第14話「アイドル応援団、再び!燃え上がれ、文化祭ライブ!!」
「文化祭ライブ? 俺たちが?」
ユズキが目を丸くする。
「そうだ。依頼が来た。某都内女子校から、“アイドルを呼んで盛り上げたい”ってな」
ミナトがプリントアウトしたメールを見せると、そこには明らかに手書きで熱のこもったメッセージが綴られていた。
「“BLACK SUGARさんへ。ファンミの応援団パフォーマンスに感動しました! 文化祭の目玉で来てほしいです!”……だってさ」
「ははっ、すげーな。あの応援団ライブ、地味にバズってたけど……女子高生まで見てくれてたのか!」
ユズキがにんまりと笑う。コウタはそっと呟いた。
「こうやって、誰かの“また見たい”って気持ちに応えられるのって……嬉しいですね」
レイは黙って彼の背中をぽんと叩いた。
「よし、だったら今回も――全力で応援団だ」
「えっ、また学ラン着るんですか!?」
「当然だァァッ!女子高生の青春を応援せずして、何がBLACK SUGARかァァァ!!」
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文化祭当日。校内は制服姿の女子高生であふれ、模擬店のいい匂いと笑い声が飛び交っている。
「なあ、俺たち……完全に浮いてね?」
ユズキが苦笑いしながら、真っ黒な学ランの裾を気にする。
「黒ずくめの男集団が歩いてたら、そりゃ警戒されるわな」
ミナトが冷静に呟くが、生徒たちはむしろ興味津々でスマホを構えている。
「あっ、BLACK SUGARだ!」「応援団ほんとに来た!」
アイドルとしてではなく、“応援団”として認知されていることにやや複雑な思いを抱きながらも、メンバーたちはステージに立つ。
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「よぉおおぉし!青春真っ最中の女子高生どもォォ!!」
レイの怒鳴り声に、生徒たちは「キャー!」と悲鳴と歓声を入り混ぜて応える。
「恋に悩むやつ!成績に悩むやつ!部活でスランプのやつ!全部まとめて応援してやる!!」
「やるぞお前らァァァ!!いくぞBLACK SUGAR!!」
「「「押忍ッッ!!!」」」
会場が爆発するような熱気に包まれた。
応援パフォーマンスは、以前よりも明らかに洗練されていた。レイの絶叫も、ユズキの煽りも、コウタのまっすぐなエールも、すべてが一体となって響く。
「“君が君をあきらめない限り、俺たちは何度でも応援する――!”」
その言葉に、最前列の生徒が泣き出した。
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ステージ終了後、手紙が届いた。
「私、実はこの文化祭が終わったら学校を辞めるつもりでした。でも、あなたたちの応援で……もう少しだけ頑張ってみようと思いました。本当にありがとう」
レイは手紙を読んで、ふっと目を細めた。
「お前ら……やっと、応援団じゃなくて“アイドル”になってきたんじゃねぇか?」
その言葉に、ユズキが笑う。
「いやいや、俺らはずっとアイドルっすよ。“熱血”っていう個性がちょっと強いだけで」
そしてコウタが、誇らしげに言った。
「俺たち、“応援できるアイドル”って最強ですよね!」