「いつかはきっと」
今回の夏祭りの一番の目玉、花火の打ち上げが今から30分後……20時30分に始まるとアナウンスがされた。
そこで俺達は事前に話していた通り、人が少ない公園の脇の方に行こうとする。
「早くしないと人が一気に動き出すでござるよ?」
「そうだね。皆、公園の脇の方に行こう。」
「あぁ。」
「いやー食った食った!」
「かき氷美味しかったね春美ちゃん。」
「う、うん。」
小倉が俺達を先導し目的の場所へと歩いていく。
予想通りそこは人が少なく花火の見物には丁度良さそうだった。
まぁでも、その何人かいる人達が全員カップルなんだけど……。
「花火楽しみだね。」
「そうだね。」
「やっぱ夏と言えば花火よねー。」
「だな。」
と、楽しそうに話すカップル達。
「……」
「何見てんだよ。」
「何見てるでござる?」
「いや、悪いなと思ってな。俺と吉沢さんだけ「こっち側」で。」
と、皮肉めいた事を言う小倉に鬼の形相で掴みかかる俺と中守。
「んーっ!」
「ござるーっ!」
「じ、冗談だって!悪い悪い。」
と弁明する小倉。
まぁこっちも冗談だとは思ってたがな。
「楽しそうじゃん男子ズ!笑」
「もう、喧嘩しちゃダメだよ。」
「ごめん黎奈さん。皆で楽しく花火見ようね。」
「うん!ほら中守くんもテンションアゲていこーぜ!」
そう言いながら中守の背中をバンバンと叩く久瀬と、そんな風に激しく動くせいで浴衣の隙間から谷間が見えそうになるのを凝視してしまう中守。
「ご……ざる……!」
「はる。俺達も……な?」
「う、うん。一緒に花火見るの、小学生以来、だね。」
「あぁ。中学の3年間一緒じゃなかった分……今から取り返す……的な?」
「そ、そうだね……。」
と、はるは高校生活のこれからについて楽しそうに話しているが……何か言いたげなように見えるのは気のせいだろうか……。
と考えてから、その違和感の正体に気づくまでにそう時間はかからなかった。
「はる、腕輪は……?」
「あ……その……」
そう、俺が先程はるにあげた、暗闇の中でチカチカと主張強めに光るあの腕輪がいつの間にか無くなっていたのだ。
「どうしたの春美ちゃん?」
「あれ、はるっちさっき久瀬くんに貰った腕輪は?」
「い、いつ頃から……?」
「み、皆で食べ歩いてる時……かき氷屋さんでかき氷買った後で気づいて……だ、黙っててごめんなさい……。」
「いや、気にしないで……俺探してくる!」
「あ、あお君……!」
その時点で花火開始まであと20分だったが、そんな事気にせず俺はその場から飛び出し腕輪を探しに行った。
◇
「あの、光る腕輪落ちてませんでしたか?くじの景品の……」
「はい、5等のやつです。」
「かき氷の屋台の近くで無くした事に気づいたんですけど……」
俺は公園全体を駆けずり回って腕輪を探した。
夏祭りの係員さんに腕輪が落ちてなかったか聞いてみたり、落し物として届けられてなかったか確認したりしたのだけど……
ヒュゥゥゥゥゥ
「あ……」
ドォォォォォン!
