが宜しいですわ!」
「アイリスには渡さないよ!お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなんだからね!」
「そんなの関係有りませんわ!第一、兄妹で愛し合う事なんて出来ませんもの!私の方が健全ですわ!」
「それを言われると弱いんだけど…関係無いもん!好きなものは好きなんだからしょうがないじゃない!この気持ちは変わらないわよ!」
俺の横でギャーギャー騒ぐ茜とアイリス。と、急に視界が歪む。世界がまわ…る?
「お兄ちゃん!?」
「疾風!?」
俺の異変に気付いた茜とアイリスが近付いてくる。直後視界が暗転。俺は意識を手離した。
如何でしたでしょうか?楽しんで頂ければ幸いです。またその内次話アップします。