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8話「オタクとギャル」

気がついたら、私は校舎の屋上に立っていた。

4階立ての校舎の屋上で、柵は無い……ここから1歩でも足を踏み出せば、私は真っ逆さまに落ちていって__


「死ぬな!」


その時、後ろから大柄な男子生徒が私の体を抱きかかえてそこから引き戻してくれた。

死ねなかった事、死なずに済んだ事、色々な感情が混ざりあって私は涙か止まらなくなった。


「うぅ……うぁぁ……!」


「死んだって何もいい事なんて無い。お前が死んだら家族や友達が悲しむぞ。今は辛くても、生きてたらきっといい事があるはずだ!」


男子生徒は私にそう言ってなだめようとする。

それを聞いた私は間違いを認め、自分の身勝手な行動を反省した。


「う……うん……。」


そして、男子生徒は


「良かった……これでまた……




お前を壊せる」



「!!」


私は悪夢によって目が覚めた。


私は中学生時代、3年間もの間いじめを受けていた。

それに耐えられず自殺しようとしてた所を助けられた夢……でも、そこで死ねなかったというのが悪夢って事じゃない……。


助けた男子生徒本人がいじめの主犯格だったのだ。

アイツは私の苦しむ顔がもっと見たくて私を助けたんだ……。


「気分が悪いな……今日は学校休もう……。」



今日ははるが学校に来ていなかった。

はるからRINEで今日は気分が悪く学校を休むと送られてきたので、安静にしておけ、と俺は返信した。

久瀬にもその旨のメッセージを送ったらしい。


「はるっちがいないと寂しーなー。」


はるがいない事を不満そうにする久瀬に、俺は「そうだな。」と返す。


「風邪……とかじゃなく、精神的な事なんだよね?」


「そうらしいな。」


「じゃあさ、私と大堂君でお見舞い行かね?はるっち大堂君が来たら喜ぶと思うよ?」


久瀬は俺にそう提案してくる。

俺が来たら喜ぶ……というのはどういう事だろう、とは思ったけど……。


「俺達も行っていいかな?」


「ダメでござるよ小倉氏。お見舞いというものは少人数でないと。」


小倉も俺達と一緒にお見舞いに行きたいと行ってきたが、お見舞いは少人数の方がいいと言って中守がそれを止める。


「じゃあ俺達は行かない方がいいかもね。」


「すまないな、2人とも。」


「大堂氏は立花氏の幼馴染なのでしょう?なら、沢山の友達よりも1人の幼馴染が行ってあげた方が立花氏も喜ぶでござるよ。」


謝る俺に対して中守は気にするなというような言葉で返す。

気を使ってくれた2人には、お礼に今度男3人でどっかに遊びに行こうと約束した。



昼休み……俺はどうしてもはるの事が心配で、それを紛らわそうとして屋上で黄昏ていた。

けどやっぱり心配を払拭する事ができないでいる……。


「大堂君!」


「おわっ!」


そこに突然久瀬が現れ、俺の肩をガっと組んでくる。

か、体が凄く密着してて胸が当たってますよ久瀬さん……っ!


「な、なぁ久瀬……お前パーソナルスペースって言うの知らないの?」


「バチクソスペース?」


「パーソナルスペース!人と人の距離感だよ!お前距離感近すぎ!ドキドキするだろこんちくしょー!男の子をドキドキさせるとなぁ……危ないんだぞー!?」


俺は顔を赤くしながらも久瀬にそう言って人と人の距離感の取り方の大切さを教えようとする。


「……う、うん。気をつけるよ。私生まれてこの方女友達しかいなかったから、女の子と接するノリで……っていうか……ごめんね。」


すると久瀬はしおらしい態度で俺に謝る。

そ、そういう背景があるなら仕方なくもないのだろうか……。


「いやーホント次から気をつけるよ……だって……。」


「ん?」


「大堂君には可愛い幼馴染がいるもんな!」


だが次は態度が一変して、俺の背中をバンバン叩きながら楽しそうな態度を取る。


「か、可愛い幼馴染……?」


「え、あんな可愛い子を可愛いと思ってないの……?」


当たり前でしょ?みたいなキョトン顔でそう聞いてくる久瀬に俺は思わずこう返す。


「可愛いに決まってるだろ!……はっ!」


「やっぱり、少なくとも女の子としては意識してるんだ〜。」


「……そ、そうだよ……悪いかよ。」


これが陽キャの会話術……なんて恐ろしい……と俺は思ったのだが、久瀬は少し間を置いた後口を開く


「大堂君、いつからはるっちと一緒にいたの?」


「……小学校入る前から……中学は別の所だったけど。」


「マジかー……それだけ長い時間一緒にいる君にあの態度は……正直脈アリでしょ。」


指をパチンと鳴らし、殺人事件のトリックを解明した名探偵みたいな自信満々の顔でそんな事を言い出す久瀬に俺はテンパってしまう。


「ミャクアリ……っ!?」


「うん、大堂君とはるっちみたいな関係は高確率で両思いって恋愛ドラマで学んだよ。」


恋愛ドラマなんぞで恋愛学を知った気になるんじゃない!……というのは、どんな形であろうと恋愛学を学ぼうともしなかった俺が使っていい言葉じゃないか……。


「……な、なら俺にどうしろって言うんだよ。」


「うーん、しばらくは様子見して、イけると思ったタイミングでアタックしてみる!っていうのはどうかな?」


「……それを陰キャ童貞オタクの俺ができるとでも?」


「できるできないじゃない……やるんだよ。」


いや、またそんな事ドヤ顔で言われましても……。


「じゃあさ、やらなかった結果はるっちが他の男に取られてもいいの〜?」


「うぐぅ……何故か胸が締め付けられるような感覚が……!」


「それが君の答えって事だよね。私は応援してるよ!」


久瀬は拳をガっと握りしめてガッツポーズを取ってそう宣言する。

かくして、俺がはるに告白するかどうかって話が始まってしまった訳だけど……そう上手くいくものだろうか……。

という思いを胸に、俺は放課後、久瀬と一緒にはるの家に来たのだった……。






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