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1:ここどこ!!

「レベル1!?」


スマホゲームをしていた瞬間に俺はどこかに転送されたようだった。

虚ろな黒い目、ぼさぼさの黒髪、やつれた頬、こびりつく無精ひげ。

そして、座っていたので頭上で叫び声が聞こえる。


「雑魚じゃないか!!追い出せ!!!」


え、なんで。俺、なんで、ココドコ!!!


放り出されたのは大きな城の外。

言葉は通じる。俺は落ち着き、溜息を吐いた。

騒いでもしょうがない。

道行く人を観察し、俺は歩き始める。

中世ヨーロッパ風の景色。なんか、ヨーロッパの町並みみたいだった。

黒いTシャツにジーパン。裸足と言うダサい格好だが、道行く人はどうにも気に留めないようだった。

石畳の道は整えられているが、足が痛い俺は路地裏に移動し、休憩した。


「靴欲しいな」


ぽんと音がして目の前にピカピカの黒い革靴が出現した。


「ん?」


俺は恐る恐るそれを履くととぴったり。

すげえや!

スマホは電波が何故かある、電話できるかな。

父に電話してみるがコール音が響き、直ぐとられる。


「なんだー?仕事だろ」

「あーいや、声聞きたくて」

「あははは!!なんだよ。元気出せよ。嫌になったらお前くらい食わせてやれる!!農家は強い!!」

「はいはい」

「おいおい、元気づけてるんだぞ!」

「……うん」

「ぶらっく会社だっけ?そんなん辞めろ辞めろ!農家はいい。食った人のいい顔が見れるからな!」

「そっか」

「……いつでも戻ってきていいからな」

「ありがとう」


そのまま電話を切ると、俺は深く溜息を吐く。


「元の世界に戻りたい」


さっきは靴を手に入れたのだから行けるかと思ったが、何にも動かない。

俺はまた溜息を吐いた。


俺は36歳のおっさん。外見は冴えないが、身長は高く185cmある。


どうしたらいいんだよ。

歩きながら今後の事を考える。

冒険者、とかあるのかな。

あーでも魔物と戦うのか?それとも未踏の大地に降り立つのか?

ていうか、魔物とかいるのか?どういう世界なんだ?

とりあえず、魔法的な物はあるんだな?


考えながら歩いていると薄汚い店。

なんだろうと中に入ると檻に入れられている人間やエルフらしきもの、角の生えた者、獣耳の生えた人間。

統一されているのは襤褸切れみたいな布を纏っていて、首に首輪をつけている。


「ここなんだ?」

「おや?奴隷商は初めてで?」


店主らしき男はでっぷりと肥えた男だった。


「奴隷を売っているってことか」

「ええ、ええ、その通り。冷やかしでも構いません。暇ですので」


がははと笑う男は肥えた手を差し出す。


「私はベンジャミン・ポウエル」

「あー俺は、国繫」

「クニシゲ様はどのような奴隷がお好みですか?」

「好み?」

「ええ例えば獣人がいいとか、エルフがいいとか、オーガがいいとか。力仕事をさせたければオーガがよろしいかと。魔法を使わせたければ、エルフがよろしいですな。狩りに出かけたければ、獣人が役に立ちます。安いのでよければ人間もおります」


