第16話「宿敵・GLINTとの再戦!決戦のライブハウスへ」
「GLINTと……再戦?」
ミナトの低い声に、控え室の空気がぴりついた。
GLINT――ビジュアルも実力も兼ね備えた人気若手アイドルグループ。かつて、BLACK SUGARがまだ無名だった頃、共演イベントで圧倒的な差を見せつけられた因縁の相手だ。
「会場は“雷音ホール”。共演イベントだけど、今回は“パフォーマンス対決形式”らしい」
マネージャーの泉がスマホを見ながら説明する。
「パフォーマンス対決……つまり観客の反応が勝敗を決めるってわけですね」
コウタが小さく呟く。彼の目には、恐れと同時に、確かな闘志が宿っていた。
「こりゃあ、魂ぶつけるしかねぇなァァァ!!」
レイがいつものように吠える。だが、その声にはいつもより深みがあった。
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数日後、雷音ホールのリハーサル会場。
GLINTのパフォーマンスを間近で見たBLACK SUGARのメンバーは、言葉を失っていた。
完璧なダンス、緻密なフォーメーション、観客を支配するような華。
ユズキが唇を噛んだ。
「やべぇな……仕上げてきてやがる」
「さすがに“見せ方”を心得てるな。あいつら、本気だ」
ミナトも冷静に分析する。
そんな中、レイが一歩ステージに出た。
「お前ら、ビビるのはいい。でもな、戦う前から負ける準備すんじゃねぇよ」
全員の視線がレイに集まる。
「GLINTは強い。洗練されてる。だけどな――アイドルってのは、“気持ち”で歌うんだ」
彼は拳を強く握りしめた。
「俺たちは“応援”でここまで来た。だったら最後まで、それを貫くしかねぇだろ!」
「……はい!」
コウタが真っ直ぐレイを見て頷いた。
「やりましょう。“応援”がアイドルだってこと、見せてやりましょう!」
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いよいよ本番当日。
GLINTが先に登場。彼らのパフォーマンスは圧巻だった。
まるで舞台を支配するかのような構成、キメ台詞と表情の一つ一つに客席は歓声をあげた。
「やっぱすげぇな……」
ユズキが唸る。
「でも俺たちには、俺たちにしかできないやり方がある」
ミナトが冷静に答えた。
レイは、深く息を吸い――学ランに袖を通した。
「行くぞ。全力で、“目の前の一人”に届けるぞ!!」
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BLACK SUGAR、登場。
照明が落ち、ステージ中央に学ラン姿のレイが立つ。
「俺たちは、あなたを応援するためにここに来たァァ!!」
怒号にも似た第一声に、観客が驚いたようにどよめく。
だが次の瞬間、ユズキの爽やかな笑顔、ミナトの鋭い歌声、そしてコウタのまっすぐな視線が、空気を変える。
「“誰もが主役になれる瞬間がある”――今日はその時間を、あなたに届けにきました!」
観客席の一角、車椅子に座る少女が目を潤ませていた。
手を振るコウタに、ゆっくりとペンライトを振り返す。
レイが、その様子を見て、微かに笑った。
「そうだ……これだ。俺たちがやりたかったのは、“光を分け合うこと”なんだ」
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ステージを終えた後、控え室でレイが汗を拭きながら呟いた。
「勝ち負けは、どうでもいい。だが――“伝わった”な」
コウタが静かに答える。
「はい。“応援”って、届くんですね。ちゃんと」