3話「多分、買い物」
「これ借りる?仮面ファイターゼロのVシネ。」
「あー、それはちょっとエグいシーンがあってトラウマなんだよねー……でも熱いシーンとかあって好きだから見る。」
「仮面ファイターだけじゃなくさ、ゲンドムとかアニメとかアニメの実写版とかも色々借りる?」
「う、うん。気になってた映画あったんだよね……。」
高校生活最初の1週間が終わった翌日、俺とはるはZEOで明日見る予定のDVD選びをしていた。
お互いの意見を参考に見る映画を次々に選んでいく。
そ、それはそうと……。
「ど、どうしたの?じっと見て……恥ずかしい……。」
「あ、ご、ごめん!」
俺ははるの声で自分がはるの事をじっと見ていた事に気付かされ、つい顔を背けてしまった。
何せはるの私服めっちゃ可愛いもんな〜……昔のはるも可愛かったけど、今はその数段可愛い……!
「ね、ねぇ……。」
「な、何?」
「私、仮面ファイター展であお君と再会してさ……あれからあお君に見られても恥ずかしくないように、ダイエットしたんだ、よね……。」
「そ、そうか。頑張ったな。たっ3たヶ月で見違えたぞ?」
自らダイエットしたと俺に話したはるは、なんだかその事を俺に自慢しているかのように見えて、俺は素直にその努力への賛美の言葉を彼女に送った。
「ほ、ほんと?」
「あ、あぁ。昔のはるがそのまま大きくなったみたいに……なった、というか……?」
「……え、えへへ……。」
するとはるはぎこちない笑顔を浮かべながら嬉しそうな態度を取る。
周りから「リア充が!」「爆発しろ!」という視線を向けられてる気がするが、お、俺達はつい先日再会したばかりの仲……下手な事をすれば死あるのみぞ!
って訳だし、はるへの身の振り方はここ数日考えてきたけど……結局昔のように親しくすればいいのか、今は今の接し方をすればいいのか分からないんだよな……。
◇
「レンタルありがとうございましたー!」
俺達は30分程かけてDVD選びを終え、その後は翌日のDVD鑑賞会に備えてスーパーでお菓子とかジュースを買う為の買い物をする予定だった。
GEOから徒歩10分程の所に大型スーパーEOSがあり、そこでの買い物を始める。
「あっ!」
「どうした?」
「え、あの……今日マスターアイドルシャイニングスターズのウエハースの発売日……だから……。」
「じゃあまず食玩コーナーだな。俺もグレートマンの食玩フィギュアが欲しかった所だし。」
そういう訳で、俺だけでなくはるも今週発売の食玩が欲しかったらしく、俺は仮面ファイターと肩を並べる人気特撮、グレートマンの食玩フィギュアを、はるは大人気のアイドル育成ソシャゲ、通称マスドルのウエハースをカゴに入れる。
それからスナック菓子のコーナーやキャンディ菓子のコーナー、そして飲み物コーナーを見て周り、それぞれの好みのお菓子とジュースを購入して店を出た。
「なぁ、マスドルって面白い?俺高校生になってからスマホ新しいのに買い換えたんだけどさ、なんかソシャゲでいいのないかなーと思って。」
「お、面白いよ!ストーリーが凝ってるしグラフィックも良くて育成は低レアのキャラクターでも良いサポートカードがあればクリアできるしあと私の推しは久瀬八千穂って言う子なんだけどその子がめっちゃ可愛くて__」
「そうか、ならやってみるよ。」
俺達は帰り道でも相変わらずオタクトークに熱中していて、はるが勧めてくれたゲームをプレイしてみる事を彼女に約束した。
するとはるは嬉しそうな表情を浮かべて「うん!」と元気よく頷いた。
◇
その日の夜は少し寝付くのが遅かった。
何せ、はるとDVD鑑賞会をすると約束はしたものの……それをはるの家でやると言うのだから。
あらぬ誤解をされないようにおかんとおとんには男友達の家に行くと嘘を言ったが、女の子の家に俺が……男が1人で行ってもいいのだろうか……。
(あ〜眠れね〜!!明日俺ははるの家に遊びに行くのか!?再会して1週間で家に行くって判断が早すぎないか!?でも家に来てって言ったのははるの方だし……あそこは「いや、家に来いよ!来いよ…来いよ…(エコー)」って言うべき所だったのか〜!?)
考え事は尽きること無く溢れ出てきて俺の脳みそをパンクさせん勢いで考え事は膨れ上がり、結局トイレ行きたくなってトイレ行って、トイレから戻って寝ようとしてもまだ寝れなくて、またトイレ行きたくなって…を深夜1時頃まで繰り返してようやく眠りについたのだった……。
◇
なんだかよく分からない空間で、俺の目の前にはるが立っている。
けどなんというか、はるの少し顔が火照ってて、何より下着姿だ。
昔からの幼なじみに対してあまり不純な考えはしないようにしてきたけど、ここでは言える気がするから言っておこう。
はる、お胸がめちゃくちゃ成長してらっしゃる……!
「は、はる……?」
「あお君……はぁ……好き……」
はるは一体何を言っているのだ?などと考えていると、はるが俺の肩に手を置き、その丸みのある体を俺に押しつけてキスを迫ってきた。
「キス……して……?それとも……?」
「そ、それとも……!?」
俺ははるの言葉にドギマギさせられ、そしてもうどうにでもなれー!と吹っ切れて、それから__
◇
「……久しぶりにエッチな夢を見た……。」
そう、俺が見ていたのはエッチな夢だったのだ。
あのはるのイメージ像は俺が作り出したものなのか?なんだか複雑な気持ちなんだが……それはそうと、エッチな夢を見たのでパンツを交換し、服を着替え、朝食を食べ、いざはるの家へと行く俺であった。