ふーん。でも金は持ってないからな。冷やかすか。


「そうだなあ、胸が大きくて、太ももがムチムチで尻がでかい顔の整っている女」

「でしたら、こちらに多くおります。どうぞ、地下室に。おい!ここは任せたぞ!!」

「はい、ベンジャミン様」


地下室に向かうにつれ冷えた空気が漂う。

饐えた匂いの中、地下牢に大量の奴隷が詰め込まれていた。

誰もが死んだ目をしていた。物みたいに扱われる心労は察して余りある。

ひとつの檻に近づくベンジャミンは檻を叩く。


「おい!」

「……」


ゆっくりと女が顔を上げる。ザクザクに切られた白い髪、顔の深い傷、足は片足なく、腕も右腕がない。角は折れ、それでも女の顔は大きな傷があっても整っていた。

それに、ムチムチの太もも、垂涎ものの豊満な胸、身長は160cmくらいか。


「何で払えばいい?」


欲しい。いい女だ。


「金貨でも宝石でも。クニシゲ様の身なりは整っている。さぞや……」


俺は念じた。「大きな宝石が欲しいと」

突然掌に現れた一抱えもある宝石にベンジャミンは驚いた。


「な、なにを」

「これで、買えるか?」

「も、勿論でございます!どうぞ、このオーガをお求めください」


檻の前でしゃがむと紫色の目とかち合う。俺を値踏みする目。


「名前は?」

「……アルン」


しゃがれた声に俺は笑い、念じた。目の前の女オーガを癒せと。

効果は絶大だった。髪は伸び、顔の傷は消え可愛らしい顔が覗き、腕は治癒し、足も治癒し、角も生えた。

黒い角はこめかみのあたりから生えねじれている。アルンは角を恐る恐る触ってそれから涙ぐむ。


「あり、がとう」

「おう、俺の奴隷だからな、行くぞ」

「はい」


声もしゃがれた声ではなく、可愛らしい声で返事をし、ベンジャミンは驚いた顔をして俺を見る。


「どう!?どうやって!!」

「え?さあ。じゃ、またな」

「え!?あ、はい、またお願いします」


アルンを連れて店の外に出るとアルンは上を見て目を細める。


「……明るい」

「うん。なあ服を整えよう」

「でも、奴隷だから」

「俺の奴隷だから、もっと身綺麗にして欲しい」

「はい」


店の横の路地裏に入り、襤褸切れを脱がすと俺はアルンの服を念じた。

よく似合う黒いメイド服。首輪はフリルのついた紫色の宝石をあしらったものに変化した。


「わ、わたし……」

「俺に尽くせよ」

「はい!ええっと……」

「ああ、俺は国繫」

「クニシゲ様!誠心誠意お仕えさせていただきます!!」


可愛いじゃないか。うだつの上がらない会社員だった俺がこの数時間で何とも出世したものだ。


「よければ、その、父のところに行ってもいいですか?連れ去られて、心配させているかと思うので」

「うん。いいよ」


アルンはにこりと笑い、俺を連れて城壁から出ると西日を反射させる白い北の山の向こうを指さす。


「あっちです。あの山の向こう」

「どうやったらいい?馬とか?」


アルンは曖昧な顔を見せる。


「翼がないとあの山は越えられません」

「じゃあ、どうやって攫われたんだ?」

「こっち側に私が来ていたんです。ワイバーンに乗って」

「じゃあ、そのワイバーンを回収しに行かないとな」

「……いえ、もう、死んでいます」

「何だって?」

「殺されたんです。野盗に襲われて、私も慰み者に」

「そっか」

「それで、奴隷商の元に居ました」

「うん。分かった。じゃあ、新しいワイバーンを出せばいいのか?」

「え?」


困惑した顔のアルン。

俺はドラゴンを出す様に念じるとぼふんと音を立ててドラゴンが広い草原、その場に鎮座していた。


「余を呼び立てるとは何者じゃ」

「俺は国繁、こっちはアルン。乗らせて欲しい」

「はあ……まあいい、さっさと乗れ。どこに行きたい?」

「あの山の向こう」


指さすとドラゴンは顔を顰める。


「なんと!人間があちら側に行きたいと申すか」

「何か駄目なのか」

「駄目ではないが、勇気があると思っただけじゃ」

「なにがあるんだ?」

「魔族が犇めく魔界。弱い人間では息をするのもつらかろうて」

「へー。まあいいや、行って。アルン上れる?」

「あ、はい……ですが、ドラゴンロードに乗っても大丈夫なんでしょうか」

「知らん。こいつがいないと話が進まん」

「あ、はい」


アルンは悪戦苦闘しながら登り、俺もドラゴンに乗るとドラゴンは羽ばたく。


「さあて、面白いものを見せてもらおうかの」



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