結局花火が打ち上がるまでに腕輪を見つける事はできず、RINEではるから
「腕輪なんてまた買えばいいから、今はあお君と花火が見たい」というメッセージが送られてきたので俺は皆の元に戻った。
◇
「お、青司くん戻ってきた。」
「屋台のおもちゃぐらいで無理しすぎだよもう!」
「あぁ、悪いな。でも……無くしたままってのはなんかモヤモヤするというか、なんか……ちゃんと見つけなきゃって思ったんだ……。」
「そ、その気持ちだけでも嬉しいよ、あお君……ありがとう。」
「大堂氏はお人好しでござるな。」
「違うと思うぞ?彼女持ちの俺から言わせれば、女の子の為に必死になるってのはお人好しではなく……いや、皆までは言わないでおこう。」
はるは必死に腕輪を探そうとした俺を労ってありがとうと言ってくれた。
はる本人がそう言うなら、と俺はもう腕輪の事は諦める事にした。
そうして俺達は花火を楽しみ、高一の夏休みに1つの思い出を作ったのだった。
◇
私はあお君達と別れて自宅に帰ってきた。
桜とお母さん、お父さんも花火大会に行ってたのだけど、私より先に家に帰ってきててお母さんが私の浴衣を脱ぐのを手伝ってくれた。
明日は浴衣をレンタル屋さんに返しに行かなくちゃ……今日はもうお風呂入って歯磨きして寝よう……。
時刻は夜の10時……今日は疲れすぎて今にも眠ってしまいそうだったので、その前にお風呂と歯磨きを済ませてから自分の部屋に戻ってくる。
「ふぅ……。」
そしてベッドに横になってから眠りにつくまでにそう時間はかからなかった……
◇
その日の夜、私は夢を見た。
小学6年生の頃、あお君と夏祭りに行った時の夢だ。
「5等!この中から好きな物を持っていってね。」
「おぉー、色々あって悩むなー。」
「早く選んだ方がいいわよ?後ろの人が待たされるから。」
「急かすなよはる。うーん……じゃあこれで!」
あお君は光る腕輪を選び、嬉しそうにそれを腕にはめて私に自慢してきた。
「どーだ!かっけーだろ!」
「もう、あお君ったら子供なんだから。」
「ふん、女にはこの良さは分からんか。」
「何よ生意気ね!そんな腕輪ぐらいで喜んじゃって!」
「何をー?」
「何ですってー?」
「「ふーんだ!」」
その日の夏祭りは一緒に花火を見る事なく喧嘩別れに終わった。
その後仲直りして、それからはいつも通りの生活を送れたのだけど……私は過去を引きづってしまう難儀な性格だから、その日の事を今でも覚えている……あお君はどうだろうか……
◇
ピンポーン!
その日は家の玄関のチャイムが鳴る音で目が覚めた。
昨日の疲れが溜まってたので9時頃に起きたのだけど……何事かと思って玄関を開けるとそこにいたのは……
「はる!あった!腕輪あった!」
彼は……あお君は嬉しい事があった子供のようなテンションでそう言い、少し土で汚れた腕輪を私に見せてくる。
「こ、これって……」
「今日朝7時ぐらいから公園行って探したんだよ!そしたらこれが見つかって……いやー良かった!」
「……」
「はる?」
「……ごめん、私なんかの為に……。」
「……そ、そこはごめんじゃなく、ありがとうだ、的な……事だと思うぞ?」
あお君は私の顔を見てテンションが落ち着いたのか、俯く私をそう諭す。
「……」
「い、いや、はるに感謝される為に見つけてやったんだぞと言いたいのではなく……こう、はるが喜んでくれたら良いな、と……。」
「あ、ありがとう……。」
「……昔、この腕輪で喧嘩した事あったっけな。」
「え?」
私は驚いた。
まさかあお君もあの事を覚えていたなんて、と……。
でもあお君はその一言の後何も無かったかのように振る舞う。
「はい!これにて一件落着!そうだ、夏休みの残りの宿題持ってきたんだけどさ、今からやらね?」
「あ……うん、いいよ?」
「あとさ、宿題終わったら仮面ファイターの夏映画見に行かね?もうすぐで終わるからその前に見に行かねぇと!あ、はるはもう見てたりする?」
「う、ううん?私もそろそろ行こうかなと思ってた所。じゃあ宿題済ませちゃおう、ね。」
「あぁ!」
そうして私達は私の部屋で夏休みの宿題のラストスパートに取り掛かる事にする。
あお君と共に部屋に入った私はとりあえず腕輪を棚の上に置いておいた。
高一の夏休みは楽しい夏休みだったと思う……でもこれからだ。これからもっと皆と……あお君と楽しい事していきたい。
今の私なら、そうできる気がするから……。




