6話「友達」
4月下旬、高校生活にすっかり慣れきった……とまではいかないが、少しは慣れてきたかな?という時期。
俺が高校に入る前から不安視していた問題……友達を作れるかどうか、という点においてだが、この問題はすぐに解消された。
「おっす。」
「おはよう大堂氏。」
「おっはー。」
俺は教室に入り、先に来ていた2人に挨拶をする。
人の事を〇〇氏、なんて呼ぶ旧時代のオタクが現世に存在していたとは……と俺を驚かせた、俺と同じオタク男子の中守赤斗、そして赤斗とは中学生時代からの付き合いらしい陽キャの小倉白矢。
「大堂、お前がこの前教えてくれたアニメの主題歌めっちゃハマっちゃってさ、サッカーの練習中めっちゃ鬼リピしてるんだぜ。」
「そうか、それは良かった。」
「この前……あぁ〜、鬼神乱舞の第2クールOPですな。」
「それそれ。サッカーの試合前に聴くいわゆるルーティンってやつにしようかなって思うんだけど、それ良くね?」
「それは良さげですな。」
と、白矢は自分がサッカー部である事も交えながら俺と赤斗と会話をする。
「でも、練習に夢中でアニメ本編を見る時間はあまり無さそうだからあまり期待しないでくれよ?」
「自分のペースで見てくれて構わないでござる。無理に周りに会話を合わせる為に見ようとして倍速視聴したり、ネットで解説動画とか反応集とかだけ見て満足するような人間に成り下がるぐらいならそっちの方が遥かにいいでござる。」
「だよな。俺もそういうやり方は反対派だわ。」
「こ、こだわり強いんだなオタクって……。」
「いやいや、例えば白矢氏は駅前のマッキーナルドのビッグマッキーを、時間が無いからという理由で早く食べ終える、なんて事を頻繁にするでござるか?そんな事しないでしょう?よく味わって食べたいでしょう?アニメもそれと同じでうんぬんかんぬん……」
「そう言われると……分からんでもないかな。」
小倉は俺や中守みたくアニメは頻繁に見てる、という訳ではなくたまに見る程度だが、その僅かな見てるアニメの会話でもできれば楽しいみたいで俺達と連んでいるみたいだ。
「お、おはよう……。」
「あ、はる。」
と、俺は背後から聞こえたはるの挨拶に挨拶で返したが、はるの姿が見えない……ってか……ん?背中に何やら柔らかい物が当たって__
「ん?はる?」
「……」
はるは俺の背中にべったりとくっついていた……多分中守と小倉に人見知りみたいなのが発動して、顔を合わせられないんだろう……。
でも女の子が男にそんな体を密着せてるのはいかがなものか……。
「はは、羨ましいな大堂。高校デビュー早々に彼女ができたなんてよ。」
「か、彼女じゃね__」
「かっ!!!!」
と、はるも俺同様否定しようとしたのだが、つい大きな声を出してしまったらしく、クラス中がはるに注目し、その視線に当てられたはるはさらに俺の陰に隠れようとする。
「……のじょじゃないです。(小声)」
今度は逆に小さな声でさっきの「かっ」に続けてそう言う。
そしてクラスの人達はそれぞれ友達との会話に戻ったり、再び机に突っ伏したり……。
「私も彼女欲しいでござるよ。オタクに優しいギャルとかいないものですかねー。」
「中守はギャルが好きなのか?」
小倉の質問に「そうだ」と中守は即答し、そこからオタクに優しいギャルについて熱弁しだした。
「__それ故にオタクという生き物はいつの時代もオタクに優しいギャルを追い求めうんぬんかんぬん__」
「なぁ、間違ってたらごめんだけど……立花さんってオタク?」
ふと、小倉は俺の背中に隠れているはるにそう聞き、とっさにそんな事を聞かれたはるはオドオドしだす。
「っ……ぇ、ぁ……」
「俺が言っていいか?はる。」
「ぅ……うん……。」
俺ははるに確認し、はるがオタクである、という事を俺から2人に教えてあげる事にした。
「はるはオタクだよ。俺とはるはオタク友達。アニメとか特撮が好きなんだよ。か、彼女じゃないからな……多分。」
「そうかそうか、それは微笑ましい関係だね。」
何か良からぬ事を考えているのか、小倉は俺とはるの顔を交互に見て微笑みを浮かべる。
「何か悪いか?」
「別にー。大事にしてあげなよ、可愛い友達をね。」
「あ、あぁ……。」
そうこうしている内に先生が教室に入ってきて朝のホームルームが始まり、今日の学校生活も過ぎていった。
◇
「なぁ、カラオケ行く?」
「唐突だな……。」
放課後(15時頃)、小倉は俺と中守をカラオケに行かないかと誘ってきた。
「もうすぐで4月終わるんだしさ、1ヶ月お疲れ様!って事で。」
「私は構わないでござるよ。」
「俺は……はるに聞いてくる。」
俺は一旦小倉の席の近くから離れ、はるの席へと向かった。
「なぁ、は__」
「む、無理……です……。」
「即答か……。」
いや、最初から分かってたけどもしかして、と思って聞いたんだ……でもやっぱり無理か……。
「……」
俺は少し考えた後、口を開く。
「……じゃあさ、俺と一緒にカラオケ行かね?」
「え……?」
俺は今とっさに思いついた代案をはるに提案した。
女友達と男友達、どっちを優先するかは非常に悩ましい所だ……どっちかを選ぶって事はどっちかを蔑ろにしてしまうって事なんだから。
中守、小倉との時間も大事なのは分かるけど、それと同じぐらいはるとの時間も大事にしたい……。
「い、いいの?あ……あの2人との約束、を……。」
「アイツらとは来月にでも行けばいいんだ。だから今日は、な。」
「……うん、あお君と一緒に行く、カラオケ……!」
はるは俺とカラオケに行く事を決め、俺は中守と小倉とのカラオケを切った。
「すまん、中守、小倉。」
「良いってことよ。それを許さずして何が友達だってんだ!ガールフレンドとのカラオケ楽しんでこいよ!」
「ジュース奢ったらチャラにしてやるでござるよ。」
「おう!」
俺は即座に自販機でジュースを買って2人に渡し、俺とはる、中守と小倉は同じカラオケ店にこそ行ったが別々の部屋で2時間のカラオケを開始する。