第15話「初めてのTV出演!? 緊張と笑顔のトークバトル!」
「おいレイさん、これ……マジっすか?」
ユズキが震える指先で差し出したのは、制作会社からのメールだった。
『BLACK SUGAR様
地上波トーク番組『キラキラ男子トークDX』へのゲスト出演のご相談です』
レイは無言で文面を睨みつけたあと、ドン、と机を叩いた。
「よっしゃあああァァ!!ついに来たぞ、テレビッ!!」
「うわ、声デカッ……!」
「ま、まぁでも、確かに快挙だよな……地下アイドルが地上波だぞ?」
ミナトも目を丸くしていた。
「しかもさ、ゲストってことは、他のグループも来るってことですよね?」
コウタがぽつりと言うと、レイがニヤリと笑った。
「対戦相手がいようが、スタジオでも気持ちは変わらん。俺たちは“応援魂”でぶつかるだけだ!」
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撮影当日。控え室でスタイリストにメイクを受けながら、コウタは何度も深呼吸していた。
「う、うわぁ……手が汗で……マイク滑りそう……!」
「落ち着けって。俺も初テレビは緊張で耳が聞こえなくなったから」
ユズキが肩を叩いて笑う。
「……それ、励ましになってません」
だが、レイは鏡越しにそんなやり取りを見ながら、静かに言った。
「緊張してるってことは、ちゃんと挑もうとしてる証拠だ。胸張って行け。お前は今、“全国に見られる覚悟”をしてるんだ」
コウタはこくりと頷いた。
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スタジオは眩いライトとカメラの海。客席には若い女性たちがぎっしりと座っている。
MCの人気芸人が笑顔で迎える中、BLACK SUGARが登場。
「おおーっ、来ました!噂の“応援団アイドル”BLACK SUGAR!!」
拍手と歓声に包まれながら、メンバーが並ぶ。
「じゃあ、まず自己紹介からお願いしまーす!」
「押忍!元体育教師で、今はアイドルやってます!レイです!」
「えっ!? 体育教師だったの!? やっぱりね、声の圧がもう“校庭”って感じするもん!」
スタジオがドッと沸いた。
レイは目を細める。
(……ふむ、テレビも観客も、ステージと変わらねぇな)
「続いて、センターのコウタくん!」
「は、はい! つい最近まで研修生だったんですが、今は全力で頑張ってます!」
MCが優しく言葉を拾う。
「いやー、この子、めちゃくちゃ純粋な目してるねぇ。“テレビって怖い”って顔してる!」
また笑いが起きた。だが、コウタは苦笑しながらも、しっかりマイクを握った。
「テレビ、怖いけど……でも、今日も誰かの“明日”を応援したくて来ました!」
一瞬、静寂が落ちた。次の瞬間、拍手が湧く。
「うわっ、カッコいいぞ!これぞBLACK SUGAR!」
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番組後半の“即興応援バトル”コーナー。
テーマは――「恋がうまくいかない女の子に一言!」
「おっしゃ来たァァァ!!恋も応援だァァ!!」
レイが吠えると同時に、コウタが一歩前に出た。
「失恋って……すごく痛いです。でも、その痛みを乗り越えたあなたは、誰よりも優しくて、強いと思います。応援してます、ずっと」
スタジオに、静かな感動の空気が流れた。
「……こりゃ、人気出るわ」
MCがぽつりと呟いた。
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収録後。楽屋で、スタッフがそっと耳打ちする。
「BLACK SUGARさん、視聴者アンケートでトークコーナー1位でした。再出演、お願いするかもしれません」
「……ほう。ならそのときは、もっとデカい声で叫ばせてもらおうか」
レイが笑い、メンバーが拍手する。