第19話「BLACK SUGAR、代表決定!夢への階段を駆け上がれ」
「……東日本代表に選ばれたのは――BLACK SUGAR!!」
その瞬間、会場はざわめきに包まれた。
思わず立ち上がる観客、涙をこぼすファン、SNSに「まさか地下枠が!」と驚きの声があふれていく。
BLACK SUGARのメンバーは、呆然としたままステージに立ち尽くしていた。
「……え? 俺たち?」
コウタが戸惑いの声を上げる。
「いや、間違いなく、俺たちだ!」
レイが吠えるように言い放ち、拳を振り上げた。
「東の頂点、取ったどォォォッ!!!」
観客が一斉にペンライトを掲げ、黄色い声援が飛ぶ。ステージにスポットライトが当たり、BLACK SUGARの名が高らかに響いた。
⸻
控え室に戻ってからも、メンバーは興奮の余韻から抜け出せなかった。
「……夢って、ほんとに叶うんですね」
コウタがぽつりと呟いた。
「いや、これは“夢が始まった”だけだ」
ミナトの言葉に、場の空気が締まる。
「武道館がゴールじゃない。あそこは、スタートラインだろ?」
「うん。そこに立つ覚悟、もうできてる」
ユズキがうなずき、軽く拳を突き出す。
ひとりずつ、みんながその拳に手を重ねていった。最後にレイが力強く、上から手を置く。
「俺たちは……BLACK SUGAR!」
「「「押忍!!!」」」
⸻
後日、彼らの快進撃はメディアでも大きく取り上げられた。
「地下アイドル界からの“奇跡の挑戦者”」
「熱血センターの応援団アイドル」
「泣けるパフォーマンス」
ニュースサイトやバズった投稿で、BLACK SUGARの名は一躍全国に知れ渡ることになる。
さらに、取材やテレビ出演の依頼が殺到。初の地上波インタビューでは、レイが学ランで登場し、司会者の爆笑をかっさらった。
「アイドルに不可能はありません! “今を本気で生きる奴”が、アイドルだァ!!」
その言葉は、SNSで数十万回シェアされた。
⸻
そんな中、泉が持ってきたのは――武道館ライブの詳細資料。
「本番は来月。出演はBLACK SUGARを含む、東西代表合わせて4組。チケットはすでに完売」
「マジか……あの武道館が満員って……震えるわ」
ユズキが苦笑する。
「でも、今までだって全部初めてだった。武道館だって、俺たちらしくやればいいんです」
コウタのまっすぐな言葉に、全員がうなずいた。
「武道館でも“応援”するだけだ。変わらねぇ。俺たちは、ファンのために歌う。誰かのために立つ。いつも通り、全力で!」
レイの声が、部屋の空気を熱くする。
⸻
そして始まる、武道館へ向けた特訓の日々。
ボーカルトレーニング、フォーメーション調整、MC練習、そして何より――“心をひとつにする”こと。
ファンも、彼らとともに走り出した。
寄せられる応援メッセージ、街中での握手、老若男女問わず届く「あなたたちに勇気をもらいました」という言葉。
BLACK SUGARの歌は、もはやただのパフォーマンスではなかった。
それは――“誰かの背中を押す力”そのものだった。