姉、まさかの神格化
俺が異世界に来てから、早くも一ヶ月が経った。
姉は相変わらず王宮でダラダラと過ごし、魔王はその隣でポテチを食べながらゴロゴロしている。
「なあ……いい加減、働けよ」
俺がそう言うと、姉はめんどくさそうに頭をかいた。
「えー、だって異世界の王様から**『勇者様には最高の待遇を』**って言われたし~?」
「お前、勇者の特権を使って異世界ニートになったのかよ!!」
「まあね♪」
世界最強のニート、ここに爆誕。
さらに、隣で魔王までくつろいでいた。
「俺も魔王やめたし、今は自由な身だしなー」
「お前もなにサボってんだよ!!」
もはやこの王宮、勇者と元魔王のシェアハウスと化していた。
……俺、マジでこのまま異世界で暮らさないといけないのか?
そんなことを考えていたある日――
「――勇者よ、そなたに神の祝福を与えよう」
突然、天井から光が降り注ぎ、荘厳な声が響いた。
「おおっ!? まさか……神か!!?」(王様)
「え、なにこれ?」(姉)
「神の声……だと!?」(魔王)
驚く俺たちをよそに、光の中から白いローブをまとった女性が現れた。
「我はこの世界を創りし神……勇者よ、そなたの偉業を称え、神の座を授けよう。」
「……は?」
「え、ちょっと待って。神の座!?」
「うむ。勇者として魔王を倒し、世界を平和に導いたそなたは、もはや人の身でいるべきではない。そなたを新たな女神とする!!」
――姉、まさかの神格化決定。
「えー、めんどくさい」
「即答!?」
「神とか無理無理、そんなの働かなきゃいけないじゃん」
「働くこと前提の神!?!?!?」
まさかの女神就任を秒で拒否する姉。
「……しかし、そなたの力はすでに神域に達している。これを無視することはできぬ……」
「えー、どうしよっかな~……」
姉はポテチを食べながら考える。
「ねえ、悠真が神になっちゃダメ?」
「ふざけんなあああああ!!!」
「なぜ俺が神になる流れになってんだよ!!」
「いやー、だって神って働かなきゃいけないんでしょ?」
「神がサボるな!!!」
王宮中に響く俺の叫びを無視し、神様は冷静に説明を続けた。
「では、勇者の弟であるそなたを**"補佐神"**として迎えよう」
「補佐神!? そんなの聞いたことねぇよ!!」
「ふむ……では、異世界のシステム管理を担当するというのはどうだ?」
「システム管理!? 俺、ゲームのGMみたいなことすんの!?」
まさかの異世界GM就職ルートが浮上する。
「悠真ならいけるでしょ?」(姉)
「いけねぇよ!!!」
俺が必死に抗議していると、姉がスマホをいじり始めた。
姉ちゃん:「異世界の仕事、楽なやつで検索っと……」
姉ちゃん:「お、‘世界の法則をいじれる神’とか楽しそうじゃん!」
「やめろおおおお!!! 異世界の設定いじるな!!!」
――結局、俺は「神見習い」という謎のポジションに就くことになった。
「では、そなたには‘この世界の調整’を任せよう」
そう言われた俺の手元には、なぜか**「異世界管理アプリ」**がインストールされたスマホがあった。
[異世界管理アプリ]
天候操作 → 変更可
魔法調整 → 変更可
生物の強さ調整 → 変更可
"勇者(姉)"のステータス編集 → 変更不可 ←!?!?!?!?
「姉ちゃんのステータスだけ変更できないのかよ!!!」
「まぁ、神クラスだからね♪」
完全に詰んだ。
こうして俺は**異世界の神見習い(ただし姉の管理はできない)**として、働かされることになった――。