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第2話「アイドルをなめるな、根性を見せろ!」

翌日、俺は筋肉痛で死にかけていた。


「……おかしいな。若い身体なのに、バリバリ痛ぇ……」


 転生してからわかったが、アイドルのレッスンというのは想像以上に過酷だ。踊って、歌って、笑って、ファンサまでやる。こんなもん、体育祭よりキツいじゃないか。


「レイ、お前昨日どうしたんだよ。キャラ変すごくね?」


 控室でそう声をかけてきたのは、同じグループのメンバー・ミナト。センターを張る人気メンバーで、俺から見るとまるで“女の子を騙すプロ”。


「別に。ちょっと目が覚めただけだ」


 俺がそう返すと、ミナトは鼻で笑った。


「ふ〜ん。どうせすぐ戻るって。『本気』とか『夢』とか、地下アイドルには似合わないんだよ」


 その言葉に、カッと胸が熱くなる。


 ……許せねぇ。

 若者が夢を諦めるようなこと、軽々しく口にするんじゃねぇ!


 その日のレッスン中、俺はまたしてもやらかした。


「振付の前に、まず基礎体力だ!走るぞ!」


 突然そう叫んで、スタジオを10周するメニューを勝手に追加。しかも、声出しとスクワットつき。


 トレーナーは止めようとしていたが、俺の気迫に押されて何も言えなくなったらしい。


「ちょ、レイ君マジで体育教師……?」「やばい、地獄メニュー……」


 メンバーたちはボロボロになりながらも、誰一人脱落しなかった。いや、途中で倒れそうな奴には、俺がちゃんと声をかけた。


「へばるな!身体より先に心が負けるんじゃない!」

「……はいっ!」


 その瞬間――目の前の少年の目に、火が灯ったように見えた。


 夜。レッスンを終え、部屋に戻ってシャワーを浴びる。


 鏡に映る桐生レイの顔は、どこか精悍さを増していた。昨日よりも、少しだけ“自分の顔”になっている気がする。


 その時、スマホが鳴った。


《次のライブ、主催から「レイくんに客釣ってこい」って言われてるから、よろしくー☆》


 メッセージは、プロデューサーの女からだった。

 要するに、「色仕掛けでファンから金を引き出して来い」という意味だ。


「……ふざけんな」


 俺はスマホを机に投げた。


 この業界がどれだけ歪んでいようが関係ない。俺がやるのは、正面からぶつかる“本気のアイドル”だ。


「俺はアイドルをなめない。だから、お前らも俺をなめるなよ」


 つぶやく声は、どこか熱を帯びていた。


 次のライブ会場――地下の小さなステージで、俺は拳を握り締める。


 俺の名は桐生レイ、元・体育教師、現・地下アイドル。


 本気の歌と、本気の踊りで、夢の武道館に殴りこみに行く!


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