魔王、まさかの…?
「ふふふ……よくぞ来たな、人間どもよ……」
魔王城の巨大な門が開き、中から現れたのは――
めっちゃイケメンだった。
漆黒のローブをまとい、鋭い金色の瞳を持つ青年。背後には禍々しい黒い翼。そして、その顔は……
「……え、普通にイケメンじゃん」
俺が思わず呟くと、ルナ(魔法使い・ドジっ子)が顔を赤らめた。
「あ、あの……すごくカッコいいです……」
「うん、正直モテそう」(カイン・盗賊)
「魔王のくせに生意気ね……」(アリシア・ツンデレ騎士)
なんかパーティーメンバー全員の反応が違う方向に向かっている。
「ふん、人間どもよ。ここまで来たことは褒めてやろう。さぁ、勇者よ、貴様の力を見せてみろ!」
魔王は堂々とした態度で俺を指差した。
……いや、俺、勇者(代理)なんだけど。
「えーと、実は俺、勇者じゃなくて代理なんだよね」
「……は?」
魔王がマジで「は?」って顔をした。
「俺の姉が本物の勇者なんだけど、働きたくないって言って俺が代わりに来たんだよね」
「……は???」
魔王の目が点になる。
「ちょ、待て。それはどういう……え、じゃあ本物の勇者は今どこに?」
「城でゴロゴロしてる」
「……はぁぁぁぁぁぁ!??」
魔王が思いっきりツッコんだ。
「お前、それでいいのか!? 世界の命運がかかってるんだぞ!?」
「俺だって嫌だよ!!!」
「なんで勇者がニートしてて、ただの高校生のお前が来てんだよ!? どんな世界観だよ!!」
魔王が俺以上にツッコミ始めた。
「いや、俺も意味わかんねぇよ!!!」
俺と魔王、まさかのシンクロツッコミ。
「ちょっと待って、姉ちゃんに話つけるから!」
俺はスマホを取り出し、姉にLINE通話をかけた。
悠真:「なあ姉ちゃん、魔王と話してくんね?」
姉ちゃん:「えー、めんどくさい」
悠真:「いやいや、お前の仕事だろ!」
姉ちゃん:「あー、もうわかったよ。仕方ないなぁ」
次の瞬間――
魔王城の天井がぶっ飛んだ。
ズドォォォォン!!!!
「……は?」
俺たちは全員上を見上げる。
天井が粉々になり、そこから降りてきたのは――
「おーい悠真、魔王、どこ~?」
パジャマ姿、片手にポテチ、もう片方にスマホ。
俺の姉ちゃんが、片手で空を裂きながら降りてきた。
「お前、ワープしてきたの!?!?!?」
「いや、飛んできた」
「どういう原理だよ!!!」
魔王も驚愕していた。
「まさか……この圧倒的な魔力、貴様が本物の勇者なのか!?」
「あ、うん、多分そう」
「多分!?」
魔王、ついに限界。
魔王はしばらく呆然とした後、大きなため息をついた。
「……もういい。俺、戦う気失せたわ」
「え、なんで?」(悠真)
「いや、お前の姉、明らかに俺より強いじゃん」
「まあね」
「なんか、ここで俺が必死に戦っても無駄な気がするんだけど……」
魔王はポリポリと頬をかきながら、悩ましげに言った。
「じゃあ、俺、人間側につくわ」
「は!?!?!?!?」
全員が一斉に叫ぶ。
「いや、だって働くのめんどいし……勇者様の側にいた方が、なんか楽できそうじゃね?」
まさかの魔王、ニート志望。
「うわー、わかるー。私も働きたくないんだよねー」
「そうそう、戦うとかマジでダルいよなー」
「ねー!」
魔王と姉ちゃんが意気投合し始めた。
「悠真、お前さ、代わりに王様に言っといてよ。魔王、仲間になったよって」
「ふざけんなああああああ!!!」
こうして、俺は魔王まで連れて帰ることになった。